第三百七十八話 集う機神

 後継機……――(カイザーアルティメットと言う形態になっただけで厳密に言えば同一機体らしいが)――の訓練に勤しんでいると、突如としてフィアールカのノンビリとした通信が届いた。


『訓練お疲れなの。みんなが一通り合格したのでこれから次の訓練にうつるの! 決して実物の改装がまだ終わらないから訓練時間を延長したとかじゃないから勘違いしないで欲しいの! 次の訓練が本番なのー!』


「言わなくて良いことを言って余計に誤解を招いていますよね」

「ああ、あのこぐまちゃんは少々間抜けなところがあるよなあ」


『き、聞えているの! もー! カイザーもスミレも覚えてるの! 後でお説教なのよ!』


 参ったな、まさか相互通信だったとは。知ってたけど。なんてスミレと話していると、どうやら次の訓練とやらはマップが変わるようで、どこか違うマップに転移をさせられた。


「あ! ここ! ジャマリオンの基地があるゲツメン基地ですよ!」


「あー、あったあった! そんなのあったな」


 ジャマリオンの基地は月の裏側、謎技術でテラフォーミングが行われ居住可能になっているエリアに作られているのだ。設定では謎フィールドによって有害物質を弾き、内側の酸素などは逃がさない設計らしいのだが……一応アニメの対象年齢が8歳~12歳という事になっているので、真面目に議論するだけ無駄なのである。


 と、よくよく周囲の様子を調べてみると敵対反応が無い代わりに味方の反応が4つ。どうやら皆もこちらに飛ばされてきたようだな。


『やあやあ! 待ってたよ! 見てたよ! 凄かったよ、熱かったよ! みんな! ははは、寂しかっただろう? 今からは私、キリンとフィオラ君にラムレット君も訓練に参加するからね! さあさあ! 張り切っていこうじゃ無いか!』


 ああ、賑やかなのもしっかり居る……。いやいや、これで満を持して5体合体が実現出来る……のだろうからな! 俺も張り切っていこう……というか、新機体の姿をまずはじっくりと……!


 レーダーの光点がこちらに向かってくる。ああ、ドキドキするなあ。キリンもそれなりに嬉しかったけれどもさ、慣れ親しんだ機体達の後継機だよ? 地上波ではついぞ叶わなかった後継機! シャインカイザーでも後継機が見られる日が来るなんて思わなかったなあ。


「ふふ、カイザー。はしゃいでいますね。私も少しだけ気分が高まっています」

「私も! カイザーさんがこんなにかっこよくなったんだから、皆だって凄いだろうね!」


 ああ、そうだな! っと、そろそろ目視可能な距離に入るぞ!


 まず初めに俺達の前に姿を現したのは……どうしよう……凄いのが仲間になっちゃったぞ……? あれはきっと……予想するに……。


『おおい、カイザー殿ー! レニー殿ー! みて下さい! この! ガア助の! 晴れ姿! 燃える翼に生まれ変わったガア助ですよ!』


『モチーフがフェニックスですからな。まさに不死鳥の如く蘇ったガア助でござる』


 おお……おお! ヤタガラスがフェニックスに進化……っていっちゃうとアレか。フォームチェンジするとか予想できなかったぞ。飛行繋がりで何か飛ぶ物になるのかなあとは思って居たけど、凄いの出してきたなあ。これもうメイン機体でいいのでは……。


「シグレちゃーん! ガア助凄いことになってるけど、大丈夫? 中熱くない?」


『ははは、レニー殿! これがまた熱くないのですよ!』

『拙者の炎は輝力の煌めきがそう見せているだけですからな』


 成る程、ただのエフェクトってことか。にしてもいいな……派手でかっこいいじゃないか……。


 そして興奮冷めやらぬうちに次の機体……うおおおお! すげえ何だこれは!


「なんだかとんでもない機体になったんだな! ウロボロス! ミシェル!」


『ちょ、なんで私達だってバレてしまいましたの!?』

「ヤタガラスが属性を引き継いだ姿だったからな。蛇繋がりでそうだろうと思ったんだ』


『ははは、まあカイザーならわかるよね。凄いでしょう? 僕ら顔がこんなに増えてしまったよ』

『中身の私達は変わらず2機だから安心してね。うふふ』


 冗談で言ったつもりなのだろうが、心底ほっとしてしまった。キリンほどじゃないが、ウロボロス達も知識欲が凄まじい。9つのAIから入れ代わり立ち代わり質問攻めにされることを考えるとめまいがするからな。


「しかし……フェニックスはヤタガラスの頃から飛行形態を取っていることが多かったのでわかるんだが、なぜヤマタノオロチまでその幻獣形態で移動してきたんだ? きっとロボのが足が速かろうに」


『んな!? ど、どうしてまだ名乗っていないのにその名前がスラスラ出てきますの!? 折角驚かせようと思って我慢して変形してきましたのに……』


「すまんすまん。いや、その特徴的な姿は俺が住んでいた国に伝わる有名な幻獣だからな」


『なるほどですわ。もー! それはそれとしても悔しいですわ!』

「まあ、そう悲しむな。もっと可愛そうなのはきっとマシューだぞ」


『え? どうしてですの?』

「フェニックスとヤマタノオロチは予想すら出来なかったが……マシューはな。言っちゃうぞ? オルトロスはケルベロスに変わったんだろう?」


『だああああ! バカイザアアアアアア! あたいは……あたいは……今年一番頭にきているし、がっかりしてるぞ!』


「わ、しまったな。通信が届いていてしまったか」

『わざとだろう! わざとだろう! ちくしょう! どうしてケルベロスだってわかったんだよ!』


「いやあ……だってなあ? キリンが結構前にぽろりと口を滑らせちゃってたからな……まあ、そうじゃなくてもウロボロスなら顔を一つ増やしてケルベロスかなーくらいは推測したと思うがな」


『キリンのせいかよ! ちくしょう、あのおしゃべりめ! あ、でもなカイザー……ふふふ、カイザー。あたいもなんでかイヌで来ちゃったけどな、こんな展開すんならちょうど良かったな! ふふふ! 機兵形態まではどんな姿か想像できないだろ!』


『そうだそうだ~! 私たちの新しい装備!』

『新たな力までは推理できないだろー!』


 嬉しそうにマシューに便乗して俺を煽るオルとロス。ケルとベロとスーの3体になってたらどうしようと思ったが、この子達も変わらずデュアルAIのままだったようだな。ヤマタノオロチよりは酷いことにはならないだろうが、AIの数を増やす利点もなかろうからなあ。


 ふふ、ドヤ顔でロボ形態を出し惜しみするケルベロスだが……その攻撃はめちゃくちゃ俺に効いているぞ! ああ! みたいとも! 頼む! 今直ぐ俺にロボ形態を見せてくれ!

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