第13話 ゴブリンテイマー、ギルマスを驚愕させる
大体百二十匹のゴブリンを使役しているといった僕の言葉を聞いて、ギルマスは目をまんまるに見開き驚きを顕にする。
「百二十だと。二十匹の間違いじゃ……」
「気がつくと増えてるんで、ちゃんとした数は数えてないけど、この町に入る前に数えた時は百匹以上は確実にいましたよ」
誰にも見つからないように街道から少し奥まった所で全員を整列させてから、ゴブトとゴブナに協力して貰って数えてみたけど途中でめんどくさくなったんだよなぁ。
なので百匹という数も大雑把なものだけど。
「しかしいくらゴブリンといっても、そんな数使役してるテイマーなんて聞いたこともねぇぞ」
「そうなんですか? スライムとかホーンラビットあたりだと結構な数をテイムできるんじゃないですか?」
ゴブリンよりは強いスライムでも、魔力消費量がゴブリンとそれほど違うとも思えない。
田舎育ちなので専門的な知識の無い僕の憶測に過ぎないけど、それほど大きく間違っていないと思う。
「それでも百匹以上同時にテイムしてるやつなんて聞いたことねぇよ。そもそも、そこまで出来るような奴はとっくにもっと上位の魔物に乗り換えてるしな」
「上位の魔物……ですか」
そうだった。
【ゴブリンテイマー】などという特殊なスキルと違い、普通のテイマースキル持ちの冒険者は、自らの力が上がるに合わせてどんどん強力な魔物に乗り換えていくのが普通なのだ。
もちろん強力な魔物だけでなく、色々と便利なスライムや偵察によく使われるスカルバット等も同時に使役している場合も多い。
けれど僕のように弱い魔物だけを大量にテイムしている冒険者は普通に考えて存在しないのだろう。
「失言だった。すまない」
「何がです?」
「お前がゴブリンしかテイム出来ないと言うことをすっかり忘れていた」
「気にしないで下さい。昔はグリフォンとかドラゴンとかテイム出来たらなと思ってましたけど、今はもうそんなことは気にしないようになりましたし」
「そうか。それならいいんだが」
ギルマスは少しばつが悪そうな顔でそう答えると、しばらくお茶と茶菓子をつまんでから話を続けた。
「しかし、それだけの数をテイム出来るってのはやはりその【ゴブリンテイマー】ってスキルのせいなのか?」
「普通のテイムスキルではあり得ないというなら多分そうだとおもいます。他のテイマーさんとは一度も会ったことがなかったので今まで不思議にも思っていませんでした」
「なるほどな。所でお前さんはテイマースキルについて実際の所どれくらい知ってるんだ?」
どれくらいと言われても僕にはどう答えたら良いのかわからなかった。
ただ【テイマー】スキルというものは魔物をテイムし、使役出来るスキルだと言うことくらいだろうか。
あとは神官様に聞いたテイマーの基本的なテイム方法とテイムによる魔力消費の説明、そして魔物の寿命変化くらいだと思う。
「他にはテイマーバッグの使い方くらいですかね」
「そうか。ううむ」
「どうかしましたか?」
「いや、その巡回神官はお前さんの【特殊スキル】については何も言わなかったかと思ってな」
「そうですね。神官様もご多忙のようで、すぐに次の村に向かうらしくてあまり長くお話出来ませんでしたし」
神官様にスキルを調べて貰った後は、あまりに使えないスキルだと村の同い年くらいの子供たちに馬鹿にされ、大人たちも失望したのか僕にはほとんどかまわないようになっていた。
そんな中でも神官様だけは僕のスキルを馬鹿にしなかった。
「ただ、最後にこう仰ってました」
「ほう?」
「スキルというのは女神様が与えてくださった物。外れスキル等という物は無い。貴方のそのスキルも必ず意味があるはずだ……って」
あの言葉が無ければ僕はとっくにスキルを使うことを諦めていたかもしれない。
ギルマスとルーリさんは、僕の話を急かすこと無く聞いてくれた。
村を追い出された後、ゴブトとゴブナの二匹と出会ってから森の中でしばらく暮らしていたこと。
気がつけばゴブトとゴブナの間に十匹以上もの子ゴブリンが生まれたこと。
慌てて全員をテイムしたその日から数日間は、魔力切れで倒れたこと。
「そんなことを繰り返してたら百匹以上になっちゃったんですよね」
もちろん今ではゴブリンたちには繁殖をしないように言い聞かせてある。
それを思いついたのはかなり後だったため、ここまでの数になってしまったのだ。
「なっちゃってたって、お前そんな軽く言うけどよ」
「そうよ。普通そんな数の魔物を一度に使役するなんて、魔力切れで死んじゃうわよ」
ルーリさんは心底心配そうな顔でそう口にする。
そんな事を言われても、今の僕はもう魔力切れが起こる様なことは無い。
ゴブリンたちが増え続けている間はかなり大変だった記憶はあるが、それでも数日で落ち着いたのだ。
「聞けば聞くほど不思議だな」
ギルマスは僕の話を腕組みをしながら聞いていたが、突然何かを思いついたのか手をぽんっと一つ叩くとこう言った。
「お前さんさえ良ければだが、ギルドの魔道具でお前さんのスキルを『鑑定』させちゃくれねぇか?」
「鑑定ですか?」
「おうよ。まぁ完璧に全てがわかるってわけじゃねぇんだが、もしかしたらお前さんのそのスキルの謎が少しはわかるかもしれねぇぞ」
鑑定か。
村で神官様にスキルの鑑定をしてもらってからは一度もした事は無かったな。
「どうだい? スキルってもんは使い方次第で変化するものもあるって聞くぜ。まぁ、ギルマスやってる俺ですら実際にそういう奴は見た事はねぇが」
「それではお願いして良いですか?」
僕はギルマスに軽く頭を下げるとそう答えたのだった。
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