発揮されるポンコツ性

 真っ白な毛並みのオオカミはアーミーウルフだと思うけど、あの大きな白銀の毛並みのオオカミはなんだ?


「ひうっ…あ、あれはジェネラルウルフじゃないですかぁ…なんでこんなところにいるのぉ…」


 どうやらキリーはあの白銀のオオカミの事を知っているようで、怯えたように頭を抱え縮こまった。

 知っているなら話は早い、あのオオカミが何者なのか、どんな特徴があるのか聞いておきたい。


「キリー、あのオオカミは何!?」


「はいぃ、あれはジェネラルウルフというアーミーウルフの親玉みたいなやつです。あれが居るだけでアーミーウルフの能力が上がるんですぅぅ、もう駄目です…」


 なんと。あのジェネラルウルフがいるだけでアーミーウルフの能力が上がるということは、さらに連携攻撃が苛烈になり、一撃のダメージも増えてしまうということか。

 それに、あの見た目だと本人の戦闘力も十分に高いのだろう。


 この状況をどうしたものだろうか。アーミーウルフ三体ぐらいであれば僕とシリスで何とか攻撃をしのいで、キリーの攻撃魔法で倒せたのではないかと思うが、この状況は非常にマズイ気がする。

 打開策を探したいが、今の僕たちに出来ることが少なすぎて活路を見いだせない。


 この状況を打開して生き残る為に必死に頭を働かせていると、シリスがピシッと手を挙げて興奮したように口を開いた。

「はいっ、私があの群れに突撃して攻撃を受けてきますので、リーンさんは見ておいてください!」


「ちょっ、シリス!」


 そう言ったが早いか、止める間もなくシリスはウルフの群れに突っ込んでいった。あのままでは、アーミーウルフとジェネラルウルフの恰好の餌食だ。シリスの軽鎧は急所こそある程度防御されているが、それ以外は軽量化の為に鉄板等が施されていない。

 多少の攻撃こそ防げるかもしれないが、連携を組んで攻撃されてしまうとどうしようも無くなって来る。


 これは、シリスがウルフの群れに辿り着く前になにか手を打たなければ。臨界点があるのか、シリスが近づいてもウルフ達は攻撃はして来ず、牙を剥いて威嚇するだけに留まっている。

 今このタイミングで頼れるものと言ったらキリーの攻撃魔法ぐらいしかない。魔法で攪乱している間に策を練りたい。


「キリー!なんでもいいからジェネラルウルフたちに攻撃魔法を打ち込んで!」


「こ、攻撃魔法なんて使えません~…」


 は?攻撃魔法が使えない?咄嗟の事で頭が上手く回らない。


「え、魔法使いのジョブなんでしょ?攻撃魔法ぐらい使える…んだよね?」


「わ、私は補助魔法しか使えないんです…すみません…」


「なんでだよ!!」


「ひいっ、い、痛いのが嫌なので防御力上げたり、敵を拘束したりとか自分の身を守る魔法しかとってなくて……ごめんなさいごめんなさい…」


 この緊急時にまさかの事実を聞かされたことによって焦った僕はつい大きな声を出してしまった。それによって委縮したキリーはますます縮こまってしまった。


 ウルフの群れと距離があり、軽鎧とはいえシリスにはやはり重たいようで速さが出ていないので、まだ奴らのパーソナルスペースには到達していないのが幸いだが、とてもカオスな状況だった。


 とりあえずこのままだと本当にシリスが危険なので、補助魔法でもなんでもいいから掛けて貰おうとキリーに再度声を掛けてみる。


「キリー、なんでもいいから補助魔法掛けて!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」


 キリーはモンスターへの恐怖と、僕に怒られたことで錯乱して耳を塞ぎながら謝罪の言葉をずっと繰り返している。

 そっとしておきたいところだが、今はそんな余裕もない為耳を塞いでいる手をグッと引っ張り急かすように再度指示を出す。


「キリー!拘束魔法でも何でもいいから早く魔法を!」


「は、はいぃ。バ、バインド!!」


 先ほど、敵を拘束出来る魔法を使えると言っていたので、それがウルフに当たって上手く拘束出来れば活路が見いだせるかもしれない。

 やっとのことでキリーが魔法を使ってくれた。そろそろシリスがウルフの群れに到着しようかとその時、キリーが装備した杖の先から黄色い閃光が走ったかと思うとウルフの群れの方へと飛んでいき




 ちょうど直線上に居た


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