第16話 ゴブリンテイマー、魔石を与える
「普通テイマーがテイムした魔物ってのは、この魔石を喰らう事で強くなるんだよ」
「これをですか?」
「ああ、ある程度の強さの魔物からは魔石が採れる。だから普通テイマースキル持ちはパーティを組んで魔石狩りに出かけて魔物を強化するんだ」
ギルマスに言われて僕は思い出す。
そうだ、ゴブトたちも魔物を倒した後何か食べていた事があった。
てっきり倒した魔物を食べているのだと思ったけど、普通の動物を倒した時はそんな仕草をしているのを見た記憶が無い。
あれは倒した魔物の魔石をゴブトたちが食べていたという事か。
「じゃあこの魔石も換金するよりゴブリンたちに与えた方がいいってことですかね?」
「普通のテイマーならそうだが、お前さんの場合は正直俺にもよくわからん」
「特殊スキルだからですね」
「ああ、今でさえ魔法を使えるゴブリンなんていう信じられない成長をしてるんだ。この魔石を与えたらどうなるか」
そう口にするギルマス。
「それじゃあ早速試してみます?」
「ここでか?」
「ええ、ここならその鑑定魔導具でゴブトたちの変化もわかると思うんですよね」
「しかしこの魔道具は魔物用じゃないぞ」
ギルマスが言うには、この鑑定魔道具では魔物のステータスは上手くチェックできないらしい。
使役魔物のステータスを確認するには、使役しているテイマー本人の自己申告に頼ることになるという。
王都や大きめのギルドの場合は、職員に鑑定スキル持ちを雇っている場合があるらしいが、ほとんどのギルドではいないため、そうせざるを得ないとか。
「それじゃあまず僕がステータスチェックして、その後魔石を与えてからもう一度チェックする形でいいですかね?」
「それでかまわない。だが一つだけ言っておく」
「何でしょうか?」
「魔石を与えた結果、ゴブリンが進化しても俺たちに正直にその事を教える必要は無い」
「どうして――」
「さっきも言ったろ。自分のステータスや使役魔物の力は、本来むやみやたらと人に教える物じゃねぇ」
好奇心に負けて僕のステータス……いや、ゴブリンテイマースキルの能力を鑑定した事をまだ気に掛けてくれているらしい。
でも正直に言って僕はむしろ鑑定して貰って良かったと思っている。
おかげで僕自身も知らなかったゴブリンテイマーの力の一端を知る事が出来たし、使役出来るゴブリンの上限も大体把握することが出来た。
「わかりました。それじゃあそうさせて貰います」
僕はそう言うと腰のテイマーバッグをポンッと叩いてゴブトとゴブナを召喚する。
『ゴブ』
『ゴブブ』
召喚された二匹は、周りを興味深げに見回して、前に座る二人に少し警戒しながら僕の側で命令を待つように立つ。
「この二匹が進化したゴブリンか」
「たしかに普通のゴブリンに比べて大きい気がしますね。あと顔もなんだか可愛いく見えます」
貴方の方が可愛いですよと口を開きかけたが、ゴブリンより可愛いというのは褒め言葉にはならないだろうと僕は口をつぐむ。
それにゴブトの方は可愛いと言われてちょっとムッとしたような感情が流れてきた。
ゴブナは嬉しそうだが。
「それじゃあゴブト、ゴブナ。一つずつこの魔石を食べていいよ」
『ゴブゴブ!』
『ゴブブブブ!』
僕の指示を聞いて、二匹が机に近寄ると、その上においてあった魔石をそれぞれ掴み上げる。
そして、一度僕の方を見て、僕が頷くのを確認してから口の中に放り込んだ。
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