第三百六十三話 巫女語り

◆◇巫女の演説◇◆


 遠き昔、神話の時代。大神はこの世界に異界より4柱の機神を招きました。『大いなる光、カイザー』『円環の賢者、ウロボロス』『箱庭の守護者、オルトロス』『導きの隠者、ヤタガラス』4柱の神は1つになり『輝神シャインカイザー』としてルストニアの地に降り立ったのです。


 そしてこの地には機神の使徒達が大いなると共に降ろされました。共に招かれた使徒の数は200名。異界から招かれた使徒達でしたが、大神からのお言葉により、混乱するもの、悲観するものは誰一人無く。大神から出される神託に従って、やがて来る時に備える日々が始まったのです。


 その使徒達は神機を家としながら当時はまだ荒れ果てていたこの地を開拓し、やがて小さな村を作り上げました。時が経ち、新たな子が生まれ、年老いた使徒が天に還り……世代は巡っていきます。しかし、大神からの願い『いずれ訪れる機神の助けになりなさい』というお言葉だけは代々受け継ぎ、その方法を引継ぐ教育も続けられてきました。


 現在では神の言葉を全て引き継いでいるのは巫女の家系のみとなりましたが、それでもあなた方、村の民達も学童を通じて幾つかは身についている筈です。


 我々、グレンシャの民は異界から訪れた使徒の末裔。神機を使い機神の助けとなる使徒の末裔なのです。


 今日まで続く大神からの神託の中には驚くべき言葉もあったと伝えられています。制約により、これまで民には話すことが出来ませんでしたが、外界で何が起き、どう転じたのか。そして機神様方は現在どうされているのか……歴代の巫女達が残した記録はそのどれもが目を見張る物で有りました。


 そして数百年前、当時の巫女に伝えられた神託は、大神が創られた世界の理をに変化を与える、当初想定されていた未来に大きく変化が現れる内容だったと記されていました。


『大神第5の機神がこちらの世界に招かれた。神機にも変化が現れていることだろう』


 神託を受けた巫女は床から飛び起きると、直ぐに神機の様子を見に行こうとしました。しかし、枕元に見慣れぬ物があるのに気づきます。それは不思議な絵や模様が描かれた青い板でした。手にとって詳しく調べているうちにそれは2つに割れ、中から書物と円盤が現れたのです。円盤にもまた、絵や模様、それにグレンシャ古代文字とよく似たものが描かれていましたが、どうにも読み取ることが出来ず。

 

 そして、その円盤は調べているうちに板からはずれ、その際に露わとなった円盤の裏面は虹色に輝き、それを手にする巫女の姿を映し出しました。

 巫女はその事から推測して、神事に使われる鏡、神から賜った神器であると判断し、社を建てて奉納したのだと伝えられています。


 本日、機神様方が使徒を伴いこの地に降臨されました。よって、本日を以て全ての情報を解禁し、先祖の遺志を継ぎたいという希望者には機神の使徒となってもらいたく思います。


 しかし、その前にグレンシャの民が知っておかなければならない外界のお話をしておきましょう。


 かつてこの村にも外部から様々な国の民が訪れ、使徒の末裔と交わってこの地をより豊かにしてくださいました。ルストニア、ボルツ、ガンガレア、リーンバイル。我らの中にはその国の血を引くものも数多く残っています。


 しかし、その交流が途絶える日が訪れました。神代の大戦――その影響により外界へと繋がる唯一の道が崩落し、断絶。また、大戦後の混乱により、外界ではこの地に関わる情報が途絶しました。


 機神ウロボロス様も参戦した大戦の情報は、神託によって当時の巫女に届けられ、それを止めるため現地に言葉を届けるお役目を果たしました。


 戦後、混乱が予想される外界へ手助けをしなくてもよいのだろうか、巫女は考えましたが、大神は外界への関与は防ぐべしと神託を下したのです。


『この地からの一切の関与を禁ずる』『来るべき日まで、民に外界の情報を伝える事を禁ずる』大神から巫女へと以上の言葉が届けられ、今日までそれは堅く守られていました。


 そのため、学童で機神様や神機のお話と同時に学ぶ外部教育の内容は古い内容のまま、大戦以前の物が今でも伝えられていました。


 本日ここに情報を開示します。ルストニア、ボルツ、ガンガレアは既に大戦によって滅亡し、現在は別の国家達によって新たな世界が育まれています。


 その地を我が目で見るべく、この地を抜けて旅立ったのがカイザーの使徒であり、巫女の末裔『レニー・ヴァイオレット』彼女は神託により禁忌地とされていた旧巡礼道へ潜り込み、外部へ繋がる道を発見したのです。


 そう、かつて外界へと繋がる洞窟への入り口は、大岩の崩落によって塞がれていましたが、近年発生した地震によりその岩がずれ、再び通れるようになっていたのです。


 レニー・ヴァイオレットは旧ルストニア領、現トリバ共和国と呼ばれる地で修行を続けていましたが、神の山でお目覚めになった機神カイザーと出会い、その使徒として認められました。そして、紫電の女神スミレ様の教育を受け、立派な使徒として育てられたのです。。


 その後、機神オルトロスとその使徒『マシュー・リム・リエッタ』と出会います。彼女こそがかつてこの村と山を隔てた場所に存在していたボルツの末裔、現在はリムールという街の英雄の娘なのです。


 次に出会ったのが『ミシェル・ルン・ルストニア』彼女こそが旧ルストニア王家の末裔であり、現ルナーサ商人連邦と呼ばれる国で代表を務める物の娘、世が世なら姫と呼ばれる存在です。彼女は先祖代々、ルストニア家を護り続けてきた機神ウロボロスの使徒。ウロボロスは力を失い眠りについていましたが、レニー・ヴァイオレット達との協力によりそれは解決し、ウロボロスは再び力を取り戻したのです。


 そして複雑な事情を乗り越え、機神ヤタガラスとその使徒『シグレ・リーンバイル』と出会うことにより、輝神シャインカイザーへと至る機神、4柱が揃いました。シグレ・リーンバイルはその名の通り、リーンバイル王家の末裔であり、我らの村同様に大戦後は外部との連絡を絶ち、古き伝承を護り続けていました。


 我ら巫女の一族は先祖代々、機神に連なる家系の元へ神託を届けるお役目を続けてまいりましたが、それも全ては邪神ルクルァシア打倒のため。世界を護る使命を大神から受けた機神達が円滑に行動できるよう、我ら巫女の一族は今日まで神託を届け続けてきたのであります。


 その御役目は『フィオラ・ヴァイオレット』にも受け継がれました。巫女フィオラは姉であり使徒であるレニーの危機を大神より伝えられました。邪神ルクルァシアにより大きな傷を負った輝神シャインカイザーは使徒と仲間の神々の命を救うため、その身を4つに分けて邪神の攻撃を一手に引き受けたのです。


 その際、機神カイザーの使徒であるレニーは、カイザーの判断によって単身で逃がされ、所在が不明となりました。


 そして、不明となった使徒レニーを見つけ出し、再び機神カイザーと結びつけるため、巫女フィオラはこの地から旅立ちました。

 フィオラは外界でとなり、情報を集めていましたが、依頼で向かった森で機神カイザーの分体である光の女神ルゥと、旧ルストニア方面に向かう旅にて後に共にキリンの使徒となるラムレットと出会いました。


 その後、他の機神や使徒達と合流したフィオラは使徒レニーとも再開を果たし、光の女神ルゥによって、囚われていた紫電の女神スミレ、そして機神カイザーを救い出す事が叶い……再び集った神々と使徒達はこの地を目指し、聖地降臨への旅をはじめたのです。


 その道中、かつてこの地で『?鬼』と名付けられ恐れられていた第5の機神キリンと出会い、フィオラとラムレットは使徒として目覚めました。


 本日この地に5柱の機神と6人の使徒が集い、邪神に打ち勝つ力を得る試練に立ち向かおうとしています。我々使徒の末裔はそれを見送ると共に、各自解禁された情報を急ぎ習得し、機神の手助けとなるべく神機の調節に入りたく思います。


 数千年にも渡り守られ続けてきた先祖代々の願い、ここに成就させましょう。


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