第11話
作業は三日三晩、休まずに行った。姉も妹も、目の下にクマを作っている。私も疲労困憊状態だ。
私たちが今こうしている間にも、グロウジュエリーが育ち始めているかもしれない。だから、頑張る時には体に鞭打ってでも頑張ろうと、話し合ったのだ。
……とはいえ、あまりのつらさに弱音が漏れる。
「ね、寝不足でお肌が荒れるでアリマス」
「グーグー。そんなのコラーゲン食べておけばなおるぴょん。グーグー」
「そ、そうでアリマスね……って鼻ちょうちん出しながら寝てるっ! 今のは寝言っ?」
姉はスパナを持った状態で、鼻ちょうちんを出しながら、眠っていた。
一人だけ眠るとは、許せんっ!
「キャロット、裏切り者を起こすのでアリマス!」
「……分かりましたワ」
妹がふらふらと姉を起こしに向かうも……。グースピスピ……。
「ね、寝たああああああでアリマース。起こそうとした姿勢で、そのまま鼻ちょうちん出して、キャロットも寝たでアリマース。ここにも裏切り者がいたっ! もう私、やってられないでアリマス。私も寝るでアリマスっ!」
その場で私もコテンと横になって、眠った。
数週間後、ロボ3号機が完成。
その数日後、修復したレーダーを含めたレーダー3つも完成した。ぱんぱかぱーん。
「やったぴょーん。完成だぴょん。さっそく使ってみるぴょん」
「分かったでアリマス。ではさっそく、アンコロ餅の美味しいお店をば……」
「違うぴょーん。グロウジュエリーだぴょん!」
「冗談でアリマスよ。3つあるので、それぞれで動作チェックをするのでアリマスよ。今回は探したいものを思い描きながら、ボタンを押すだけで良いのでアリマス。ぽちっとな」
「ぽち、ですワ」
「ぽち、だぴょん」
前回までは、レーダーの最後のネジを回している時に、頭の中に思い浮かべていたものが捜索対象となる仕様だったが、今回はボタンを押しながら、頭に思い浮かべるだけでOKだ。使い勝手が良くなった。
私たちはそれぞれ、グロウジュエリーを頭に思い描きながら、レーダーのボタンを押した。すると、さっそく3つ目のグロウジュエリーの反応を感知することができた。しかも、同じ場所から2つ目、すなわち古代種の巨大亀なる怪獣が持っていたグロウジュエリーのシグナルも発せられていた。これはグロウジュエリーを2つ同時にゲットできるチャンスである。
「おおお、これは僥倖でアリマス」
「そうだぴょん! 僥倖だぴょん」
「僥倖ですワ。早速、オメガラン3号機に搭乗して、向かいま……って、あれれ? うさぴょん姉さまが動作チェックをされたレーダー、光点が多くありませんか?」
「ぎくり……だぴょん」
姉が手に持つレーダーを覗いたところ、明らかに私と妹のレーダーとは違う画面になっていた。
「まさか……自分で、ああ言っておきながら、キナコ餅の美味しい店を探していたのでアリマスね?」
「ご、ごめんだぴょーん。てへへ」
………………。
そんなこんなで、私たちは2つ目と3つ目のグロウジュエリーを同時に手に入れるため、颯爽とロボに乗り込んで、出発した。
河川の底からロボを発進させ、お台場を通り抜ける。そして、日本海を南下した。
目的地は大西洋の前回、あの怪獣と戦った場所から、更に西に向かった地点だ。
海上を半日ほど進んだところで、姉が妹に言った。
「そういえば、キャロット……。寝巻と枕はちゃんと持ってきたぴょん?」
「わ、忘れてましたワ。どうしてもっと早く言ってくださいませんでしたの? おろろろ」
「そういえば前回、そんな会話をしていたなぁー、って今思い出したんだぴょん」
「うぅぅ……枕が変わると眠れないのですワ。今から、アジトに……」
「引き返さないでアーリーマーース! 私たちの目的は馴染みの枕で安眠することではないのでアリマス。グロウジュエリーの回収でアリマスよ。そこんところ、はき違えたらいけないのでアリマス」
「……ですワ」
「そうだぴょん! グロウジュエリーを集めて、母星に帰還するんだぴょん!」
私たちの目的はただ一つ。そのためにも、インド洋を経由し、グロウジュエリーの反応の出ている地点へと急いだ。
その後、何日もかけて移動して、まもなく到着という場所までやってきた。そこで問題が発生した。
「あれれ? おかしいぴょん」
「どうしたでアリマスか?」
「レーダーの点滅がおかしいんだぴょん。ロングモードでマップを見ていた時は何も問題はなかったけど、近距離モードにしたら、点滅がマップ上のアチコチに飛ぶんだぴょん」
「本当ですワ。レーダーの故障でしょうか?」
「なぞだぴょん。もしかすると、レーダーの働きを妨害する何かが発せられているのかもしれないぴょん。偵察用のチビロボたちを発進させるぴょん」
「わかりましたワ」
ロボの表面の穴より、無数の偵察用のチビロボたちを空へと放った。ロボは一旦、その場で留まり、偵察用チビロボたちの調査結果を待つ。しばらくして、偵察用のチビロボの一機が映像を送ってきた。その映像を確認したところ、そこには小島があった。
「島っ! 島があるぴょん」
「人間たちの地図にはのっていない島ですので、無人島ですワ。そして、この島全体から微量な電磁波が流れているようです。電磁波の周波数は人間たちが使っている周波数ではありませんワ。特殊な周波数です。おそらく、この電磁波がレーダーの機能を狂わせているものと思われますワ」
「どういうことでアリマスか?」
「……とにかく、あの島が怪しいということですワ。怪しさがプンプンと匂いますワ。あの島に2つ目と3つ目のグロウジュエリーがあると思われますワ」
「たしかに私も、なんとなく、あの島にグロウジュエリーがある気がするぴょん」
「電磁波の周波数データがほしいのでアリマス。レーダーの感知システムを修正して、レーダーを正常に使えるようにするのでアリマス」
「了解しましたワ。どうぞ、ばにーお姉さま」
妹から周波数のデータをもらう。
ふむふむ。解析に、少し時間がかかりそうだ。
「しかしながら、この島にグロウジュエリーがあるとしても、数週間前からこの島でグロウジュエリーの反応が留まっている理由が不明でアリマス。可能性の一つは小僧と小娘が、あの巨大亀の怪獣からグロウジュエリーを奪い、3つ目のグロウジュエリーを求めて、この島にたどり着くも、何らかの理由で島から脱出できなくなった……という説でアリマス」
「もしくは、あの巨大亀がグロウジュエリーを保持したままいる可能性もありますワ。そして、この島を根城にしている。そして、たまたま、この島から3つ目のグロウジュエリーが生成された……という説も考えられますワ」
「たしか古代種とは、古代遺跡の発掘と一緒に見つかる存在……なんだぴょんね! 私、図書館で書物を漁って、古代種にちょっぴり詳しくなったんだぴょんよ! ぷち古代種博士になったぴょん!」
「おお! うさぴょん姉さま! 古代種について、勉強したのでアリマスね! 勉強するなんて偉いでアリマス。この数週間、秋葉原の地下アイドルに通いつめていただけではなかったのアリマスね!」
「えっへん、だぴょん! もっと褒めてもいいぴょんよー」
「ということは! 私、分かりましたワ。人間が使用しない電磁波が島全体から出ているということからも、この島はただの島ではないと考えるのが自然でしょう。つまり……お姉さま方も、もうお分かりになられたでしょうか?」
「わ、分かったぴょん! この島は……あの、『ひょっこりひょうたん島』だぴょんね?」
「……なんですか、それ?」
「キャロットは、知らないのでアリマスか? あの有名なひょっこりひょうたん島をっ! この島はひょっこりひょうたん島であったのでアリマスね!」
「違いますワっ! この島はひょっこりひょうたん島ではありませーーん」
「じゃあ、なんだぴょん。ひょっこりひょうきん族の住んでいる島とでも言いたいのかぴょん」
「ひょっこりひょうたん島でも、ひょっこりひょうきん族が住んでいる島でもありませーん。古代遺跡ですワ」
「キャロットはあの島を古代遺跡だと思ったのでアリマスね?」
「おそらくあの巨大亀は、この古代遺跡を守護していたガーディアンだった、という可能性も考えられますワ。真相は知りませんけどね」
「たしかに古代種は、守護している古代遺跡から離れる場合もあるものの、基本的には近くにいるらしいぴょん!」
「なるほどでアリマスー」
「さらに、この島のような古代遺跡に、私の警鐘を鳴らさせる何かがおります。嫌な予感がするのですワ」
「キャロットの勘でアリマスね! 勘とは馬鹿に出来ないものでアリマス。十分に注意しなくてはいけないのでアリマスね」
「とはいえ勘違いだったりする場合も多いぴょん。9体1の割合で! キャロットの勘は単なる勘違いである場合が、1の方じゃなくて9の方だぴょん」
「うむむ。さっきの私の発言を取り消すでアリマス。そういえば、キャロットの勘は全然、当たらなかったのでアリマス」
「うぐぐぐ……侮辱ですワ。しかし真実だけに反論できず、悔しいですワ」
キャロットの勘は、当てにはならない。
島を見つけた後、偵察用のチビロボたちの大半を島の探索に向かわせた。そのうちの一機が新たな映像を送ってきた。
「おやおや、また新しいデータが届いたでアリマス」
「見てみるぴょん!」
この映像は浜辺を映した映像だった。
「これはなんでアリマスかね……」
「おや? 浜辺に、焚き火などの生活の跡がありますワ」
キャロットは映像をズームアップした。たしかに焚き火の跡がある。
「本当だぴょん。もしかすると、小僧と小娘もいるのかもしれないぴょんね」
ということは、私の最初に思いついた説の可能性が高い。
『小僧と小娘が、怪獣からグロウジュエリーを奪い、この島へ3つ目のグロウジュエリーを求めてやってきたが、島から脱出できなくなっている』という説だ。
偵察用のチビロボがさらなる映像を送ってくる。
そこには、人造の建築物があった。
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