シーン2:見覚えのある姿

GM:ここからがPCの登場するオープニングとなります。登場ダイスをどうぞ!


久人:はーい。シーンイン!(ころころ) 3点上昇、35%!


GM:夢から覚める。

 カーテンの隙間から入り込んでくる朝の日差しが、寝惚け眼を突いてくるようで痛い。

 それらを遮るように目を擦り、未だ朦朧もうろうとする脳を起こそうと体を起こした。


 そうして布団をまくり――捲、ろうとしたところで、何かが布団に乗っている事に気づく。


 見えているのは、乳白色の細く小さな腕。

 視線を辿らせれば、ふんわりとしたドレスに身を包んだ少女が、もたれるようにして熟睡している。


 間違いなく、夢の中で見た少女だ。


 ……遅れて、此れがとんでもない状況だと気づく。

 キミの脳は一瞬で覚醒した。


久人:「…………うぇっ!??!?」

 急に覚醒した脳で何かを考えるよりも早く、久人の口からは素っ頓狂な声が漏れる。

「(どういう状況だこれ!?)」


 そんな久人の声が耳に届いたのだろう。ドレス姿の少女は体を起こし、目をこする。


少女:「…………んぅ……?」

 ボーッとした顔で周囲を緩慢かんまんに見渡し、キミと目が合った。

「…………あなた、は……?」

久人:「え、えーと。俺は久人。絵馬久人だ。キミは……?」

 驚愕に染まった表情のまま、絞り出すように少女への問いを口にする。

少女:「わたし、わたしは…………」


 少女は指を口元に当て、考える仕草を取り……。

 ……しばらくして、こてんと頭を倒す。


少女:「わからない……なまえ、あるはずだけど……」

久人:「そ、そっか……うん。取り敢えず、起き上がってもいいかな」

 そう言って、少女が体を預ける布団を指し示す。

少女:「ふぇっ? あ、ごめんなさい、えっと……。

 ……ヒサ、ト。ヒサト、ヒサト……うん、おぼえた。ここ、ヒサトのおうち?」

 その場からどき、ベッドの横に降りつつ。

久人:「ん、ありがとう。そうだね、俺の暮らしてる家だ。

 両親もいるけど、仕事先の宿舎に泊まることも多いから、半分一人暮らしみたいなものだけどね。

 それにしても……気を悪くさせたらごめん。キミは一体……? 自分の事、どれくらいわかるかな」


 久人の問いかけに、少女は悩むような表情を浮かべ、再び頭をこてんと倒してみせた。


少女:「……わからない。どこからきたのか、おもいだせなくて……。

 おぼえてない、けど……ヒサト、は、みたことあるかもしれなくて、えっと」

 身振り手振りで、自身の言葉を伝えようとするも――。

「…………ごめん、やっぱりわからない」

 しょんぼりと肩を落とすのだった。

久人:「……実は、俺もキミに見覚えがある。とは言っても……その、夢の中で、なんだけど。

 まあ、気を取り直していこう。こういう展開は、漫画でも読んだことある。まずは、そうだな……。

 ずっと『キミ』って言うのも味気ないし、何か呼び名を決めないか?」

少女:「よび、かた…………」


 久人の提案に、少女は再び口元に指を当て、うーん、と先程の2倍近い時間を呻った後。


少女:「…………おもいつかない。ヒサト、なにかいいのある……?」

久人:「そうか。そうだな……ふむ」

 こちらも少し頭をひねった後で。

「――あや、とかどうかな。

 キミを見た気がする夢は、あんまりカラフルじゃなかったからね。それなら、せめて名前は華やかに。どう?」

少女:「あや、アヤ…………うん、きれいだと、おもう」

 ピンとは来ていない様子だが、声音が少し明るいのを見ると、どうやら気に入ったようだ。

「えっと……その、ヒサト。

 ……すごい、いきなりかもしれない、けど……わたしの、きおくをさがすの、てつだってほしい、かも……だめ、かな……」


 次第に萎れていく声で、久人を頼る少女――彩。対する久人の返事は、実にあっけらかんとしたものだった。


久人:「ああ、いいよ。俺、こういう少し変わった状況ってのにもある程度は慣れてるからさ。

 それに、理由もなくいきなり俺の部屋に来たとも思えないし。ならきっと、それは俺にも関係があることなんだ。

 だから、一緒に記憶を探してみよう」

 そう言って、右手を差し出し握手を求める。

少女:「……!」

 その答えに、表情が一気に明るくなる。どうやら、外見相応に感情変化がわかりやすいタイプのようだ。

「うん……ありがとう!」

 差し出された手を取り、花が咲くような笑顔を浮かべる。


GM:――兎にも角にも、まずは彼女に関する情報集めからだろうか。

 朝から変な事件だが、こういうモノにもいい加減に慣れてきたのかもしれない……と、何処か他人事のような思考が頭を過ぎるだろう。

 ちなみに彩の服装ですが、それこそ漫画やおとぎ話の『お姫様』といったようなドレスとなっております。

 どう考えても現代人の服装ではない、という事がわかるでしょう。これ着て外に出るのはヤバいな……ということも。


久人:なるほど……では、こういう感じでどうでしょう。

「さて、と。記憶を探すにも、まずは動きやすい格好になった方が良さそうだ。

 ……ちょっと失礼」


 片目を瞑った久人は、腕を伸ばして鉛筆を立て、彩のおおよその体格を目測で把握する。そして――。


久人:「デザインと材質……こんなもんかな?」

 手近に置いてあった漫画原稿用の紙に、女児服のイラストを描いていく。

 ここで《イージーフェイカー:万能器具》を宣言。イラストを物質変換して服を作りたいのですが、どうでしょうGM。


GM:はい、可能です。デザイン・材質などについても、久人くんの思うように作成できるとしましょう。

 全イラストレーターが欲しがる能力だ……。


久人:ありがとうございます。では彩に似合いそうな、薄い花柄を基調とした服を実体化させます。

「はい、これ。取り敢えず外に出るなら、これに着替えてもらった方が助かる。あ、それと……今やった手品は、人には秘密だよ?」

 そういって彩に服を渡すと、いたずらっぽく笑って部屋の外に退散します。

少女→彩:受け取った服に目をキラキラさせつつ、コクコクと頷き、また服へと視線を戻す。


 夢で見た、謎の少女との邂逅かいこう

 「事実は小説より奇なり」と言うが、まさにその通りだ。そんな思考を働かせながら、久人は彩の着替えを待つのだった。

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