落ちこぼれのエルフ④
今回の試し切りに指定したモンスターはワイルドボア。全長二メートルを超える大きなイノシシだ。選んだ理由は、牙、毛皮、肉、と全ての部位がそこそこ値段で売却できるからだ。また、最悪ルナが倒せなくても、俺の魔法で倒すことが可能と言うのも選出した理由だ。
「ワ、ワイドボアです!?」
「何か、問題あるか?」
「ありますです! いっぱいありますです!」
標的を聞いたルナが恐慌状態へと陥る。
「俺の調べた限りだと、ワイルドボアは中級の近接冒険者の登竜門的なモンスターらしいぞ? 素材もおいしいし、悪くないチョイスだと思うが?」
「中級ですよ? ルナは初心者なのですよ! 今日、初めて剣を使うのですよ!」
「大丈夫だって。あいつは、直進でしか突進出来ないから、ちょちょいと避けて、ズバッと斬れば倒せるだろ?」
俺は手振りで、倒し方を教える。
「ちょちょいと避けて、ズバッと斬るって……ご主人様は出来るですか!?」
「いや、俺は魔法主体だから、離れた場所から魔法でドーンだな」
「はわわわっ。ズルいのです……。汚いのです……」
「まぁまぁ、いざとなったら助けるから。まずはやってみようぜ」
「はうぅぅ」
奴隷であるが故か、観念したルナは前方で草を食べているワイルドボアへと剣を構える。
「んじゃ、いくぞー」
「了解なのです。もう自棄なのです」
「【ウィンドカッター】」
俺は魔力を抑え目に風の斬撃を発生させ、ワイルドボアの表面を軽く切り裂く。
風の斬撃に切られたワイルドボアは、憤怒の炎を目に宿らせて、攻撃をしてきた俺……の前方にいるルナへと猛突進を仕掛けてきた。
――ズドドドドド!
土煙を巻き起こしながら突進してくるワイルドボアとルナが交差した、その時。
――!?
「ルナァァァアアア!」
大きな砂埃は舞い上がり、ルナがワイルドボアに撥ね飛ばされたように見えた俺は、思わず叫び声を上げる。
僅かな時間とは言え、ルナは顔見知りだ。俺とは従属関係を結んでおり、愛着もある。何より、十二万Gという大金を投じた、大切な奴隷だ。
へ?
「トドメですよ!」
晴れた砂埃の先には、前足を切断されて地に横たわるワイルドボアと、毛皮に覆われた胴体に剣を振り下ろすルナの姿が見えた。
振り下ろされた剣はワイルドボアの胴体を両断した。
「はわわっ。倒したのです? 倒しちゃったのですか!?」
想像以上の結果に困惑する俺。想像外の結果に困惑するルナ。何が起きたか分からぬまま亡骸と化したワイルドボア。これが、後に剣聖とまで謳われたルナのデビュー戦であった。
「はわわわ!? 凄いのです! 凄いのですよ!? ご主人様何かしたですか? 最初の風の魔法が実は物凄く強い魔法だったですか!?」
困惑しながらもはしゃぐルナに、俺は笑顔を向ける。
「違う。俺の魔法じゃない。これが、ルナの実力。ルナの隠された才能の力だよ」
「はわわわ!? びっくりなのです。ルナにこんな才能があったなんて……信じられないのです」
ルナは、呆然と自分の手の中にある剣を見つめるのであった。
その後も、調子に乗ったルナは十匹以上のワイルドボアを一人で仕留めた。
この分だと、ルナ購入の代金十二万G、それと剣の代金三万Gを合わせた十五万Gは早い段階でペイ出来そうだなと、俺は内心ガッツポーズをするのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます