第三百八十一話 キリン大いに大いに語る

 キリンという、これ以上無い程にシャインカイザーアルティメットフォームに詳しい『喋る設定資料』に声で追われるように説明を受けている。


 実際の所、劇場版で追加された情報はキリンから聞く以外に知りようが無いため、ありがたくはあるのだけれども、キリンの話しはなんといっても非常にくどいからね! 適当なところで区切らせるために物理的な移動という手を使うことになるわけです。


『さて、ルゥ君。聞いているのかね、ルゥ君』


「ああ、きいてるよ。今度はオルトロ……いや、ケルベロスについてだったね」

「そうだぞ! アタイもこうなった姿をみるのを楽しみにしてたんだ! 一緒にちゃんと聞いておくれよ」


 マシューが私を肩に座らせ、頼むような口調で言う。そんな事言わなくてもちゃんと聞くってば。ただちょっとキリンがくどいから……体が勝手に逃げようとしちゃうだけだって……そうぎゅっと掴まんでも……。


『ふふ、そうはしゃがないでくれたまえよ、ルゥくん。では心して聞きたまえ! ケルベロスもヤマタノオロチ同様にロボット形態時にはその頭部をフォトンランチャーとして使用していたのは基礎知識として押さえているね?』


「ああ。大丈夫。それはちゃんと聞きました」


『うむ、結構。ヤマタノオロチはその頭部パーツのうち6本を武器ラックとして使用しているわけだが、残り2つは左右に分かれて腰から前方を向いたキャノンになっているわけだね。無論、これは可動式なので格闘時に邪魔になることは無い。それで、肝心のケルベロスについてだが……両肩を見たまえ』


 言われるままに両肩を見ると、腰に着いていた『ヤマタノオロチ』が元になったランチャーとよく似た物が右肩・左肩にそれぞれ装着されている。


『よく見て貰えると気付いてくれると思うのだが、左右で色が違うだろう? 一応右が氷、左が炎の属性を持っているのだけれども、まあ、基本的にはどちらからも同じ光弾を撃って攻撃をする事になる。ああ、ああ! 言わなくてもわかる! わかるとも! ケルベロスならもう一つ顔があるだろう、そのもう一つの顔は何処に行ったのだ? そんな顔をしているね?』


 いえ、別に! 合体変形時に何処かに消えてしまうパーツなどよくある事だし、どうせ折りたたまれて内側にあったり、何処かのパーツに組込まれて一体化しているのだろうくらいにしか思って居ないのだが……どうもキリンはそれについても語りたいようだな。


「ああ、そう言われて見ればもう一つの顔はどこにいったのだろー?」


『そうだろうそうだろう。ルゥ君! カイザーの顔をよく見たまえ! ああ、勿論ルゥ君じゃなくてあそこに立っているシャインカイザーの顔だよ。ベースは元のままだが、よく見れば体格に合わせて大きく勇ましい顔つきになっているだろう? ケルベロスの顔パーツはそこにも使われているんだよ! ほら見たまえ! あのあたり! おもかげがあるだろう! いやあ、素晴らしいよね、この無駄を作らない設計思想!』


「……ああ、はじまったぞマシュー」

「そうか、これがあるもんなキリンは……なるほどカイザーが逃げ腰になるわけだよ」


「あ! シグレ! 良いところに来たシグレ! おおい! こっちだ! あたいのとこに来てくれ!」

「来たというかマシュー達がこちらに近づいてきたのでは……? いえ、なんでしょう?」

「そ、そうだシグレ! フェニックスについてキリンから話しを聞きたがってただろう?ほらほら、マシューと私と一緒に聞こう、な!?」


「ああ、そういうことですか……キリン殿のお話は長いですからな……」


『む! 気付けばそっちに移動してたんだね、うんうん! 自発的に次のネタを見に行くとは感心するよルゥ君! マシュー君! おや、気付けばシグレ君もいるじゃあないか! そう言えばミシェル君とレニー君は一体何処に行ったんだい? まあ、よかろう。居る者だけ聞いてくれたまえ! カイザーがアルティメットフォーム……つまりはペガサスフォームとなり、翼を手に入れてしまった。これによってフェニックスとペガサスで翼と翼がかぶってしまうことになったわけだ』


 まあ、そうなるよね。元々鳥タイプの機体が居るところにメイン機体にペガサスを持って来ちゃった物だから翼がかぶってしまったわけだ。それをどのように処理したかについてはキリンの話しを聞くまでも無く、見ればもう明らかなのだが、ここで説明をさせておかないと何時までもうるさそうだからね。


 それに、フェニックスの話しだけ聞かないってのもそれはそれで勿体ない気がするからね。


『見たまえよ。ヤタガラス時代に黒かった翼もフェニックスとなった今は紅く染まっているね。それに対してもう1対の翼……ああ、これこそがカイザーの……カイザーが新たに手に入れた翼なのだが、どうだい? ややズレるようにしてフェニックスの翼の下から見えるこの白い翼……紅の下から覗く白……より一層鳥の翼のようになったとは思わないかい? まあ、見た目的には飛行機のそれなんだけれどもね』


 クドクドと続くキリンの説明によれば、この2対の翼は状況に応じて可変するらしい。ああ、素晴らしいね。そう言うギミックは非常に素晴らしい。どのように稼働するかはこの後の実地訓練において見られるだろうから楽しみにしておこう。


 ……さてだ。


 これで我々の機体に関する説明は一通りざっくりと聞き終わった。わかっているね、キリン。散々もったいぶった君の秘密、今こそちゃんと説明して貰うからね。



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