第10話 ゴブリンテイマー、無双する
「一気に決めるよ」
僕は体内に残っている魔力を利用して二匹に補助魔法を掛けた。
使役した魔物に対してだけ発動出来る補助魔法。
これも【テイマースキル】の一つだ。
ゴブリンたちはその効果が現れると同時に行動を開始する。
未だに現状を理解出来てない近接戦闘を挑んできた三人の男たちに向けてゴブトが駆ける。
「なっ! 早――」
そして、一人目のナイフ男の懐に入り込むと、右手のショートソードで男の腕を切り払う。
それを見て我に返った長剣使いが下げていた剣先を慌てて持ち上げようとするが、ゴブトの速度の方が早い。
「ごぎゃああ」
あっという間に二人を戦闘不能にさせると、残りの斧使いが背を向けて逃げ出そうとするが、周囲を囲んだゴブリンたちが彼の前に立ち塞がり妨害する。
「どけぇ! このゴブリンどもがぁ!! ぐぎゃああああああああああっ!!」
ゴブリンたちの壁のせいで足の止まった男に、ゴブト背後から近寄りその足を切りつけ動きを封じる。
一方、ゴブナは得意の火魔法で二人の得物である弓とスリングショットを燃やすことに成功していた。
「ぬぅぅっ!? 熱っ!!」
「俺の弓がぁ。手がぁ」
得物を失った二人は、最初に見た下卑た笑い顔はどこへ行ったのか、今にも死にそうな表情でその場にへたり込むと、どうやら失禁してしまったようで、その尻から水がにじみ出るのが見える。
男たち全員が戦意を完全に失ったのを確認してから、肩掛け鞄から取り出したロープをゴブリンたちに手渡す。
「こいつら全員逃げ出さないようにきっちり縛っておいて。後でギルドに突き出すから殺しちゃ駄目だよ」
『ゴブ!』
「それとゴブト以外の皆は作業が終わったらテイマーバッグに戻って良いよ。後は僕とゴブトだけで大丈夫だからね」
『ゴビ!』
『ゴブゴブ』
作業を終え、僕はゴブナたちがテイマーバッグに戻ったのを確認した後、魔力をテイマーバッグに流し込むように意識を切り替える。
これで街に帰る頃にはゴブナも、他のゴブリンたちの体力も元に戻るだろう。
「さてと。後はこいつらを連行するだけかな」
ギルドに登録して初めての仕事に、予想外の荷物が出来てしまった。
でも、この男たちはかなりの『余罪』もありそうだし、ギルドに連行すればきっと報酬も沢山貰えるに違いない。
「でもその前に」
僕は縛り目を確認した後、立ち上がると道の先に目を向ける。
「ルーリさんが選んでくれた初依頼だけはきっちりとこなしておかないとね」
『ゴブゥ』
肩掛け鞄から取り出した地図をもう一度確認すると僕は歩き出す。
子供でも倒せると馬鹿にされるゴブリンと共に、子供でもこなせる簡単な薬草採集の依頼をクリアするために。
「ルーリさん、褒めてくれるかなぁ」
この時、笑顔で僕を褒めてくれるルーリさんの姿を想像し、自然に頬が緩み気も緩んでいた僕は知らなかったのだ。
ゴブリンたちと共に倒したあの強盗パーティが、ギルドでも上位の実力を持つAランクパーティだったことを。
そしてこの出来事をきっかけに僕の人生は一変し、最強への道を駆け上がっていくことになることを。
僕はまだ……知らない。
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