第50話 ゴブリンテイマー、証人を召喚する
僕の後ろに姿を表した二人とゴブリン。
それはゴチャックと、彼の
「なっ……ヤンマン!? それにギムイだと!!」
二人は僕の横まで進み出ると、驚きの表情を浮かべるタコールにむけて口を開いた。
「ようタコール」
「お久しぶりです。といってもあなたの命令を受けてからまだ数日ですがね」
二人の声を聞いて、目の前にいるのが幻でもなんでもないと理解したのか、タコールは震えた声を出す。
「どうしてお前たちが……」
「俺たちがここに居るのがそんなにおかしいのかい?」
「おや?
二人が少し戯けたような、馬鹿にしたような声で返す。
僕はそんな二人に続くように口を開く。
「先ほどのアナザーギルドの話は、彼らからじっくりと聞かせてもらったことです」
貴方のお望み通り、証人は連れてきました。
そう言外に意味を込めて僕は告げる。
「……ありえん……そいつらがどうして……」
「どうしてアナザーギルドのことを喋ったのに生きているのか? と言うことですか」
「……」
流石にここで「その通りだ」とは言わない所をみると、まだ奴は自分が完全に負けたと思っていないのだろう。
タコールの自供を待つのは時間の無駄にしかならない。
なので僕はあっさりとネタばらしをすることにした。
「簡単なことですよ。貴方たちアナザーギルドが彼らに掛けていた禁術である呪術を、僕が解呪した。それだけのことです」
「解呪だと! お前はただのテイマー。しかも最弱種であるゴブリンしかテイム出来ない出来損ないではないか」
信じられないと口から唾を飛ばして叫ぶタコールに向け、ターゼンが笑いを含んだ声をかぶせた。
「まだそんなことを言ってるのか? つい今し方この坊主のゴブリンが普通じゃない所をお前も見たはずだろう?」
「まさか、今までその二人が隠れていたのはそのゴブリンの力だとでもいうのか」
僕は「詳しくは教えることは出来ませんけど、そうですよ」とだけ答える。
敵に自分の手の内の全てを伝える必要は無い。
「まさかゴブリン如きがスキルを扱えるわけが……まさか、呪術を解いたのも」
「ええ。僕のゴブリンの中に『ゴブリンシャーマン』ってクラスのゴブリンが居たんですよ。ヤンマンさんが呪いで苦しんでる時にテイマーバッグの中から彼女……ゴファルという名前なんですけどね。彼女が自分なら解呪出来ると僕に教えてくれたんですよ」
あの時僕は、ゴファルからの声を受けて、急いで彼女を召喚した。
*********
名前 :ゴファル 雌
種族 :ゴブリン
クラス:ゴブリンシャーマン
体力 :15/15
魔力 :43/43
*********
ゴファルは現れると、一目散にヤンマンへ駆け寄った。
そしてその体に僕には意味がわからない文字らしきものを、その爪で書き始めた。
ゴファルの爪がどういった仕組みで文字を書くことが出来るのかは不思議だったが、彼女が書いた文字が次々とヤンマンの体に吸い込まれるように消えていく度に、ヤンマンの苦痛の表情が徐々に緩んでいったのである。
「ゴブリンシャーマンのスキルで解呪が出来ることがわかった僕は、そのままゴファルを連れて、ろうの中のギムイとその仲間たちの呪術も全て解いて廻ったんです」
「俺もまさかたかがゴブリンに命を救われるとは思わなかったぜ……。まぁその前にそのたかがゴブリン相手に俺は負けたわけだがな。なぁ」
「ええ、そうですね。ただ単に強いだけじゃなく、ゴブリンが進化すればこんなにいろいろな力が使える種族だとは誰も思わないでしょう」
ギムイが豪快に笑いながらヤンマンの肩をバンバンたたくと、ヤンマンは少し痛みに顔をしかめながらそう同意の言葉を返したのだった。
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