第四百八十二話 宇宙に散る華
ルクルァシアとどうやり合うか、過去に見たロボットアニメの記録や、これまでの戦いを参考にしていろいろと考えたが、やっぱりここは俺達らしく行く事にした。俺達の全力を、必殺技とも呼ばれる大技を開幕からぶつけてやろう。
それが俺が出した解答。
所見の敵に開幕からバンク付きの大技を使う、これはニチアサ的にもロボアニメ的にも結構な確率で敗北フラグとなる。
普段流れているはずの勝利確定BGM――テーマソング等――が鳴らず、おかしいなと思った所で敵キャラの『効かぬわ!』カットイン。そして反撃を喰らい、這々の体で撤退する主人公たち……。
多くの場合、これは成長フラグとも言えるため、悪い展開ではないのだが、最終決戦でそれをやってしまうのはどうにも不味いと思う。
だから通常であれば、俺はその選択を取らないだろう。お話の世界ではなく、リアル世界での戦いであるとは言っても、神様的なアレが介入している時点でこの世界で俺が送っている日々は半分創作物の様なものなのだ。フラグというものが現実化して俺達に牙をむく可能性は大いにあるからな。
しかし、今回はそれを気にする必要はない。
何故ならば……この技は本世界初公開の技だ。よって件のフラグは成立しない。そう、これもまたアニメのお約束として、新規加入キャラの初回戦闘シーンや、修行の末に編み出した新技の初公開シーンというのは、大体の場合成功フラグとなるからだ。
失敗フラグに成功フラグをぶつけるという、ある意味賭けのような真似をしてしまうことになるが、きっと上手く事が進むと信じている。
ただまあ、輝力を多大に消耗してしまうという重要な欠点があるのだが……それは後からどうにでもできる。だから今はまず、礼儀としてこちらからも派手な一撃を食らわして奴の歓迎に専念するのである!
「ミシェル、ウェポンホルダー、ロック全解除! 及び、サブモードに変更」
「了解! ウェポンホルダーリリース! MODE:COMBAT!」
俺の体に沿う様に浮遊し、追従するウェポンホルダーのロックが解除される。今回開放したのは近接用武器、刀やソード達である。当然、2本腕のままではそれを扱いきれぬので、ホルダーの一部をサブアームとして変形させ、補ってもらうのだ。
そして同様に――
「マシュー、サブアームを近接モードに変更!」
「了解だ! ケルベロス、MODE:COMBAT!」
両肩に収められていたケルベロスの頭部パーツが変形し、サブアームとなる。武器ホルダーから変形したヤマタノオロチの腕は全部で4本、ケルベロスのを合わせれば7本、そして俺の腕を足して9本だ。
「シグレ、サブウィングを補助モードに変更!」
「了解でござる! 精密機動モード始動!」
近接格闘で挑むため、サブ飛行ユニットとして機能しているフェニックスの飛行ユニットを変形させて姿勢制御及び機動制御の安定性を大きく向上させる。
現在我々が居るのは重力の影響を受けない大気圏外である。地上と同じ形状では本来の力を出すことは不可能だが、それを解決するのがフェニックスの飛行ユニットを使用したサブ飛行ユニットだ。
ブースターやスラスターを備えたそれは、大気圏外に於いても急制動に対応し、AI達による補助のおかげでパイロットの操縦負担を最低限にまで抑えてくれるんだ。
「フィオラ、ラムレット! ガントレットを援護モードに変更!」
「「了解! サブウェポン展開、制御始動!!」」
そして、変形し、ガントレットとなっていたキリンは再度変形し、腰の両脇に移動。そのままサブアームに変形し、これで腕は11本だ。
「レニー!!」
「シャインカイザーアルティメットフォーム! MODE:ASURA!!」
それぞれの腕に剣や刀を装備したその姿は、ルクルァシアに負けぬ異形の姿に映ることだろう。子供が見れば嫌な顔をするかも知れない、それほどまでに厳つい姿になっている。
そんな浪漫以外なにもないフォームを、大友にしか売れそうにないそんなフォームを生み出すほど制作会社は馬鹿じゃない。故にこのフォームは原作には、アニメや劇場版のカイザーにすら存在しない。この世界の、俺達のオリジナルフォームだ!
「ではゆくぞ!」
「「「「はい!」」」」
ブースターを再点火し、ルクルァシアに迫る。相手も黙って間合いに入れるほど甘くはなく、両腕――触手から魔導レーザーを放ち、どうにか撃ち落とそうと頑張っている。
さっきは敢えて受けてやったが、今度は避けさせてもらうぞ!
「シグレ!」
モニタを真剣な眼差しで見つめたままのシグレは小さく頷くと、機体が僅かに傾き、その脇をレーザーがかすめるように抜けていく。地上とは違い、大きく動けばそれだけ姿勢制御の手間がかかり、その分ロスが生じてしまう。
最小限の動きで躱す選択をしたのは流石だな。ブレイブシャインに於いて、機体の姿勢制御で彼女の右に出るものは居ないだろう。
二発、三発とレーザーを躱しルクルァシアを間合いに入れる。
「カイザー、ルクルァシア両腕部魔力反応低下しました。間もなくリチャージタイムと推測されます。今ならいけるでしょう」
「よし、ならば早速大技をぶちかまさせていただこう! ゆくぞ、みんな!」
「「「「「了解!」」」」
多数の武器を構えた
「「「「輝神剣! 百華繚乱!!!」」」」
11本の腕から剣が刀がそれぞれに放たれる。ルクルァシアの巨体は切り刻まれ、破片が桜吹雪のごとく宙に舞い散っていく。
『GhaaAaaaaAAAAアアアアアア……オノレオノレオノレ……虫如キGahhhhaaaa!!』
相手とのサイズ差から上手くダメージを入れられるかは賭けだった。手数が多い攻撃とはいえ、表面を削って終わりになるかもしれないなと、若干不安もあったのだが、それなりにダメージは通っているようだな。
「ようし、効いているようだな! スミレ、フィアールカ! ルクルァシアのモニターを継続してくれ! 変化があれば直ぐに報告してくれ! 皆! 攻撃を継続するぞ! ここでできるだけ削ってやろう!」
「これで落としきれるとは思いませんけど、だからといって遠慮はしませんよ!」
「うひょー! あたいも今度リーンブレード習おっかなー!」
「ふふ、わたくしでよければ何時でもどうぞ」
「拙者、ここまでカタナを動かしたのは久しぶりでござるよ!」
「お姉には負けないんだからねー!」
「どっりゃああああ! みんな、口だけじゃ無くて手も動かしとくれよお!」
全く器用な娘達だ。ワイワイと何かしら喋りながらも、適切に武器を振るっている。もういくつ剣を叩き込んだのかはわからないが、辺りを舞う破片の量が凄まじい事になっている。
炉の輝力残量は……ギリギリと言った所か。パイロット達にはまだ余裕が有りそうだが、ここで彼女達の輝力を使い切るわけには行かないからな。
計算によれば後10分ちょっとか……どうかそれまで……頑張ってくれよな!
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