空の世界

「眠い……」

 あれから下書きを済まし3時頃に夕夜はさっきまで寝ていた。

「あとは塗り絵だけかな」

 イメージでは大体出来上がっている。

 リビングに行くと寮のメンバーがご飯を食べていた。

「おはようございます」

 先に京谷が挨拶した。

「おう、おはようさん」

「おはよう。夕夜」

 茜が目玉焼きと焼鮭をテーブルに置いた。

 後ろからソラが目を擦りながら起きてきた。

「おはよ〜〜ふぁ〜〜」

 大きなあくびをしてると七海が注意していた。

「ソラさん。はしたないですよ。男の人もいるんですから」

「……ふぁあぁぃ。ななみん」

 返事をするもあくびは止まらなかった。

 そういえば昨日の飲み会でソラさんは七海のことをななみんとあだ名で呼ぶことにするねって言ってた。

「それじゃ。食べちゃって」

「「いただきます」」

 それぞれ席に座り手を揃えて食べ出した。

 朝ごはんを食べ終えみんなして一緒に登校することになり玄関で待っていた。

「行こうか」

 夕夜と七海以外のヒヨコ荘のみんなは制服の所のデザインを押し背中から羽が出てきた。

 夕焼けにソラさんが翼を出したのと同じだ。

「皆さんどうやって出したんですか。その羽」

 ヒヨコ荘のみんなは首を傾げていた。

 するとソラはハッと何かに気がついた。

「そうだよ! 夕夜くんと、ななみんは昨日来たばかりだった」

 他のメンバーも、頷いてた。

「そういえば」

「確かにね」

「それじゃあしばらくは歩きにしよう。夕夜くん達まだ飛べないから」

 羽をしまうとした瞬間夕夜は必死に止めた。

「待って下さい! 俺は飛んで行きたいです」

 間近で見れて自分も飛びたくなった。

 七海も手をあげた。

「はいはい。私も」

 三人は心配そうな顔をしていたけどソラは首を振ってくれた。

「夕夜と飛びたいって言ってたものね」

 ソラが近づいた。

「そのにポケットに付いている学校のマークを押すと飛べるよ」

「マーク?」

 ポケットに押そうとした瞬間、手が止まった。

 本当に飛べるだ……。夕焼けにまた空の感触をこの手に……。

 手に力が入ってしまう。

「ふぅ……」

 深呼吸をし、緊張を少しでも和らげる。

 ポンと手を添える。すると後ろからブォン! と鈍い音がし脇の方が引っ張られいく。

 そして上に上がっていくと足がつま先立ちになっていきついに地面に付いている感触が無くなっていく。

「お? おおぉぉぉ!」

 地面を見ると、どんどん離れてく。

「本当に飛んでいる……」

 嬉しい! やったー!

 両手上げると視界がぐわんと急に変な方に変わっていき、頭にバットで殴られたくらいの衝撃が走った。

「うが!」

 血! 絶対血が出た!

 後頭部を触るとなにら硬い。上の方を向くと土埃が鼻の方に入っていく。

「ゴホッ! ゴホッ!」

 空が近づいて手を差し伸べてくれた。

「大丈夫?」

「はい、なんとか……」

 まさか地面に頭を打つけたなんて……。大丈夫血は出てない。

 七海の方は普通に飛んでいた。

「今日のところは歩きにしよう。ね?」

 まさか自分だけ飛べないなんて……。自分の絵の幅が広がると思ったけど。

「はい……」

 それでも飛びたかった。手が届く距離がすぐ側にあるんだ。

 夕夜はその場で頭を下げた。

「ごめんなさい。俺、飛びたいんです! お願いします!」

 みんなはキョトンと、していたがソラは手を握った。

「そうだよね、夕夜くん。絵を描きたくてこの学校に入ったんだもね」

 そしてソラは夕夜を担いだ。

「よいしょっと……」

「え? ちょっとソラなにやってるの?」

「夕夜くんをおんぶして学校に行くんだよ」

「……わかった。ソラは一度決めたらやるからね。仕方がない」

 茜は京谷の肩を叩いた。

「それじゃあ京谷。七海をおんぶしてあげて」

「マジかよ!?」

「良いじゃない。女の子を背負ってなんてないことよ。それに新しい子が空の世界がどんなのか教えてあげたいし」

 京谷も呆れてため息を吐いた。

「へい、へい……」

 京谷は一度降りてしゃがみ七海が背中にくっついた。

「その……失礼します」

「それじゃあ。行きましょうか」

 その合図と共に空に向かって飛び出していた。

「うぉぉぉぉ!」

 空の上空にまた連れてかれると夕焼け空と違う真っ青だが雲がすぐ側にあった。

 差し伸べて掴むとふぁっと消えていった。

 これが空の世界……。綺麗だ……。

 そのまま平行に飛んでいた。

「空をまた飛んでみてどう?」

「最高に良い眺めです!」

「……良かった」

 これが空なんだと実感がより一層に湧いた。


 

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