第22話 陰摩羅鬼─オンモラキ─

人も死したのちに怪異に成ることがある。

小さい頃に一度体験したことがある。

それは誰だったか、身内の葬式であったのは確かだ。

自宅で葬儀を済ませ、家族には酒も入り、あとは寝るだけ。

特に田舎では子供なんてすることはない。

早くに寝るだけだ。


そして、夜中。

ふとしたことで目が覚めた。

そのまま寝付けなくなってしまった。

のども渇いたので、寝室から台所へ。

その時。

がさり、と物音が聞こえた。

まだ起きてる人がいたのか。

しかし、音はもう聞こえない。

水を飲み、再び寝室へ戻ろうとした時。

がさり。

それは、遺体が安置された部屋だった。

僕は、なぜか心惹かれて中を覗く。

そしてすぐに後悔した。

遺体は立ち上がり、部屋をぐるぐるとまわっている。

悲鳴をあげなかったのは、我ながらよく我慢したと思う。

その時、肩に手を置く誰かがいた。

祖父だ。


祖父曰く。

しっかり供養してやらねぇと、こうやって迷いでる奴もいるのさ。

こっちが供養したつもりでも、当人が満足しなきゃ意味がない。


祖父が扉を開け放った瞬間、遺体は糸が切れたように倒れた。

その音に、流石に親族も起きてくる。


なんでも、亡くなった方と、葬儀を頼んだお坊さんの宗派が違うものだったらしく、次の日の告別式を1日ずらし、急遽亡くなった方の流派で葬式をあげた。

その夜に怪異はなかった。

これで、成仏してくれたのかも知れない。

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