第二章 ゴブリンテイマーの凱旋

第11話 ゴブリンテイマー、ギルドに凱旋する

「本当にあの人たちを――【炎雷団】の人たちをエイルくんが一人で倒したんですか?」


 ギルドのカウンターで、ルーリさんは何度目かの同じ問いかけをする。

 炎雷団とは、僕がゴブリンたちと共に返り討ちにしたあの強盗パーティのパーティ名らしい。


「ええ、もちろん。といっても、さっきから言ってるように僕一人じゃ無くてゴブリンたちと一緒にですけどね」


 ルーリさんは、僕の同じ答えに信じられないといった風な目を向けてくる。

 しかし、僕とゴブリンが初心者狩りなんてしてるようなパーティを返り討ちにした位で何を驚いているのだろうか。


「もしかしてゴブリンが大人の冒険者に勝てるわけが無いって思ってます?」


 たしかに本来のゴブリンなら、とてもではないけど冒険者に勝てるわけがない。

 そう思われても仕方が無いだろう。

 だけど、僕の【ゴブリンテイマー】でテイムし、一緒に訓練を繰り返してきたゴブリンたちを、そんじょそこらの駄ゴブリンと一緒にされては困る。


「それもそうなんですけど……」

「普通そう思うのも無理は無いです。だってゴブリンは最弱の魔物だって誰もが思ってますからね」


 何かを言いかけたルーリさんの言葉を遮るように僕はしゃべり出す。

 村を出てこの町に来るまで半年。

 僕はその間、村と町の中間地点のとある場所でゴブトたちと出会い、共に訓練を繰り返してきたのだ。

 その血のにじむような日々の話を誰かに聞いて貰いたい。

 そうずっと思っていたのである。


「実は僕とゴブリンたちは――」

「お前が【炎雷団】をボコボコにしてしょっ引いてきたって言う新人冒険者か」


 カウンターに身を乗り出すようにして口を開きかけた時、突然後ろから大きな声で僕は呼びかけられた。

 野太く、力のある声色。

 一体誰だと振り返ろうとした時、目の前のルーリさんが嬉しそにその声の人物に答える。


「そうですギルマス。この子がその新人冒険者のエイルくんです」


 ギルマスということは、この冒険者ギルドのギルドマスターだろう。

 僕は恐る恐る後ろを振り返る。


「お前があの【炎雷団】の奴らを? 信じられんな」


 そこには僕の背丈の二倍ほどもありそうな大男が腰に手を当てて仁王立ちしていた。

 腕の太さも僕の二倍……いや、三倍以上はあるだろう。


「可愛らしい顔立ちをしているが、本当にこいつなのか?」


 頬から口元にかけて大きな傷跡がある凶悪な顔で僕の顔をじろじろと見た後、ルーリさんにそう問いかける。

 可愛らしい顔立ちって、そりゃ貴方に比べれば【炎雷団】の人たちですら可愛らしく見えますよと言いたくなったが、ここは我慢だ。


「ええ、間違いなくこの子が彼らを倒したそうです。【炎雷団】も全員が彼と、ゴブリンにやられたと証言してますわ」

「ゴブリンか。余計に信じられなくなってきたが、坊主の横にいるのがその【炎雷団】を倒したゴブリンか?」


 あの後、怪我をしたゴブナをはじめとする数匹のゴブリンをテイマーバッグに戻した僕は、山麓の群生地で依頼の薬草を採取した後、元気なゴブリンたちに【炎雷団】の全員を担がせ街まで戻ってきた。

 そして門番をしている衛兵たちが、なんとも言えない表情を浮かべている中、ギルドへ一直線に向かった。

 ギルドの外にゴブリンたちを待たせ中に入ると、一目散にルーリさんの元へ走り寄り、依頼の薬草を渡しながら事の次第を全て伝えたのである。

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