第17話 自己像幻視─ドッペルゲンガー─

街中でふと、自分にソックリな人を見たことがあるだろうか。

「世の中には自分と似た人が3人いる」とも言われている。

が、それとはまた違う話だ。


高校の頃の友人が、入院したと聞いてお見舞いに行った事がある。

その友人は全く悪い所など見当たらず、何故か衰弱していった。

僕がお見舞いに行った時も、少し太めだった彼はガリガリに痩せ細っていた。

一体彼になにがあったのだろうか。

彼は、怪異の事をよく知る僕にだけ話してくれた。

「自分に会った」と。

それはそっくりとかそういうレベルの話しではなく、

友人は一目見た瞬間に理解したという。

あぁ、こいつは俺自身なんだ、と。

それから3日後、彼は亡くなった。

死因は衰弱死。

彼は、自分自身によって殺されたのだ。

ドッペルゲンガー。

見た者は死んでしまうと言われる、もう一人の自分。


祖父曰く。

人間の魂は魂魄とも言って魂と魄の二つから成り立っている。

魂は精神を支え、魄は肉体を支える。

どちらも欠けちゃならねぇもんだ。

もし、それが片方でもなくなったら、そいつは生きながらすでに死んでるのさ。


そして人の死後、魂は天へ昇り、魄は地に帰るという。

この時、魂は神へ転じ、魄は鬼と変じる。

友人は魂魄から魄が抜け落ち、抜け落ちた魄は鬼となって友人を連れに来たのだ。

永遠の地獄へと。

魂魄二つの気が散ると、その魂魄は輪廻転生する事なくあの世を彷徨うことになる。

鬼が帰る所は地獄である。

彼は転生する事なく永遠に地獄に囚われなくてはならないのだ。


僕にも、何故体から魂魄が離れ、さらに魂と魄に分かれるのかはわからない。

身体を強打した時。臨死体験をした時。眠っている時。病気にかかった時。

注意した方がいいだろう。

もう一人の自分。

それに出会った時、すでにあなたは生きながらにして死んでいるのだから。

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