第三百六十四話 神機の目覚め
……中々興味深い話しだった。巫女―レニーの母親――が話していた『シンキ』とは神機であり、『
どういう方法を使ったのかわからないが、神が架空の存在、創作物中の登場人物達を実在する人としてこちらの世界に招いたのは確かだ。
そしてアニメシャインカイザーにおいて、多数存在する登場人物と言うのは黒森重工に務めていた研究者達。そして中でも『輝力母艦グランシャイナー』のクルーたちがそれに該当するのではなかろうか。
日本人が創作物の世界に転生することがあるならば、創作物の登場人物が異世界に転移することがあってもおかしくない……? のかも知れない。神とは人智を超えた事象を可能とする存在だからな……。あまり自分の尺度で深く考えないほうが良いだろう。
その輝力母艦グランシャイナーが本当にこちらに来ているのだとすれば、凄まじい戦力になるぞ。設定資料集によればクルーの数は400名。最高速度マッハ1で空を飛び、シャインカイザーを収納して戦地まで移動することが可能な超大型飛空艦なのだ。
主砲として重フォトンランチャーを備えていて、一応それなりに戦闘も可能な頼れる船なのだが、グランシャイナーの真の役割はシャインカイザーの移動とそのメンテナンスだ。
全長427m 全幅152mの大型艦までまさかこの世界に来ているとは夢にも思わなかったが、神はシャインカイザーを再現する物は全てこちらの世界に送ると言っていたわけだからな……十分あり得た話なんだよな。
もっと早くにこの艦の存在に気づけていたならば、もっと楽に事が進んでいたかも知れないと思わないでもないが、もしも当初からグランシャイナーに乗っていたら現地民達との数々の出会いは無かったかも知れないし。そう考えれば
ほんと、全く困った神様だな。
さて……現在我々はその『神機』を目覚めさせるべく、それが眠りについているとされる地に向かっている。レニーの両親達を先頭にパイロット達、我々ロボ軍団、巫女達、そして大勢の村人たちがぞろぞろと歩いているものだから、なんだか妙ちくりんな大名行列のようになっている。
そしてまた……一般人の足に合わせて歩いているものだから移動速度が遅く、我々にとっては中々に辛いものがあったが、2度の休憩を挟んだ後、いよいよその地に到着すると心労も何もかもがすっぱりと吹き飛んでしまった。
やっぱり新しい
「機神様方、お疲れ様でした。ここが貴方様方よりお預かりしていた神機が永き眠りについていた場所、そして我らが先祖達の始まりの場所、グランシャイナーです」
レニーの母親が静かに語ったその地名、やはり神機とはグランシャイナーで間違いないようだ。そしてこの場所にそれが眠っているのも確かなようだな。
俺と共にアニメを楽しみ、その存在を知っていたパイロット達からも驚きの声が溢れ出している。レニーも一緒になって驚いているあたり、巫女の家系といっても二人にはまだ伝えられていない秘密だったようだな。
だが、この場所は……。
『なあ……スミレ、グランシャイナーって防水機能あったっけ』
『何をバカなことを言ってるんですか。極地はおろか宇宙空間ですら稼働可能なグランシャイナーですよ』
『……そうか、そうだよな。いやすまない。俺としたことが変な事を聞いてしまったな』
いや、しかし……しょうが無いではないか。現在我々の目の前に広がっているのは大きな湖だ。確かにグランシャイナーがすっぽり入る大きさでは有るのだが……、永きに渡って、それこそ地球であれば文明が何度始まり滅びたかわからない程の長期間に渡って沈んでいたんだぞ……。
お魚さんやカニさん達のおうちになって、酷いことになっている様子しか想像できないじゃないか……まあグランシャイナーならさ、謎バリアでもはってなにもかにもはねのけているに違いないのだが……それでもやっぱり気にはなるよ。
そんな俺の勝手な心配を他所になにやら儀式が始まったらしく、なにやら板のようなものを持ったレニーの母親が湖に向かい何事か唱えている……――
――むっ……これは……祝詞とか呪文とかそういうものじゃあないぞ……と言うことはあの板は……デバイスか!
「コード:1074発動 シークエンス1から5まで省略。コネクトトゥ:フィアールカ……コントロールをフィアールカに。起動シークエンス及び運用権限をフィアールカに委譲。コネクトトゥ:カイザー 全権限をカイザーに委譲 以後シークエンス1から4は破棄……グランシャイナー起動開始」
これは……アニメでも21話でカイザー達を助けるべくグランシャイナーが再度基地から飛び立つ際に入れられたシーンのセリフだ……。
だが……一部知らない単語が聞こえたぞ。
『フィアールカ』この単語は設定資料集をアホほど読み込んだ俺でも知らない。恐らくは劇場版の新要素なのだろうな……くっそ、またネタバレが向こうから……むっ!?
「カイザー、気づきましたか?」
「ああ、外部からのアクセス許可申請があったな……断る理由はないから承諾したぞ」
「はい、グランシャイナーの、私達の母艦からの信号でしたから問題ありません」
俺の要らぬ心配を他所に、どうやら健在だったらしいグランシャイナーは無事に機動をしたようだ……が、ちょっとこれは危ないかも知れない。
「諸君、もう少し高台に上がっておいたほうが良かろう。少し下がっておけ」
「神機様のおっしゃるとおりです。民よ、向こうの丘まで戻りましょう。後5分程でこの場に水が押し寄せます……ほら! みんな! 危ないから走って走ってえ!」
神託……いや、レニーの母親は端末を見ていた。つまりはグランシャイナーから端末へ注意喚起でも届いたのだろうな。湖中で眠っていたグランシャイナーが、あの巨体が姿を表わすのだ。水が押し寄せないわけがない。
思わず素を出しながら避難誘導をしたレニーの母親によって村人たちの避難が無事に終わると……間もなくして地響きが聞こえた。そして……――
「見ろカイザー! 水面が盛り上がってるぞ!」
「ああ、見ておけマシュー、みんな! アレこそが俺達が欲しがって居たグランシャイナーだぞ!」
「まさかグランシャイナーまで有るなんて思いませんでしたわ!」
「凄い……うちの村にグランシャイナーがあったなんて……」
「まさかあんな物が実在してるなど思わなかったでござるよ……」
「あんな大きな物が……? うそだろ……」
「……」
アニメを見ていたから、見ていたからこそ、これから姿を表す物の凄さがわかる。
共に感動を分かち合える喜びと言ったらもう。彼女達にシャインカイザーを見せておいてよかった、心からそう思った。
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