第三百七十九話 眼福、そして。
『眼福である』それに尽きる……。
ケルベロス達が順番にロボ形態にと変形をして見せてくれたのだが、いやあ良かった、素晴らしかった! 何が素晴らしいって、まずはケルベロス! 幻獣モードで増えていた3つ目の頭部をそのままサブアームとして武装にしてしまっている乱暴さがとてもいい!
そしてまた、その頭部にフォトンランチャーが仕込まれているというのがたまらないよな。両手でがっしり敵を押さえつけた上で、背中からにゅっと現れた砲台……考えるだけで絶望的だぜ!
フォトンランチャーといえばヤマタノオロチもなかなかにエグいよなあ。なんたって、背中にうぞうぞと砲台が生えているんだぞ? しかも自在に動かせるときたもんだ。バラけさせて牽制してもよし、収束して威力を上げてよし、真下に放って緊急回避という荒業も出来なくはないだろう。いいよね……大量の砲台……いい……最高だよ。
そしてそして! 俺と同じく、顔の数を増やさない方向での後継機化を果たしたフェニックスだが……ガア助を見れば分かる通り、ヤタガラスはメインモードがロボ形態では無く、幻獣形態であるというのが面白いところなのだが、それは勿論フェニックスでも継承されていて、ロボ形態より幻獣形態のほうがぶっちゃけてしまえば強いらしい。
しかし、しかしだ。ヤタガラスではどうしようも無く使いにくかったロボ形態に新たな武器、フェニックスウィングなる羽根型の射出兵器が実装されたことにより、それなりに援護攻撃が可能となったらしいのだ。
メラメラと燃えるやたら派手な翼に、同じくド派手な射出兵器……もうこいつが主人公機でいいんじゃないかな……!
で、俺をのぞく3機体の共通点だが、皆揃って仲良く遠距離武器が追加されているのだ。しかも装備品という扱いでは無く、機体の一部としてだ。これを視聴者視点でいやらしく推理して見るとだな……。
おそらくだが、劇場版は制作上の都合で遠距離攻撃を増やしたのでは無かろうか。弾幕を射出するシーンから引きのシーンに繋ぎ、空に複数の爆発エフェクトがドーンドーンと描かれるような感じにすれば作画コストが下がって…………でもなあ、俺が死ぬ前の時点でも3DCGが進化をしていて、手書きに混ざっていても違和感が薄くなってきていたからな。劇場版では更に進化したそれをフルに使って、全編ヌルヌルとした映像になっているかも知れないんだよな。
……あまり外側の事情を邪推するのはいけないな。うんうん。
しかし、それはそれとして俺の進化が一番しょっぱく感じるのは仕方が無いのだろうな。合体変形ロボで、かつ劇場版となれば合体後の出番の方を増やしたくなるはずだ。
ぶっちゃけてしまえばおもちゃを売りたいわけだからな。合体後の姿をガンガンアピールしなければどうしようも無いわけだ。故に単機での戦闘はほどほどに収められ、まして合体後に主体となるカイザーは控えめの特徴に設定されている……悲しいけれどそんなところだろう。
『はいはーい。皆揃ったね。うんうん、カイザーから漂う満足感。良かったよ、嬉しそうで……うんうん、なによりだ。では今からお待ちかねの合体をして貰うけれどね、ああ、いつも通りで構わない。普段やってるとおり力を抜いてやってくれれば同じ具合に合体するよ』
「そうは言うがな、キリン。満を持して5体合体となるわけだろう? これまで4体合体だったのがお前の分増えたらやっぱり勝手が違うのではないか?」
いやまあ、確かにシャインカイザーの合体はヌルい。どこぞの合体事故で死ぬ思いをするガチめの合体ロボとは違い、合体の指示を出せばほぼオートで合体が済まされてしまう。
なので、実際の所はキリンが増えて5体合体になろうとも、特に心配するようなことは無いと思うのだが、念には念を入れてだ。まずはキリンから説明を聞いてからと思ったのだが。
『あぁっ! 私としたことが! いやあ、まいったな、まいったな! ははは、そうかそういうことか!』
「むむっ!? 一体なんだ? 自分だけ納得していないで話してくれ」
『いや、すまないな。すっかり言い忘れていたというか、どこかあちらの感覚で居てしまって、皆が知る既成事実だと信じて疑っていなかったのもあるというか……。ああ、そう言えばフィオラ君達には先に聞かれて同じ説明をしたんだけれどもね? まあ、私としたことがそこで満足をしてしまっていたのかも知れないな はっはっは、失礼した』
「だから一体何の話しなのだと聞いているんだが……。 その、のらりくらりとした感じ……ろくでもない話しだな?」
『ろくでもないとは失礼な! 些細な事だよ。ああ、本当に些細な事さ』
そしてキリンは……おそらくはコントロールをフィオラ達から貰って自ら動いて……クルクルと踊りを踊るように動き、恭しく礼をしてからとんでもない事を言った。
『うん、期待させたようで済まない! 実を言うと私は君達と合体が出来ない! つまり、君たちは変わらず4体合体なんだよ! ああ、もう正直に言おう。嬉しそうに5体合体、5体合体とはしゃぐ君を見て居たら言うに言えなくなってしまってね……』
「な……なな……」
「『『なんだってえ!?』』」
思わず皆と声がハモってしまう。確かに、確かにだよ? 別枠のサポートロボとして登場する機体は他作品で見たことがあるし、割と定番と言えば定番なんだ。でもさ、劇場版で、しかも1機体だけ追加されたとなれば5機目として合体すると思ってしまうのは自然な事では無かろうか! ああ、自然だとも!
『ああ……なんだか私の話で訓練が止まってしまって申し訳ないな……。すまない、本当にすまない。ただ、ひとつだけ言わせて欲しいことがあるのだよ』
「今更何を言われても驚かんし、もう隠さず全部話してくれ……。俺ももうネタバレがどうとか気にしないからな」
『そう言って貰えると嬉しいな。詳しい話しは君達が合体してから実際に見て貰いつつすることにするがね、ふふ、私は確かに君達と合体し、ひとつの体にはなれないが……共に力を奮えないとは言っていない。さあ、気になるだろう? 言葉の意味が気になるだろう?ははは、だからまずは進化した4体合体を済ませよう! 話しはそれからだよ!』
…………ったく、誰のせいでその合体が長引いていると思ってるんだ。いや俺も少し悪いけど、キリンが思わせぶりに話しを引っ張りまくってるのが一番悪いと思うんだ。
ああ、しかしまた無駄に気になることを言ってくれる……。ああもう! 合体のワクワクがちょっとかすんでしまったじゃ無いか!
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