護衛クエスト①

 翌日。今日はルナとシャーロットを伴って、朝から冒険者ギルドに出向いている。


「ご主人様。今日はクエストを受けるのです?」

 冒険者ギルドへ来た理由を知らない、ルナが俺へと質問してくる。


「そうだな」

「おぉ!? 採集クエストです? 討伐クエストです?」

 家に籠もって保険の書類を整理するよりも、身体を動かすことが好きなルナは目を輝かせて、はしゃいでいる。


「護衛クエストだな」

「はわっ!? 護衛クエスト!? 人気のクエストですよ。受注出来ますかね?」

「えっ? そうなのか?」

 護衛クエストが人気とは初耳であった。


「はいなのです。護衛クエストは、確実に報酬金が得られるので人気なのですよ」

 その後興奮するルナからの説明を纏めると――護衛クエストが人気の理由、それは確実性にある。採取系や討伐系であれば、目的が見つからない、もしくは他の冒険者がすでに採取・討伐していることもあり、依頼を受けたはいいが、達成できずに、骨折り損になることもしばしばある。例えば、ブラックウルフの牙を五本納品するクエストを受注したとしよう。すると、ブラックウルフを五匹探すところから始まる。三匹でも四匹でもダメ。五匹見つけて、討伐しないと達成にならない。対して、護衛クエストは護衛対象を指定の場所まで無事に送り届ければ確実に報酬を得られるというのが理由であった。


「なるほどな。でも、今回は大丈夫だ。アドランが俺達が受注する護衛クエストを用意してくれているからな」

 そもそも今回の護衛クエストはアドランから頼まれたクエストだ。アドランから「一度、運搬をする護衛クエストを受けてみろ。そうすれば、良いアイディアが浮かぶかも知れん」と言われたのだ。


「おぉ!? 流石はご主人様なのです! 権力の乱獲なのです!」

「権力の乱用な。って別に乱用した訳ではないし、俺に権力がある訳でもないけどな」

 ルナは俺が話す元の世界の言葉を度々真似する。まぁ、ほとんどが今回のように意味をよく理解していなかったり、間違えて覚えているのだが……。


「いえ、リク様の権力は偉大ですわ。絶大な権力したリク様の元で働く、卑しい身分の……ハァハァ……私……ハァハァ……いけませんわ!? 公衆の……」

「おい!」

 トリップしたシャーロットの脳天をチョップする、俺。


「ありがとうございますわ」

頭を押さえながら、熟れた視線で謝辞の述べる、シャーロット。


 これさえ無ければ……最高の逸材なのにな。


 はしゃぐルナと、暴走するシャーロットを放置して、俺はクエストカウンターへと移動した。


「あら? リクさんいっらしゃい。護衛クエストの件は長から聞いているわ」

 顔馴染みのギルド職員が俺へとクエストの概要が記載された書類を手渡してくれる。俺は、手渡された書類に目を通す。


 なるほどな。俺は護衛クエストが人気であることを悟った。


 今回の護衛クエストは、二十万相当の価値がある商品を運搬する商隊の護衛だ。運搬先は、首都からゆっくりと走る荷馬車で六時間程の距離にある町だ。帰りが徒歩だとしても、拘束時間はおよそ半日。そして、得られる報酬金額は二万G。今回の護衛クエストを受注するのは、俺、ルナ、シャーロット、そして経験者兼指導役として以前お世話になったアルトを加えた四人だ。ルナとシャーロットが得られる報酬金は主人である俺が徴収するが、仮に四人で公平に分配したとしても、一人当たりの報酬金額は五千Gだ。かなり、美味しいクエストを言える。


「よっ! リク。今回は護衛クエストご馳走さんな」

 護衛クエストの概要が記載された書類を眺めていると、アルトから声を掛けられた。


「こちらこそ。指導役を引き受けてくれて助かる」

「ははっ。リク、『カルテット』であるお前の魔法、それに最近ギルドで一番注目されている初心者――『剣姫』がいれば、二人でも余裕だろ」

 アルトは爽やかに笑いながら、俺の肩を軽く叩く。


「……『剣姫』?」

 聞き慣れない単語に俺は思わず首を傾げる。


「は? お前知らないのかよ! 今話題の『剣姫』だぞ」

「知らないな」

「バカか……お前が所有しているルナちゃんだよ」

「えっ?」

 頭を抱えて嘆息するアルトの言葉に、俺は驚く。


「だから、お前の所有するルナちゃんが、『剣姫』だよ」

 え? あのへっぽこエルフ……いつの間にそんな中二チックな二つ名を拝命したんだ?


 話を聞けば、俺が傷害保険関係の書類を整理しているときに、戦力外通告という名で、家から追い出されたルナは、冒険者ギルドでクエストを受けて小銭を稼いでいたようだ。


 そういえば、外から戻ったルナは毎回、俺に「本日の稼ぎなのですよ」とお金をくれていたな。てっきり、採集でもして小銭を稼いでいると思ったら、クエストを受けていたのか。


「へぇ。知らなかったよ」

「いやいや、『剣姫』の剣術は凄いぞ。俺も何度かパーティーを組んだが、日々成長している。俺を超える日も近いだろうな」

 ちなみに、【神の瞳】で確認すると、アルトの剣術はB。剣術適正もBなので、完成していると言えるだろう。対して、ルナの剣術もB。同じBとは言え、ピンキリだ。アルトの言葉を信じるなら、まだアルトの方が上なのだろう。但し、ルナの剣術適正はSだ。アルトを追い越す日は近いのも間違いはないだろう。


 意外な情報を入手した俺は、時間も迫っていたので護衛対象となる商隊の待つ門へと向かうのであった。

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