シーン10:ただ、ありがとうと言いたくて(マスターシーン)

 ――夢を見ていた。

 たった数年前なのに、何でか昔の事のように思える。


 病気のことで引っ越して、会えなくなってしまったあの人のことを。

 私のマンガを、面白いと喜んでくれた。

 私がいっぱい描けるように、色んなマンガについて調べて、教えてくれた。


 ……結局、それは言えたんだっけ。

 憶えてない。憶えてないけど、今でもそれは変わらない。


 ありがとう、久人。

 ただ、それだけ言いたかったんだ。


 ――そうして、この色褪せた世界は……。

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