第四百七十八話 終焉の地へ

 無事何事もなくクールタイムお昼寝から目覚めたブレイブシャインパイロット一同は、寝起きだと言うのにモリモリと昼食を摂り、ルクルァシア城突撃に備えていた。


 彼女達の名誉のために言っておくと、輝力の回復には大量のカロリーを消費してしまうため、その分食欲が増してしまうのである。決して意味のない大食いではないので、沢山食べてしまうのは仕方がないことであるし、多少食べすぎてしまったとしても、重量が増してしまうような事にはならないのだ……多分。


「まさかの幹部登場で予定が変わってしまったが、今度こそだ。今度こそ奴の居城に突入するぞ」


「そんな事言うとさ、また何かでてくるんじゃないのか?」


「要らんフラグを立てるな、マシュー。大丈夫だ。最終決戦前のボスラッシュはお約束の展開だ。メタ的な事を言えば、合体して戦うこととなる最終決戦ではもう各機単体での活躍は見られなくなるわけだ。

 そこで、最終決戦前に各機の見せ場を作るために復活敵幹部等を使って戦闘シーンを入れるというわけだな」


「ルクルァシアはアニメの流れをある程度律儀に守っている、っていう話だったよね、ルゥ」


「ああ、そうだなフィオラ。これまでの流れを見れば、その可能性は非常に高い。だからそれを上手く利用してやれば被害は最低限に抑えられるはずだ」


 ミーティング……というか、雑談に近いのだが、それを兼ねた昼食も終わり、いよいよ出発の時である。パイロット達はすっかり体調を取り戻し、軽く準備運動をした後、各自機体に乗り込んでいく。


 今度こそ最終決戦となる事だろう。この戦いが終わったらーなんて話は誰もすることはない。フラグ的なアレを考慮しているわけではなく、彼女達にとってこの戦いはただの通過点でしか無いのだから。


 戦いが終われば、また別方面でそれぞれが忙しくなるのだ。暇になったらのお話はまだまだできそうにないな。


「それでは皆、用意は良いな。これより合体し敵城に向かう。奴との最終決戦だ! 気を引き締めていくぞ!」


「「「「了解!」」」」


「シャインカイザー! アルティメットモード申請ッ!」


『アルティメットモード許可申請ポーラに送信します』


『こちらフィアールカなの! アルティメットモード承認なの! 無いものはないの! ベースの許可は全部省略! アルティメットモード全て良しなの!』


『ならばよし! 変形フォーメーション! ……各機よりGOサイン! スミレ、各ジョイントのセーフティ解除!』


『了解。各部セーフティ解除。カイザーシステムVer2.0 アルティメットモードへの移行準備完了』


『では行くぞ皆!』


『『『「はい!」』』』


『シャインカイザーアルティメット! GO! フォームチェンジ!』


 久々の合体バンク……じゃあないけれど、この回りくどい過程は中々に男の子だと俺は思う。4機合体を終え、シャインカイザーアルティメットフォームとなった……が、合体はまだ終わらない。


「よし、次はお前達だ! ゆくぞ、キリン!」

『ああ! もちろんだとも!』


「KIRIN CODE:ANGRY 申請!」


『CODE:ANGRY承諾。フフ……私の内なる怒り……見せてあげよう……いくよフィオラ君、ラムレット君……決めるよ』


『『『キリン! MODE:Wrath !  発動!』』』


 何故かキリン自らも変形コールに加わり、3人の声が重なった。それと共にキリンの身体が左右に割れ、アルティメットフォームの追加パーツ、巨大な拳と化して機体と合体を果たす。


「シャインカイザーアルティメットフォームエクステンドッ!」


 な、名前が長い! 長いが、合体が入組むに従って機体名もごちゃごちゃしていくのもまた様式美である。


 さあ、出発の時だ。白と黒、2対の翼を背に広げ、ゆっくりと浮上する。高度を上げると後方に避難所が見えた。幹部達のせいでそこそこの数の眷属機を向かわせてしまったが、あの様子であればどうやらきちんと迎撃できたようだな。


「見て! ルゥ! 避難所で何機かこっちを見て手を振ってるよ」


「ああ、そうだな。ええと……あの機体はリリィ達、白騎士団ステラだな。よくまあ俺達の姿を見つけられたもんだ」


「何を言ってるんですか、カイザー。こんな大きな機体が浮かんでいたら嫌でも見えますよ」


「それもそうか」


「「「「あははは」」」」


 なんだかとっても間抜けなことを言ってしまったが、皆の緊張がほぐれたと思えば、まあ良かろうて。


「よし、俺達も手を振り返していくか」

「そうですね! 改めて行ってきますをしましょうよ、カイザーさん」

「今朝しっかりと決めて来たっつーのになあ」

「相手が振って下さってるんですもの、仕方ないですわよ、マシュー」

「なんだか先程より数がふえてますよ」

「ほんとだ! ねえ、ルゥ! 連合軍の皆も出てきたよ!」

「うひゃあ、頑張ろうって気になるねこりゃあ!」

「ふふ、じゃあ、カイザー手を振り返りましょう。ここからが本番ですし、改めて出発ということで」


「ああ! 行ってくるぞ! 皆! 後は俺達にまかせとけー!」


「「「「行ってきまーす!!!」」」」


 眼下遠くに見える仲間達に手を振った。パイロット達もコクピット内でブンブンと手を振り、笑い声を上げている。


 いやはやほんと、これから戦いに行くような空気じゃあ無いが、まあ、これもいつものことだな。


 待っててくれ、皆。勝利と平和という何よりの土産を携えて戻ってくるからな!


 

新機歴121年12月22日13時32分


シャインカイザー、最終決戦の地へ。

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