第二百九十八話 魔光に浮かぶ影
戦場に突如として現れたシュヴァルツ2機。
現状でさえいっぱいいっぱいなのに、これはもう無理なのではと諦めかけたとき、敵だとばかり思って居たシュヴァルツ達が帝国軍機達を凄い勢いで蹴散らしてしまった。
既に敵機は半数を切り、数に押されていたマシュー達もようやく本来の力を奮い始めている。この戦い……勝てる!
「フィオラ! ラムレット! 私達も行くぞ!」
「「おう!!」」
……なんだかすっかりブレイブシャインに染まってきたな? っと、そんな場合じゃ無い!
シュヴァルツが『盾』を蹴散らしてくれたお陰で動きやすくなったけど、まだまだ安心は出来ない。
弐式が3機、まだ健在でマシュー達とやりあっている。
「槍相手なら脚がダメでもあたしが有利!」
よほど盾相手にイライラしていたのか、生き生きとした声でフィオラがボルトを放つ。
3連撃、それが全て吸い込まれるように敵機に当たりガクりと腰を落とす。
「アタイだってイライラしてたんだ!」
即座にスイッチしたラムレットのソードが一閃、敵機の頭を吹き飛ばす。
「やったねラムレット!」
「ああ! ナイスだフィオラ!」
パシン、と手を合わせコンビネーションを喜ぶ二人……が、ここは戦場、気を抜くのは…………!
「フィオラ! ラムレット! 後ろ!」
背後から迫る槍兵、しまったと焦る二人だったが、その槍はこちらに届くことは無かった。
真横に吹き飛ぶ機兵、そんな光景を見るとは思わなかった。黒騎士が乗るだけ合って確かにシュヴァルツの出力は高いのだろう。しかし、それだけではない、あの戦闘センス……拳で敵を張り倒すセンスは機体性能だけではなく、パイロットの練度の賜だろう。
一体どんなパイロットがあれを操縦しているんだろう?
気付けば残るは3機、シュヴァルツ弐式を残すのみとなっていた。
「マシュー、大丈夫? 私達も今そっちに向かうよ!」
『ダメだ来るな! こいつらは強い!強いし……やべえよ』
『ルゥ、これはあの時の黒いアレの気配がするでござる』
『脚をやられた貴方たちでは……キャア!』
弐式の1機がウロボロスに斬りかかった。幸い傷は浅そうだけど……。
倒れたミシェルをカバーするべく、マシューが駆け寄っていく。すかさずシグレが援護射撃を加えるが、結果として不利な状況に陥ってしまう。
不味いことに敵機のうち1機は射撃型。しかも何か強力な光弾を放つ恐ろしい長銃を装備していて、こちらから迂闊に援護射撃をしよう物ならたちまち狙われ打ち抜かれてしまいそうだ。
あの謎のパイロット達の協力があれば……姿を探すが、いつの間にか姿を消していた。
味方してくれてたとばかり思って居たけれど、彼らも何か別の目的があって来ていただけだったようだ。
……まさか彼らの目的も私の身体なのでは?
と、思っていたら突如として天から黒騎士が、シュヴァルツが1機降ってきた。
驚いて声も出ずに居ると、そのまま弐式に向かって駆けだしていく。一体なにがやりたかったのだろう?
不意打ちにしては位置がズレすぎている……何か思惑があったのか……?
あっ! 狙撃された!
コクピットを掠める様に放たれた一撃。直撃では無かったのが幸いしてか、あの威力でもハッチこそ吹き飛んでいたけれど機体は健在だ。
まったくハラハラさせてくれるよ……。
一応敵ではなさそうだから、やれれてしまえば気分が悪い。慎重に行動して欲しい。
って、動けずに居た私達が言えることじゃないんだけどさ……。
しかし、コクピットががら空きになったと言う事は、ピンチには変わりは無い。そこを狙われてしまったら今度こそ……。
敵も馬鹿では無い。マシュー達を牽制しつつも、的確に黒騎士が乗るシュヴァルツのコクピットを狙い撃とうと立ち回る。
つまりは敵機に大きな隙が生まれマシュー達が動きやすくなったというわけで。
『誰だか知らねえけどありがとなあ!』
『お陰で随分動きやすくなりましたわ!』
『コンビネーションBいくでござる!』
跳躍し、飛翔したヤタガラスが雨のようにナイフのような投擲武器を放つ。一見、敵味方の区別無くばらまかれたかのように見える武器だったが、的確に敵の動きに干渉し、マシュー達の動きから目をそらしていた。
『どりゃあああ!』
マシューが雄叫びを上げ大ぶりにトンファーブレードを振り回す。シグレの攻撃に目を奪われていた弐式の脚部に深々と突き刺さり、体勢を崩すことに成功した。
即座に振るわれたのはミシェルの刀。他の機体相手では遠慮していたコクピットへの攻撃。何か思うところがあったのだろう、容赦なくコクピットを一閃し、1機が地に沈んだ。
続けてもう一機、と言うところで敵スナイパーがウロボロスを狙う。中でもダメージ量が多いウロボロスを狙う当たりがいやらしい。
1発、2発、着弾毎に狙いが正確になっていく。マシュー達もフォローに当たろうとするが、もう一機が邪魔をしてそれは叶わない。くそ! シュトラールが動けさえすれば!
先ほどの一撃が機体にさらなるダメージを与えてしまい、本格的にただの足手まといになってしまっている。
あの時無茶をしなければ……!
と、その時。叫ぶような声と共に黒騎士が、シュヴァルツが飛んだ。
「もおおおおおおおお!! お前の相手はあたしだろおおおおおおおおお!!!」
高く、高く跳躍し、落下の勢いそのままに拳を構えてスナイパーに向かっていく。当然、スナイパーもただただ喰らおうとは思わない。必死に狙撃しようと銃を構え光弾を放つが、なぜだかそれは当たらない。
「うおおおおおおおお!!! ギィイイイイガアアアア!!! ナックゥウウウル!!」
外部スピーカーも無いのに開いたコクピットから凄い声量の声が響いてくる。
「あの声……」
フィオラが掠れた声を出す。
金属がへし折れるけたたましい音が周囲に鳴り響き、スナイパーが吹き飛んでいくのが見えた。
吹き飛んだスナイパーは残っていた一機を巻き込み、それを追うように飛び込んだ黒騎士はすかさずそこに追撃を加える。
1撃、2撃、3撃、4撃……、何処か鬱憤を晴らすかのように連撃が入り、先ほどまでの不利がウソ化のように弐式達は沈黙した。
「この拳が燃える限り……あたしのハートは熱く滾る……ッ!」
……恥ずかしいセリフが聞えてくる……が、なんだこのセリフは……魂を揺さぶられる……。
『うう……そのセリフ……』
『シャインカイザー三十七話……』
『蘇る輝神でござるな……まさかあなたは……いや、間違いないでござる』
割れた機体から漏れる魔導光に照らされ、コクピットから身を出した少女のシルエットが浮かび上がる。
「……ただいま、みんな! 遅刻しちゃってごめん! カイザーさんを起こしに来たよ!」
『『『レニー!!!!』』』
「お姉ちゃん……ッ!」
私の頭の中でパチンと、また1つ何かがハマった。
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