第三百八十話 合体
とりあえず合体してみろとキリンは言う。キリンの隠し玉を見せるのはそれからだ、どうやらそういうことらしい……のだが、全く無駄にモヤモヤとさせてくれて腹立たしいやつだよ。
とは言え、後継機での合体は非常に楽しみにしていたわけで。ああ、流石にこればかりはしっかりと練習させてもらうぞ! ルクルァシアを倒せる唯一の力になるのだから。
「みんなならわかってくれるな。こういうのは最初が肝心だ」
「勿論ですよ! 合体シーケンス……やるんですよね!」
流石だなレニー。俺が言いたいことをきちんと理解している。無論……他のパイロット達からも『当然である』といった意味合いの返事が届き、非常に喜ばしく思う。
肝心のセリフだが、こればっかりは全く情報がない! ガワは劇場版になった我々だが、中身は地上波版のままである。どうしたものかと思っていると……データが送られてきたぞ。
『こんな事もあろうかと合体シーケンスのセリフデータを用意しておいたよ。あちらのカイザーが言っていたセリフそのものさ。本来ならそんなセリフ言う必要はないんだけど……君もあのカイザーと同じ人種……いや、機体なんだろうからね。拘りたかろうと用意しておいたが……正解だったようで何よりだよ』
図星である。悔しいがそのとおりだ……腹立たしいがありがたいやつだよ本当に……。別に俺が考えたオリジナルのセリフを言ってしまってもそれはそれで構わないのだが、やっぱりちゃんとしたセリフがあるというならそこはそれ、こだわりたいからな。頭にくるほどキリンに理解されているな……。
『なにやってんだ! カイザー! 早くしろよ! あたいも早く新しい合体をして見たいぞ!』
『そうですわ! 私だって……楽しみにしてましたのよ?』
『今回はカイザー殿と同じ土俵ですからね。ふふ、共に新たな姿、楽しみましょう!』
すまんすまん。皆も楽しみにしてたんだな。よし、ではいただいたデータを……いや、別世界戦の俺の想い、ここに出し切ってやろうじゃないか!
『……シャインカイザーアルティメットモード申請……』
『アルティメットモード許可申請ポーラに送信します……』
『こちらフィアールカ! アルティメットモード承認なの! 緊急時だからベースの許可はぜーんぶ省略! フィアールカの権限で代理承認なの! アルティメットモード全ておっけーなのっ!』
『うむ! ならばよし! 変形フォーメーション! 各機よりGOサイン! スミレ、各ジョイントのセーフティ解除!』
『セーフティ解除開始……カイザーシステムVer2.0 アルティメットモードへの移行準備全て完了』
『では行くぞ皆!』
『『『「はい!」』』』
『シャインカイザー MODE:Ultimate! GO! フォームチェンジ!』
長い! 長いが、間にフィアールカとの通信を挟むのは非常に良い! 基地という存在が今まで無かったから出来なかったが、ポーラがこちらに来たのであればそれが可能だからな! 相手がこぐまだと思えば多少和んでしまうが、字面がかっこよければそれで良いのだ!
そして俺のかけ声が終わると待ってましたとばかりに各機が変形を始め、俺の体に装着されていく。この感覚は通常のシャインカイザーの時と同様だが、自分を含めて各機体がサイズアップしているため普段よりなんだか力強い音がしているような気すらしてくる。
そして、間もなく変形が終わり……合体し、ひとつにまとまったコクピットにパイロット達が4人勢揃いした。
「わ! 広い! 凄く広いですよ! これ!」
「広いってレベルじゃ無いだろ……? 4人には勿体ないぞこれ」
「これだけ広ければ皆で寝られますわよ……」
「私ここに住んでも良いくらいでござるよ……」
うむ、広い。かなり広い……というか、明らかにスペースが余っているのだが、それは取りあえず置いておくことにしよう。今はまず生まれ変わったこの体をじっくりと眺めようじゃ無いか。
中から外部カメラを飛ばして確認する事も出来るらしいのだが、まずは皆で一度外に出て肉眼で見ようという事になった。
勿論、私も妖精体となって一緒に降りてじっくり外から見物だ。いやあ、流石にこう言うのは一度は肉眼で見ないとね。
外に出てみると明らかに大きくなっている機体にため息が出る。
「はあ……凄いな……大きいな……大きくて……強そうだ……この、この大げさな装備達……! ああ、たまらない……たまらないよ!」
カイザーの機体サイズが大体9m程度。シャインカイザーが12m前後で、アルティメットフォームはざっくり計った感じだとなんと16mもある。正直めちゃくちゃでっかい! 大体4階建てくらい? いやあ、でかいって! シャインカイザーが子供に見えちゃうサイズだよ。
「ウロボ……いえ、ヤマタノオロチの顔です……わよね……あのパーツは……」
『うむ、ミシェル君。良いところに気付いたね。ああ、ルゥ君も見たまえよ! どうだね、あの機体を取り囲むように浮遊しているパーツ群を! 不思議だよねえ! 私もどうやってアレが機体に追従してついてくるのかまったくわからないよ! だが、あれは中々便利な物だよあれはだね……――』
キリンの話しが長くなりそうだったのでミシェルに任せて私は避難。ごめんよミシェル。しかしこの体は逃げやすくて助かるな……。
キリンが嬉しそうに語っているとおり、ヤマタノオロチの首部分が変化したらしいパーツが武器ラックとしてシャインカイザーの周りに浮いている。武器は手元に召喚出来る様にはなっているけれど、ああやってむき出しのまま浮いているのにはとても大事な理由があるのだろうと私は理解しているよ!
ああ、そうさ!
武器ラックもその手の思想、かっこいいから、映えるからという理由だけで実装されたんだと思う。ラックから生えている長銃2丁、ソード2本、槍2本。残りのパーツはラックでは無く、フォトンランチャーの砲塔になっているようだね。ああ、ヤマタノオロチのパーツをうまくまとめたもんだなあ!
『おっとルゥ君! 話しはまだ終わってないよ!』
「カイザーさん酷いですわよ! 私だけ置いていくなんて!」
「ははは、ごめんごめん。ラックがかっこよかったので近くでじっくり見たかったんだよ……」
「おーい! カイザー! 肩の所のパーツ見てみろよ! これはあたい達のパーツだぞ!」
マシューが指さす部分、それはケルベロス達が変形したパーツのようだった。
『おっとマシュー君。説明は私に任せてくれたまえ!』
……今度は……逃げられそうがない。しょうが無い、腰を据えてキリンの話を聞こうかね。
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