シーン11:リメンバー・ミー

GM:眩しかった日差しも、嵐が晴れれば傾きかけていた。

 茜色の差す公園。あの時の夢よりは、幾分か色彩に満ちている。


彩:「……ヒサト、だいじょうぶ……!?」

 キミの元に駆け寄ってくる。

久人:「イテテ……ああ、大丈夫。ちゃんと勝てたよ。俺だけじゃない、彩のおかげだ」


GM:向こうを見れば、竜の躯体は跡形もなく消えている。

 まるで、それこそおとぎ話であったかのように。


彩:「っ……あの! えっと……わたし、わたしね。おもいだしたの、だいじなこと、ぜんぶ……」

 しどろもどろになりながら、所々つっかえながら、しかしキミの目を見て言う。


GM:そうだ。キミたちにはまだ、大切な事が残っている。


彩:「きっと、ヒサトもいっしょなんじゃないかって……だから、その、きかせてほしいの」



「――わたしのこと、おもいだしてくれた?」



 目の前の少女、キミたちの思い出マンガの中の少女。その名前は――。


久人:「――ああ。確かに思い出したよ。どうして忘れていたんだろう。

 俺に漫画を教えてくれた人。病弱だった俺に、勇気を、夢をくれた人」



「――思い出したよ、天ちゃん。いや――ソラ」



ソラ:「……っ、うん。おもいだした……おもいだしたよ。わたしのことも、キミのことも」


 目に一杯の涙を溜め、茜色を反射して輝く笑顔を濡らす。

 嬉しくて泣くこともあるんだ、などと。いつかの日に笑いあった幻影は、色を取り戻したように久人の脳裏と重なる。

 そうして、今までで一番明瞭めいりょうに。まるで、何度も何度も練習して、それでも出せなかった思いであるかのように。



ソラ:「――ありがとう、“久人”」



 その言葉は、茜日よりも暖かく。2人の間に、溶けていった。


ソラ:「やっと、いえたよ」

久人:「――ああ。ああ……俺の方こそ。

 ありがとう。大切な事を思い出させてくれて。本当に――ありがとう、ソラ」


GM:――セピア色に、色彩が戻り。ソラ色のかこと虹色のいまは、願いあうように笑いあう。

 長く、小さなおとぎ話は、こうしてその色を取り戻した。


久人:「……帰ろうか。体はボロボロだけど……今、凄く漫画を描きたい気分なんだ」

 そう言って、幼い子供のような笑顔を見せる。


 公園を出て、帰路に着く。手を繋いだ2人の影が、夕焼け空の下で長く長く、伸びていた。



 子供の夢は、時として大望をも、大人の想像力をも超えうる。

 それを成し得る子供が、未だその力を持たなかったとしても。

 ――きっとそれは、将来への可能性を広げるモノ。


 大人が子供の夢を思い出し、かつての敵を乗り越えた時。

 止まっていたはずの物語は、きっとまた動き出す。


 これは、キミとボクの物語。


ダブルクロス The 3rd Edition

『リメンバー・ミー』


 漫画を超え、記憶を超え、物語は続く。

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