第4話 ゴブリンテイマー、ゴブリンを召喚する
テイマーバッグから飛び出した二匹のゴブリンは、少し周りの様子を確認するようなしぐさをしてから僕を見つけて鳴き声を上げる。
『ゴブゥ』
『ゴブブ』
二匹のゴブリンは僕にそう挨拶をすると、僕の左右に寄り添うように立った。
ゴブトとゴブナ。
僕が【ゴブリンテイマー】というスキルを手に入れて、初めてテイムしたのがこの二匹である。
あの頃の僕は二匹のゴブリンを使役していただけでも毎日のように魔力が枯渇しそうになってたっけ。
基本的に【テイマー】は同時に自分の持つ魔力量で養える数までしかテイム出来ない。
なぜならテイムした魔物は、主の魔力を糧として生きるようになるからだ。
しかも大きく強い魔物ほど主の魔力消費量が多くなる。
なので、最強種と呼ばれる中でも巨大なドラゴンを従えているテイマーは、膨大な魔力量を持っていても一体使役するだけで精一杯になってしまう。
強大な一体を使役するか、複数の便利な中型の魔物を使役するか、それはテイマーの目的次第だ。
「でもドラゴンテイマーとか憧れだよなぁ」
と言っても、僕の場合はいくら保有魔力量が多くなっても、結局ゴブリンしか使役出来ないのだけれど。
「今から薬草の採取に行くから、強い魔物が寄ってきそうなら教えてね」
『ゴブ!』
ゴブリンは弱い。
全ての魔物の中でも最弱と言って良いくらい弱い。
だけれど、そんなゴブリンだからこそ、強者に襲われないようにする能力に長けていたりもする。
ゴブリンの特徴としてもう一つあるのが繁殖力だ。
その弱さを補うためなのか、彼らの繁殖力はかなり高い。
雄と雌を同じ場所に閉じ込めておけば、一月もしないうちに数十匹くらいまで増える。
なのでゴブトたちには主命令で繁殖を今は禁止している。
なぜなら一気に増えられると僕が使役できる数をあっさりと超えてしまいかねないからである。
そんなゴブリンという種族は沢山死んでも数で補うことで、今まで種を存続させてきたのだろう。
「あった。あそこが群生地に向かう林道だな」
ゴブリンを従えている僕を、奇異の目で見る畑仕事をしている人たちの間を抜け看板の前までたどり着いた僕は、うっそうと茂った森の中に続く細い林道を見ながら地図と見比べる。
街道の先を見てもほかに看板は見えず、地図に書かれている看板はここで間違いないようだ。
「それじゃあここから先は二匹とも魔物の警戒よろしく」
僕は二匹にそう告げると林道に入っていく。
後でになって思う。
この時僕はゴブトたちにこう言うべきだったのだ。
『魔物だけじゃなく危険になりそうなものを感知したら教えてね』
と。
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