第31話 VS聖十騎士グレイソン
「むっ、なんだキサマらは。ここを聖都の中心『聖皇城』と知って近づくか!」
「待て! あの男は確か……特級騎士のブレイブではないか!?」
「いや、違う! 先程聖皇城に待機しているギルバート統括より勅命が下った! あの男、ブレイブは騎士団の裏切り者になったと! 同様に聖十騎士アリシアもネプチューン様に逆らう狼藉者だ!」
「なんだと!?」
「確かに、連中は巫女を殺さずに生かしているようだ! おのれ、我らが四聖皇の定めた命令に従わぬとは!」
「構わぬ! この聖皇城へ土足で近づく者はそれだけで重罪だ!」
「討ち取れー! あの二人を打ち取り、巫女を殺した者には特級騎士――いや、聖十騎士入りが認められるとの仰せだー!」
「おおおおおおおおお! 反逆者達! 覚悟せよー!!」
聖皇城へ近づくやいなや、その周囲を守護していた騎士達が一斉にオレとアリシアに向かって突撃してくる。
やはり、アリスの言う通りオレとアリシアの裏切りは向こうに伝わっているようだ。
だが、無論オレもアリシアもこんな連中に遅れを取りはしない。
「アリシア。一気に突破するぞ」
「もちろんよ。つーか、アタシのことはアリアでいいわよ」
「そっか。じゃあ、いくぜ! アリア!」
「ええ! 真人!」
名を呼ぶと同時にオレは光の速度を持って向かってくる騎士達を全てなぎ倒す。
アリシアも真名スキル『命の剣』を使い、その刀身を数メートル以上に伸ばすと一気に横薙ぎで振り払い、残った騎士達を斬り伏せる。
おおう、さすがは真名スキル。
生命エネルギーでできているから刀身も自由に伸ばせるってわけか。
そうして塔を取り囲んでいた騎士達を一掃するとオレ達は扉の前に立つ。
とうとう、ここまで来たか。
「真人。ここから先が聖皇城になるわ。聖皇城は百階建ての塔になるわ」
「百!? マジかよ。さすがにそれだけあると登るのも一苦労だな」
「安心して。各階層には上層へ行くための転移魔法陣があるわ。それを使えば上の階に一気に転送できるけど……当然、その転移陣を守っている連中がいるわ」
「残る聖十騎士か」
オレの発言にアリアは頷く。
「残る聖十騎士は五人。言っとくけど、どいつもアタシ以上の強敵よ。いえ、下手すればあのアリスさん以上の――」
「だとしても、ここで怖気づく理由はないさ。それに戦うのはオレだ。お前はシュリを守ることに専念してくれ」
「そうね。分かった」
そう言ってアリアと頷きあった後、オレは扉を開く。
瞬間、扉の向こうより、視界全てを飲み込む業火が波のように襲いかかってきた。
「ッ!? アリア!」
「わかってるわよ!」
オレが叫ぶより速く、アリアは『命の剣』を応用したバリアを張り、シュナだけでなくオレも守る。
まさか開錠と同時にこんなとんでもない攻撃をしてくるとは。
冷や汗を流すオレ達を見つめるように聖皇城の扉の向こう――第一階層には、すでに『敵』が待ち構えていた。
「来たか。神に逆らう反逆者共め」
そこにいたのは全身を黄金の鎧で纏った騎士。
顔には金色の甲をかぶっており、素顔は見えない。
だが、声から騎士が男であることはなんとく予想できた。
騎士はオレやアリア、更にはシュリを見つめると、まるで汚らわしいものでも見るかのように吐き捨てる。
「ふんっ、まさか本当に聖十騎士団から裏切り者が出るとはな。アリシア、貴様何を持って我ら聖十騎士の誇りに泥を塗り、神たるネプチューン様に反逆するか?」
「決まってるわ。ここにいるアタシの親友シュリのためよ」
迷いなく答えるシュリに対し、しかし黄金の騎士はますますイラついた様子で告げる。
「くだらぬ。たかが神に捧げられるために生まれてきた巫女のために我らの名誉に傷をつけるとは。貴様はこの我、聖十騎士団が一人“黄金灼熱”のグレイソンが焼き尽くしてやるわ」
そう言って騎士が剣を抜くと、その周囲に先程オレ達を襲った業火が生まれ、再びオレ達を飲み込むべく迫るが、それを一刀のもとに切り裂く。
「おっと、待ちな。おっさん。アンタの相手はオレがしてやるよ」
「なに?」
オレが立ちはだかると男は小馬鹿にした様子でオレを見下す。
「ふんっ、確か貴様はアリスの専属騎士だったか? 希に見ぬ実力者と聞くが、たかだか特級騎士にやられるとはアリスも無様なものよ。所詮あやつも我らが聖十騎士の面汚しよな」
「へぇ……」
男のアリスを見下した一言にオレは思わず目を細める。
アリスとは結局決別の道しかなかったが、それでも彼女の実力は目の前のこの男に侮辱されるようなものではない。少なくとも彼女は最後まで自らの使命、聖十騎士としての役割を全うしたのだから。
「だが、我は違うぞ! 無様に負けたアリスやそこの大罪人アリシアなどと一緒にするなよ。真なる聖十騎士の力がどんなものか見せてやろう!」
叫ぶと同時に男の周囲に無数の火柱が現れる。
それらは次の瞬間、炎を纏う無数の魔人となり、男の周囲に集う。
その数、十や百などではなく、数百――いや、それ以上の数となり、この広い空間を埋め尽くすほどの炎の魔人が次々と生まれる。
「ふははははは! 見たか! これこそ我が真名スキル! 『千夜一夜』! 我がスキルによって生み出したのは砂漠に住むと言われる伝説の魔人イフリート! その数はアリスが生み出す雷龍七匹とは比べ物にならんぞ! 我が生み出すイフリートの数は合計千体! どうだ! これほどの数の魔人など見たことがなかろう! 我こそは聖十騎士の中で『軍隊』の力を持つ騎士と謳われる者ぞ!」
「なるほど。確かにこれだけの魔人を生み出すなんて、さすがは真名スキルだな。けど、数を揃えるのはいいけどさ。おっさんアンタ自体はその強さに見合っているのか?」
「なに?」
「一つ言わせてもらうぜ。アンタが侮辱したアリスの方がアンタより、よっぽど強く感じるぜ」
オレのその挑発に男は逆鱗に触れたかのような怒りを見せた。
「小僧がぁ! 焼け死ぬがいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!」
男の咆哮と共にオレの周囲を取り囲んでいた千匹の魔人達が同時に炎の鉄槌を振り下ろす。だが――
「『花火一閃』ッ!!」
オレが放った光の剣閃は周囲の魔神全て切り裂き、花火と共に散らす。
そして、オレの一刀はその先にいた男の鎧を切り裂き、一撃で地面に沈める。
「ば、バカな……!? こ、この私が、こんな……一撃、で……!?」
まさしく光の速さで勝負が決まったことに信じられないという表情を兜の下より見せる男。
「生憎だったな。アンタがバカにしたアリアやアリスの方が、アンタなんかよりもよっぽど強かったぜ」
自らを『軍隊』としての強さでしか誇れなかった騎士グレイソンを倒し、オレは静かに剣を鞘に収める。
これで残る聖十騎士は――あと『四人』
現在のオレのレベルは『902』
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