第41話 二期生受付

「はい、次の人、こちらで受け付けます。」

「はい、きちんと並ぶっス。順番ス。順番。」

僕らは千代町娘の二期生の応募受付をしていた。

この時代、ネット応募もなければ、履歴書を郵送で送ってくることもない。

見合いでいう釣り書きみたいのを、皆が持ってくる。

募集を決めた際に書式を決めなかったのは、僕の完全なミスだった。

CDもテープもないから、歌を吹き込んでくることもなければ、

写真もないので、そんなに問題ない、と思っていたのだが、

皆、思い思いの書式で書いてくると、まとめようがない。

「これは、町奉行所の山田様の後推薦状でございます。」などと

うやうやしく推薦文を渡してくる娘もいれば、自己推薦文を延々と書いてくる娘もいる。

挙句はそっと「こちらお収めください。」と明らかに現金を手渡そうとし、

あきらかにそっと収めようとする八兵衛さんがいたので、すぐに取り上げ、きつく叱った。

いずれにせよ、すごい人数だ。

僕らは帳面に一人ずつ間違えないように、名前を記入し、番号を照合して、木に数字をふった番号札を渡した。

「この札が今度二期生選抜試験をやる時に必要になるから、無くさないで持ってきてね」

要は木札が受験票みたいなものだ。

名前を記入し、木札を渡していると、木札を入れた箱の底が段々と見えてきた。

「あれ?足りるスか?番号札」

「え、ちょっと並んでいる人数えてもらえます?」

「ひぃ、ふう、みい…何とか足りるかな?」

そんなやり取りをしていると、

「お願いします。」と書類を出した女性。

すこし大人っぽい雰囲気だ。

どこかで見たような。

えーっと、どこだっけ?

ふと見ると、八兵衛さんも松尾さんも、どこかで見た、という顔つきでいる。

「あ、越後屋の!」

「あー元祖…」

「あら、分かっちゃいました。」

そうだ、越後屋の元祖千代町娘の一人じゃないか。

「私だけじゃないですよ、何人か、既に受付もして貰ってますよ」

え、気づかなかったなぁ。

でも大丈夫なのかな。

「越後屋さんには、言って…ないですよね?」

「ええ。言ったら止められるに決まってますから。」

そりゃ、そうか。

「それに、今日は今から元祖千代町娘の公演ですから。」

そうか、今から公演。じゃ、そんな暇ないね。

ん?今から?

「え、間に合うんですか?公演は。」

「一応、所用で遅刻するって、言ってきました。」

所用ね。間違ってない。

「じゃ、早く行った方がいいですよ。」

「そう?このまま千代町娘に入った方が早いんだけど。」

「それは、そういう訳には行きません。他にも沢山応募者がいますから。」

「そうね。じゃ、よろしくお願いします。」

そういうと、元祖千代町娘の女性はそそくさと去っていった。

「大丈夫かね?越後屋さん。今日の公演は。」

「そうスね。越後屋の主人、きっと怒ってるっス。自分のところの愛獲留が千代町娘の受験票を取りに行ってるんスから。ヒヒヒ」

二期生の十分に揃いそうだ。

あとはあの人だなぁ。

僕は沢山の応募書類を整理しながら、そう考えていた。

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