いざギルドへ
リリスさんから依頼を受けた僕たちはギルドへと向かうことにした。
そう、 僕たちだ。
「ねえ、シリス、なんでいるの?」
「私も冒険者登録をしようと思いまして!」
シリスが冒険者登録する?シリスは線も細く、看板娘の立ち位置が良く似合っている。冒険者からは対角線にいるであろう存在だと思っている。
「本当に登録するの?」
「はい、自分の家の事なので自分も力になりたいんです。それに…」
「それに?」
「いえ、なんでもありませんっ。さあ、ギルドに行きましょう!」
ふむ、今何か大事なフラグが建った気がしたけど、シリスが言いたくない以上、追及するものよくないだろう。めちゃくちゃ気にはなるけどね。
ギルドは町の中心地にある建物で、町で一番大きな建物なので迷うことは無い。そしてギルドの前まで来ると扉をグッと開ける。そこから中を見渡すと沢山の人間で溢れていた。
扉を開けて正面の奥に受付と、担当のお姉さんらしき人が見えたのでそこに向かって歩き出す。
そして受付へとたどり着く。受付には眼鏡を掛けた黒髪ロングの美人が座っていた。
「いらっしゃいませ、初めての方ですね。私はこのギルドの受付、サナと申します。今日はご依頼でしょうか?」
「いえ、今日は冒険者の登録がしたくて来たんです」
「わ、私もっ」
ううむ、本当にシリスは冒険者登録するのか。止めたい気持ちはあるけれどシリスも本気なようなのでグッと堪える。
「冒険者登録ですね、ではこの紙の真ん中に手のひらを当ててください」
そう言って、受付嬢のサナさんは僕たちに1枚ずつ羊皮紙を手渡した。色々な記入欄があるがどれも空欄だ。
僕たちは言われるがままその紙に手を置く。すると、ぱぁっと小さく羊皮紙が光ったと思うと空欄が全て記入された状態になった。少し見てみると僕の名前などが書かれている。
「ふふっ、驚きましたか?この紙には魔法が掛かっていて、手を置くと個人情報が全て記入される仕組みになっているんです。だから、取り扱いには注意なんですよ?」
僕たちが、その仕組みに驚いているとサナさんはいたずらが成功したかのように笑みを浮かべて説明をしてくれる。見た目と雰囲気からクールビューティで冗談やいたずらは苦手なのかなと勝手に思っていたがおちゃめな所もあるようだ。可愛い。
なるほど、手を当てるだけで個人情報が記入されるのは手間が省けるので効率化でもあるけど、簡単に悪用も出来てしまうだろう。便利さと不便さは二律背反なのだ。
「というわけで、この紙の記入で登録は完了になるんですが次はギルドの説明とジョブとスキルの説明、あとお二人のステータスについてお話させていただきます」
登録は案外簡単に終わったようでギルドの説明等に入った。
ギルドの説明に関しては本で読んだことがある内容とほとんど一緒だった。冒険者と依頼者を繋ぐ仲介業者且つリスク管理をしてくれる組織で、冒険者へのランク付け、依頼の難易度の設定をすることで冒険者たちが適切なレベルの依頼を受けれるように管理をしたり、ギルドカードの給付によって本人の身分証明やジョブやスキルの習得に役立つという。
そしてジョブとスキルの説明に移る。ジョブとは大まかな戦闘のスタイルで例えば「剣士」のジョブだったら剣で戦う為のステータスに倍率が掛かったり、剣用のスキルを習得しやすかったりする。
ジョブ自体は元の本人のステータスと個人の人格に由来してギルドカードによって選定されるという。なぜ人格にも由来するかというと、あまり本人の性格、行動理念からかけ離れたジョブが選ばれてしまうとジョブがかみ合わず、戦闘時に不具合が起こる可能性があるからだという。
また、ギルドカードによって最初に選ばれるジョブは「下級ジョブ」であり、それからの行動や経験値の積み重ねによってより本人の性格に沿った「上級ジョブ」が選択できるようになるそうだ。なるほど、魔法ってすごい。
そしてスキルとは、それぞれのジョブに合った「技」である。剣士でいうと斬撃を飛ばす「飛刃」などがスキルに当たる。スキルは戦闘によって溜まるスキルポイントを使い自分で選択して習得できるので同じジョブでも戦闘スタイルやジョブの構成が違ったりするので、個人の特徴が出る部分でもある。
このスキルポイントというのは、冒険者が戦闘によって得る経験値をギルドカードにかかっている魔法によって具現化して、より明確に冒険者に還元するための仕組みだそうだ。魔法ってすごい。
「なるほど、本当に人によっていろんな色が出そうですね」
「そうですね。私はどんなジョブでしょうか」
個人によってジョブやスキル構成が変わっていくということに僕たちは少しワクワクしている。
「そうなんです。なのでパーティによっては、このジョブ、このスキルを持っている冒険者を募集。という風にピンポイントで探している場合もあります」
パーティとは、簡単に言うと冒険者同士によるチームだ。大体が4~5人で構成されており、お互いがお互いの欠点を補いあい、長所を生かすことによって依頼の達成度が格段に上がり、生存率が上がるというわけだ。だからギルドでもバーティの編成は推奨されているようだ。
「それで、肝心のお二人のステータスとジョブですが、まずはシリスさん」
「は、はい!」
「シリスさんは防御と筋力は一般の方と比べても少し低いぐらいですね。ですが、魔力が高く属性も水と光属性が使えるようですね。凄いです!光属性はとても珍しい上に、水属性含め回復に特化しているので、回復の専門職ヒーラーとして大成すること間違いなしですっ」
サナさんは少し興奮したように話を進める。どうやらシリスは前線に出ない魔法職、特にヒーラーとして相当優秀なステータスを持っているようだ。冒険者は厳しいのかと思っていたが、戦うのとは別の形で活躍の機会があったようだ。
「それで、ジョブですが、当然ヒーr………え?」
「ど、どうしましたか?」
ジョブの発表に移ろうとしたサナさんが急に固まった為、声を掛ける。すると、ぎこちなくこちらを見ると苦笑いをしながら口を開いた。
「シリスさんの職業は…………騎士…です…」
はい?
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