第二百九十三話 奪還作戦ー作戦概要
二人乗りの特殊機体シュトラール。この機体はブレイブシャインが乗る『オリジナル』と分類される、この世界全ての機兵の元となった機体に近づけるため開発された実験機だ。
オリジナルと機兵、今や見た目的にはかなり近い物にはなっているけれど、それでもオリジナルには敵わない部分はまだまだたくさん残っている。
中でも真似を出来ない最大の違いは動力源だ。
オリジナルが動力源とするのは『輝力』と呼ばれるもので、いわゆる気力と近い何からしい?(何故か情報がふわふわしている)
一方、機兵達は魔力を動力源とするのだが、旧世代機は魔石を原料として作られた『エーテリン』という液体をタンクに入れ、それから魔力を抽出することで動作していたみたい。
それは当然使えばそれだけ減っていくわけで、残量が0になる前にエーテリンスタンドで補給する必要があった。つまり、長時間の運用には向かない仕様だったわけなんだけど、実は旧時代、大戦以前の世界ではそんな物は必要なく、人体が持つ魔力をそのまま流し込む方式が使われていたらしい。
それはまさにオリジナルと同じ仕様で、パイロットから直に魔力を送り込み、それと共に操作信号を機体が受信し、まるで自分の手足のごとく動かすことが出来る、輝力を魔力に変えただけでそのままオリジナルと同じ仕様だったというわけだ。
長らく再現出来なかったその技術を復元し、生み出されたのが次世代機、エードラム。
エードラムの誕生により、機兵の常識はひっくり返り、これまで困難だった事もたやすく可能となったそうだ。
勿論、そこが終着点では無かった。
基地の技術者達が次に目指したのはオリジナル同様の高出力だ。
オリジナルとエードラムでは大人と子供くらいの格差がある。それを力技で解決したのがシュトラールだ。
魔導炉を2基搭載し、二人のパイロットから魔力を吸い上げ可動し、オリジナルに近い出力量を実現してしまったのだ。
帝国の黒騎士が使っていた機体を元に作られたシュトラールは仕様に変更が加えられ、あくまでも動力源として乗り込んでいたサブパイロットもメインパイロットとして同時に信号を送れるようになった。
これにより、帝国の機体より高度な運用が可能となったが、そこまで行くにはパイロットの育成が難となる。
フィオラとラムレットが短い間でものにできてしまったのは、二人の才能も勿論の事、運が良かったとしか言いようがない。
さて、訓練が終わったタイミングで入った通信、それはアズベルトからのもので、いよいよもってカイザー奪還作戦を実行するので会議をするぞという連絡だった。
そして私達はアズベルトのもとに向かい、今現在、彼が語る作戦に耳を傾けているところなのです。
「今回の作戦の最後の1ピース、シュトラールのパイロットもう一組が何とか仕上がった。これで僕たちはカイザー奪還作戦に移ることが出来る。
では、さっそく作戦概要を説明していくのでこちらの資料を見てほしい」
……という具合に始まったアズベルトの説明、それをざっくりとまとめるとこんな具合だった。
作戦実行のためにルナーサへと向かう隊は2つに分けられる事になる。
メインとなるのが、カイザー奪還部隊となるブレイブシャイン。
これにはブレイブシャインの3人と、シュトラールに乗るフィオラとラムレット、そして勿論、私も含まれる。
そしてもう片方は陽動部隊だ。
ルナーサ奪還と見せかけた小隊で、24機編成のエードラムで構成される。
その指揮を取るのがアランドラとリリィが乗り込むシュトラールだ。
まずはじめに陽動部隊がルナーサになだれ込み、街を巡回しているであろう兵を引きつける。その後、機を見て我々奪還部隊がアズベルト邸に向かうんだけど、問題となるのが3つの結界だ。
その結界は、屋敷を中心に3基設置されている魔導具により展開されているようだ。
3基揃っていなければダメなのか、2基でも動くのか、1基でも……と、そこまでは調査が出来ていないため、念のために全部破壊することになっている……パワープレイ万歳!
スピード重視の作戦なので、ここで奪還部隊は2つに分かれることになる。
魔導具は屋敷の正面に一つ、これを仮に『第一魔導具』と呼ぶ。そして裏手の左右にそれぞれ『第二』『第三』と、屋敷を三角形で囲むように配置されているわけだ。
第二魔導具に向かうのはミシェルとマシューだ。
魔導具を護る機兵が居ないとは考えられないため、2機編成で向かうわけだけど、そこはきちんと力のマシューと速さのミシェルを一組にしてバランスを取るというわけだ。
そして第三魔導具に向かうのが我々シュトラールとシグレ。
シグレはリーン刀による斬撃と、投擲武器の2つで遠近両方に対応が可能。
そしてシュトラールに乗り込むフィオラとラムレットも同様のことが可能……。
なんだか変則的な2機が一組になってしまった感があるけれど、これはこれで上手く行きそうな気がするんだ……うん、そう思っておこうじゃ無いか。
それぞれ首尾よく魔導具の破壊が出来たら、即座に第一魔導具へと向かい、それを破壊する。どちらが先であっても破壊後はもう1組を待って、合流をもって館に突入する。
カイザーが囚われているのは地下大空洞。
アズベルトが破壊していたと言っていたエレベーターが正常に動作するのかはわからないため、念のために降下用具を持っていくことになっている。
地下大空洞には恐らく最大の護りが敷かれているはず。油断せず、各機揃って、万全の態勢で降りていく必要があるね。
フィオラとラムレットはまだまだ完璧とは言えないので少々心配だけれども、そこは私の中にぼんやりと見え隠れしている『戦闘経験』で何とか補ってあげられたら良いなと思う。
待ってろよ、私の身体……! 今取り戻しに行くからな!
そしてスミレ……もしそこに居るならば、必ず君も……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます