第19話 小豆洗い─アズキアライ─
ある日お手玉を拾った。
片方というか、1つだけのお手玉。
ーーしゃき、しゃき。
音だ。音がする。
ーーしゃき、しゃき。
なんの音だろう……。
翌日、テレビを見ているとニュース番組で小豆を洗っていた。
ーーしゃき、しゃき。
その音は昨夜聞いた音に酷似していた。
そして、また夜。
寝ていると聞こえてくる音。
ーーしゃき、しゃき。
あぁ、これは小豆の音なんだ。
祖父曰く。
こいつは音だけの妖怪でもあるし、坊さんの格好をして人前に姿をあらわすこともあるという。
「小豆洗おうか、人取って食おうか」
ただおとなしいだけの怪異じゃねぇぞ。
次の日。
僕は拾ったお手玉を手に取る。
ーーしゃき、しゃき。
この音だ。
昔はお手玉を作るのに小豆を使ったんだ。
そして、食糧難の際には食することもあったという。
このお手玉はもしや……。
僕はこのお手玉を、落とし物として、警察に届けることにした。
元の持ち主の所に帰ればいい、と。
しかし。
ーーしゃき、しゃき。
音は止まない。
ーーしゃき、しゃき。
そして朝。
なぜかお手玉は机の上にあった。
僕は何となく中身が気になり、申し訳ないと思いながら、中を開けてみてしまった。
中身は小豆と。
大量の髪の毛。
その時、耳元ではっきりと聞こえた。
「小豆洗おうか、人とって食おうか」
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