第14話
これからグロウジュエリーの捜索を開始する。
中に入るなり、残存しているエネルギーをすぐに感知した。高エネルギーだ。おそらくは、この高エネルギーを糧にしてグロウジュエリーが生成されたものと思われる。
また、入り口付近から長い通路が続いており、真っ暗だった。なのでライトをつける。すると壁という壁に虫がザワザワと蠢いていた。
「こ、これは……圧巻だぴょーん」
「真っ黒い虫たちが蠢いていますワ」
「外部に近い場所で、かつ、適温ゆえに集まっているのでアリマスかね?」
「なるべく踏み潰さないようにそーっと移動するぴょん」
「さすがはお優しい! うさぴょんお姉さまの仏でアリマス」
「虫にも命があるぴょん。我々はむやみな殺生は好まないぴょん! 例外を除いてっ!」
「例外、すなわち先程の、あいつらですワ」
「正確にいえば、あの小娘だけが例外でアリマスけどねー」
小僧は巻き添えをくらったに過ぎない。
少し同情するが、仕方がない。運が悪かったと諦めてもらおう。
「ぴょんぴょん。前方に光る何かが見えるぴょん。向かうぴょん」
ロボは摺り足で、そーっと移動した。
通路の突き当りには宙に、光り輝く宝石が浮いていた。まさか、この宝石がグロウジュエリーなのだろうか?
「これがグロウジュエリーでアリマスか?」
そう呟いたところ、キャロットが否定した。
「いいえ。グロウジュエリーの反応が出ておりませんワ。これは、また別の宝石なのですワ。どうやらこの宝石は生物が持つ微量な電気に反応して、何らかのギミックを起動させるものでもあるようですワ」
「ふーん。だったら、起動させてみるぴょん」
「了解ですワ」
腕の1本を宝石に触れさせ、微弱な電気を流した。するとガクンと床に円状の亀裂が走り、ロボを乗せた床が、ゆっくりと下降を始めた。
………………。
「どうやら先程の宝石はエレベーターの下降ボタンのようなものだったみたいですワ」
なるほど……。
「それにしても、幻想的な空間でアリマスね」
エレベーターのようにワイヤーで上げ下げしているわけではないようだ。ロボの乗っている床自体が、浮遊しながら動いている。これは、人間の世界には存在しないオーバーテクノロジーである。ゆえに、この施設は古代遺跡で間違いないだろう。
周囲の壁には青色や緑色、金色などに光り輝くコケがくっついており、それらが照明の代わりとなっている。とても綺麗だ。
また、2メートル程のキューブ状の石が、周囲にいくつも浮いていた。私たちは、この空間に見惚れていた……が。
突然、周囲に設置されているランプのようなものが赤色の点滅を始める。『ウォーン・ウォーン・ウォーン……』と警報のようなものも鳴り出した。私たちは警戒した。
「な、なんだぴょん」
「どうやら、私たちは侵入者と判断されたようでアリマスね」
「ナニカが近づいてきますワ。私……本能的な危機感を感じますワ。これはマズイやつですワ」
「来たでアリマスっ!」
ロボを乗せた床が下降していく中、近くの宙に浮いているキューブ状の石に、何かが飛び移った。それは、節足動物のような足が4本生えた青色の物体だった。足以外はスライムのようなゲル状のボディーで球体だ。『ピーピーピー』と音を発している。
「何か言っているぴょん。翻訳モードだぴょん」
「了解でアリマス」
翻訳システムを起動させる。すると……。
『我はガーディアン。賊は排除する。我はガーディアン。賊は排除する。我はガーディアン。賊は……』
「な、なんだかヤバイですワ。排除するとか物騒なことを言ってますワ」
「ロ、ロケットランチャーを発射だぴょーん。やられる前にヤルんだぴょん」
「了解ですワ」
先制攻撃とばかりにロケットランチャー8発をロボから放つ。これら8弾全てが、謎の生物にクリティカルヒット。謎の物体は爆炎に包まれた。
しかし……。
「げげげげ!」
爆炎がおさまると、そこには無傷な状態で、謎の物体が立っていた。
全くダメージを受けなかったようだ。
ボコボコとゲル状のボディー内で水泡が大量発生する。そして、徐々に変形を始めた。
「へ、変形するぴょんっ!」
「未知数なので危険でアリマス。とにかく、あいつと距離を取るのでアリマス」
下降を続けていた床からジャンプして、近くの浮遊キューブに着地。さらにジャンプして、他のキューブへと移り、謎の物体との距離を確保した。
「視覚情報による、鑑定結果がでましたワ。あれから、巨大亀と同じエネルギーの波動が観測されましたワ。つまり、古代生物と同じような役割を担っている存在だと思われますワ」
「どういうことだぴょん?」
「おそらくですが、古代生物が遺跡の外部を守護している存在だとしたら、あれは遺跡の内部を守護している存在なのですワ」
「そ、そんな存在、聞いたことがないでアリマス」
「おそらく、これまでに見つかった古代遺跡は全て動力が停止した状態だったと聞きおります。こうした内部のガーディアンの存在は、まだ発見されていなかったのでしょう。一方、この古代遺跡はまだ動力が生きているようですワ」
「この古代遺跡に、あいつの情報が残っているかもしれないぴょん。探ってみるぴょん」
「了解でアリマス」
ロボの表面の穴から、探索用のミニロボたちを放った。ミニロボたちは遺跡の壁に張り付くと、針状のアンテナを貫通させて、古代遺跡内の情報系統に強制アクセス。データの取得を始める。
その間、内部ガーディアンが『ウネウネドシーンドシーン』とこちらに近づいてきた。
「なっ!」
「あの姿は……一体なんなんだぴょーーん」
「オメガランですワーー」
その外見は、私たちのロボとそっくりな外見だった。敵は4本の腕をグルグルと巻きつけながら、1本の腕にした。
そして……。
「あれは、必殺技のモーションでアリマス! 100トンぱんちでアリマス」
「我々にロボ戦を挑んでくる気だぴょん? 面白い、受けて立つぴょん」
「きますワっ! 100トン……いえ、あれは! 10000トンぽんちですワ!」
「こちらも10000トンで相殺するでアリマース!」
私たちも4本の腕をぐるぐると巻きつけながら1本の腕にした。エネルギーをチャージしながら、相手の攻撃に備える。互いにその場で動きを止めて『タメ』を行う。
こちらも相手も、膨大量のオーラを発しながら、独自の磁場を形成していく。
空間が歪む。
――パワーアップ。
――パワーアップ。
――パワーアップ。
【攻撃力・防御力×30×4×8×15×10(こぶし)】
――必殺技、発動・準備完了。
うさぎの豆の消費数……『1粒』。
きゅぃぃぃぃいぃぃぃぃん、とお互いの腕から音が鳴った。
そして、同時に振りかぶる。
敵がこぶしを放った。
同時に、こちらも迎え撃った。
【【【くらえ必殺、10000トンぱーんち】】】
膨大量の光を伴ないながら、コブシとコブシがぶつかり合った。インパクトの瞬間、打ちつけ合ったコブシを中心に、波動が無数に発生した。
同時に、ロボと敵が吹っ飛んだ。
両サイドの壁に激突。
そのまま、落下する。
浮遊感の直後、ガシャーンという地面に叩きつけられる。落下時の衝撃がロボにダメージとして加算された。
とはいえ、コックピット内は衝撃を出来る限り、受けつけない構造にしてあるので、私たちは無事だ。
「大丈夫ぴょん?」
「問題ないでアリマス」
「私もですワ」
ガシャーンと、数秒遅れで、敵も落下した。そして、ズズズズと立ち上る。
………………。
「あれは、一体なんだぴょん。なんでオメガランにそっくりなんだぴょん!」
「設定はしていたものの、まだこちらが一度も使ったことのない必殺技を使ってきたでアリマス! これは、どういうことでアリマスか!」
「ただいまチビロボから送られてくる情報データを鑑定しているところですので、もうしばらくしてお待ちください」
「げげげ……突進してきたぴょーん」
「迎え撃つでアリマス」
敵がこちらに突進して、一気に距離を縮めてきた。そして、攻撃してくる。
ゴンゴンゴンと互いに、8本の腕で殴り合いをする。乱打である。しばらくして、ほぼ同時期に互いの本体から2本の腕が千切れた。見た目だけではなく、耐久力も同じようだ。
「くっそー。まさか10000万トンぱんちを互いにぶつけ合うなんて、想定していなかったぴょん。ぶつけ合った腕が、負荷に耐え切れずに故障したぴょん」
「しかし、敵も2本の腕を失ったので……って、えええええ?」
ボコボコと敵の本体から2本の腕が生えた。再生したのだ。一方、千切れた腕はゲル状の液体に戻り、敵の本体に取り込まれた。
「そ、そんなああああ。自己修復機能なんて、オメガランにはついていないでアリマス。ずっりーでアリマース」
「卑怯だぴょーん」
私と姉が頭を抱えていたところ、妹が報告してきた。
「お姉さま方、大変永らくお待たせしました。目の前の『ナニカ』についての解析が終了しましたワ。あれは『ドッペルゲンガー機』という『液体ロボット』のようですワ。『オニ族』が作った兵器でもありますワ」
「お、オニ族?」
「なんだぴょん?」
「オニ族とは、恐竜が繁栄する前に地球で栄えていた種族のことですワ。古代文明と言われている文明を築き上げました。この古代遺跡もオニ族の施設なのですワ」
ズドーンズドーンと、敵はミサイルを発射してきた。私たちはそれを回避する。しかし私達の動きを先読みしていた敵は、膨大量に光を放つその腕で『1000トンぱんち』を放ってきた。
防御するも、腕を1本をもっていかれた。
強敵だ!
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