第79話 大量ゴブリン捜査網
二人一組で王都中へゴブリンを放った僕は、一人部屋の窓を開けて朗報を待っていた。
ゴブリンたちは元々の性質上闇に隠れて動くことを得意とするため、夜になれば一部の明るい所以外では
王都とは言え、夜に魔法で外を照らしている場所は大通り位のもの。
なのでゴブリンたちは自由自在に闇を走り回り情報を集めることが出来ていた。
一応ゴブトのような戦闘に特化して気配察知能力の高い者と、ゴチャックたち
四十組ほどのゴブリン捜査隊を放ってからかなり時間が経った。
ラスミ亭もすでに看板を仕舞い、片付けも終わったのか店の灯りも消えた頃、部屋の窓からゴチャックが飛び込んできた。
「見つかった?」
『ゴブゥ』
部屋に帰ってきて
こういうことはやはり人海戦術に限る。
どうやら僕からお金と通行証を盗んだ奴は十人位で同じようなことを町中で繰り返して小銭を得ているこそ泥集団らしい。
そして僕のお金を盗んだ男は、多分あの時路地で僕に声を掛け、人違いだと去って行った男のようだった。
全然気がつかなかったけど多分あの時に盗まれたのだろう。
「通行証を売る? そんなこと出来るの?」
『ゴブ』
お金だけを盗んだつもりが、僕が偶然お金の間に通行証を挟んで入れていたせいでそいつは通行証を手に入れた。
そのことにアジトに戻って成果を出し合った時に気がついた彼らは、どうやら明日にでもその通行証を闇市に流すつもりなのだとか。
あの通行証自体には僕専用なので誰かが代わりに使うことは出来ないはずだが、どうやらそれをいじって偽造する商人がいるらしい。
そんな偽造通行証を使って王城に入って何をするつもりなのかはわからないけど、僕のせいで何か問題が起こっては敵わない。
「明日までに取り返さないとね」
僕はベッドに置いた背負い袋の中に手を突っ込む。
「それじゃあゴチャック、この魔灯を宿の屋根の上に立ててきて」
そう言いながら、袋から僕は一本の太い棒状のものを取り出すとそれに魔力を流し込んだ。
これは魔灯といって、たいまつの代わりになる魔道具で、魔力を流し込むことによってしばらくの間光りを放つ。
いくら僕がゴブリンたちと意思疎通が出来るとは言え、広い王都中に散らばったゴブリンたちには声は届かない。
なので、もし犯人が見つかった場合はこの宿の屋根に魔灯を灯すことで全員に集合の合図を知らせる手はずになっていた。
「といってもさすがに八十人も連れて行くわけにはいかないし、王都で魔法をぶっ放すのも危なそうだからゴブトとゴチャックの二人だけ連れて行こう」
強力な魔物や冒険者、兵士を相手にするならともかくだ。
ただのゴロツキなら僕一人でも十分かもしれない。
だけど、一応要人はしておいた方が良い。
万が一に怪我なんかしてしまったら、せっかく通行証を取り返しても意味が無くなってしまう。
「さてと、それじゃあ皆が戻ってくるまでに作戦でも考えよう。ゴチャック、アジトの場所とか内部構造とか教えてくれるかな?」
『ゴゴッ』
僕は、ベッドの上に手書きで作った王都の簡易地図を広げながらそう言った。
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