感覚で、という便利な言葉
伝承によると、キュレ草はこの
なんだその漠然とした内容は。と言いたいが、伝承に文句をつけても仕方ない。気を取り直して伝承の意味を考える。
「でも、日当たりのいい場所っていうと町の近くの方が開けた場所はあると思うんだけど」
「もちろん最初はそう思ったのですが、数日探しても見つからず……それでとりあえず奥地を見に来たんです」
なるほど、それはそうか。まず日当たりのいい場所と聞いたら開けた場所を探す。それに、町の近くには観光に来ている人が大勢いる。その中で未だに見つかっていないということは、別の場所に生息していると考えるのが自然だろう。
だが、解決への糸口は全くもって見つからない。こういう時は逆転の発想をしてみよう!
「よし、もっと奥まで行ってみよう!」
「もっと、奥ですか?何故また…」
「うーん、単純だけど森の浅い所で見つからないなら、逆に奥地にどんどん進んでいこうと思って」
我ながら頭すっからかんの何も考えていない策ではあるが、現状見つからない以上はとにかく行動してみるしかないと思った。それに、伝承でしか残っていないということは最近の目撃例が無いということ。よっぽど人の目につかない所に生息しているのだと考察できる。
この森は浅い所こそ観光者が多くにぎやかだが、奥地には特に見どころも無くモンスターも生息しているため人が来ることはほとんどない。さらに奥の茂みの向こうなど誰もいかないだろう。
だからこそ探す価値はあると思う。
「ということなんだけど、どうかな?」
「確かに、今のままじゃどうどう巡りな気もしますね…他に探す場所も無いですし少し行ってみましょうか」
こうして、僕とシリスは森のより奥深く、人の手が全く入っていない茂みの中へと歩みを進めていった。
何度かこの森には入っている僕だがさすがにこんな所にまで来たことはない。全くもって地理もわかってはいないが、なんとなくで奥まで進んでいく。
まあ周りが茂みばっかりなので本当に奥に進んでいるのかは分からないけど。
だが、なんだろう。茂みに入った辺りから感じるこの感覚は。何かよくわからないけれどこっちの方にある気がしている。
不思議な感覚だが、今は無用にこの感覚に身を任せたかった。
----------
不思議な感覚に身を任せて茂みの中を進んで十分は経っただろうか?時刻はまだ昼頃だと思うが、周りは木々に囲まれ茂みに覆われかなり薄暗い。
正直に言おう、後悔している。確実にここじゃない気がしている。
伝承の条件とは真逆の場所に来ている気がして仕方がない。たまに後ろにいるシリスを確認するが、本当にこんなところに?と非常に不安そうな顔をしている。
いくら何でも頭空っぽで感覚に身を任せすぎたかな…でも、あれだけ自信満々に奥に行こう!とか言った手前今更引き返そうとか言えない。
何とか言い訳して引き返してもらおうかな…うーん。
「あの、リーンさんどうされたのですか?」
「え?あ、いや何でもないよ?」
言い訳を考えるあまり、足が止まっていたようだ。一度歩みを止めて話す余裕が出来たのかシリスが疑問を投げかけてくる。
「リーンさん…非常に言いづらいのですが…本当にこっちにあるんでしょうか?」
「大丈夫だよ!僕に任せておいてよっ」
しまったああぁぁぁ!つい見栄を張ってしまった!どうやら僕は女の子の前では見栄を張ってしまうらしい。今ま女性と関わって来なかったので初めて自分の
見栄を誤魔化すように僕はどんどんと茂みをかき分けて進んでいく。もう、引き返せないところまで来ている。
それからまた時間が経ち、いよいよもって取り返しがつかなくなってきた。これは、見栄を張らず謝ってしまった方が楽かもしれない。
そう思って口を開こうとしたその時、目の前に開けた場所が現れた。
そこには
「これは…」
「すごいです…」
開けた場所の中心に薄暗い空間を照らすように輝く真っ白な花が一輪咲き誇り、その花に一筋の光が降り注いでいる、幻想的な光景があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます