第二百二十七話 戦力強化
3国のパイロット達が乗り込む10機のエードラムを引き連れ、中間地点へ向かい、交代で中間地点に詰めていたライダー隊の1軍達には集落に戻って貰った。
今後、暫くの間は先のパイロット達と、2軍パイロットが乗るの5機、あわせて15機が中間地点にて本格的な訓練と開拓を進める事になる。
今までブレイブシャインは2機ずつ2班に分かれて集落と中間拠点に着いていたが、練度が上がった1軍達が集落に着くためその必要は無くなった……のだが。
マシューだけは集落に残ってもらっている。
一つ目の理由として、何かがあったときに適切な指示を飛ばせる隊長が必要だったからだ。
将来的にはライダー部隊から選任しようと思っているが、今のところはまだその域に達していない。
経験だけ見れば、集落に残した5名のリーンバイルから派遣されたパイロット達でも十分に隊長役を果たせると思うのだけれども、そこはやっぱり身内の方が良いだろうからね。
同族であり、教官でもあるマシューに任せてしまったというわけさ。
そしてもうひとつの理由、これは何より重要な事だ。
エードラムにはスミレ謹製の端末が搭載されていて、これまでの動きやダメージ、不具合などのデータが蓄積されている。
これらのデータは暗号化されていて、セキュリティを高めるためにエードラム単体ではデコードすることが出来ないようになっている。
中身を読むにはブレイブシャインの機体か、スミレが基地に設置した基地のメイン制御端末を用いる必要があるのだ。
今後ブレイブシャインが揃って任務に着く日の事を考えて一応リックやザックのみが使用できる個人用のデコーダーも用意はしてあるが、護りが薄い個人がデコーダーを持つのはデメリットが大きいし、基地の端末やブレイブシャインが使えない緊急用と考えているため、今の所は代わりにオルトロスにその役割をして貰う事にしたのだ。
ブレイブシャインの機体であれば誰でもデコードすることが可能なのだが、データを元にリックとジンが改良を加える際、メカニック経験がそれなりにあるマシューが居れば更に作業が楽になるだろうというのもマシューを残した理由だな。
2軍パイロット達も毎日任務時間外で自主トレーニングを続けていたため、各国のパイロット達……仮に連合軍と呼ぶか。
……連合軍達の動きについて行けるようになっていた。
そのため基礎訓練はさっさと卒業させて合同で訓練を兼ねた作業に従事させている。
1日の流れはこうだ。
起床・朝食後に機体の簡易チェックを実行し、その後動作チェックと準備運動がてら拠点を一周。問題が無いようであれば護衛役を残して森に入る。
部隊に同行出来るブレイブシャインが3機に増えたたため、今まで1:1で割り振っていた機体を拠点に1、森に2機と分けられるようになった。
それまでは隊長役のブレイブシャインはハンター隊と共同で狩りを行うグループと伐採を行うグループとの間を定期的に行ったり来たりする必要があって非効率的であったが、これでようやくそれぞれに1機つきっきりで作業と指導が出来るようになったため、以前より大幅に作業効率が上がる事となった。
なによりライダー隊に連合軍が一時的であれ加わったのが大きい。
純粋に部隊の数が増えたため、5機の狩りグループと10機の開拓グループに分けられるようになった。
それによって狩りの効率は勿論の事、開拓が伐採、伐根、運搬、整地と手分けをしやすくなって開拓速度が大幅に上がったのだ。
戦闘訓練となる魔獣狩りは兎も角として、作業的には地味な土木作業をさせる事について連合軍から不満が出るのではと少々不安があったが、各国それぞれ軍機で災害復旧にあたる事がしばしばあるようで、それについて特に文句を言われるような事は無かった。
むしろ従来機より緻密な作業が出来ると喜びの声が上がっていたくらいである。
連合軍によるエードラムの操縦訓練は一ヶ月の任期で行われる。
それが終われば、それぞれが機体と供に本国へと戻る事となる。
そんな彼らを基地まで運ぶのは我々ブレイブシャインのお仕事だ。
タイミングを見て現場を抜け、クレムとともに任期が開けた同盟軍を積んで基地へと戻り、変わりに機体と新たなパイロットを積んで戻る。
こちらへ赴任したパイロット達は訓練を兼ねた作業を1ヶ月続け、エードラムの操縦技術を身につける……と。
勿論、以前レイと話したとおり、ここで学んだパイロット達は国に戻った後に指導者としてエードラムの操縦教官になる事が決まっているため、既にこの送迎もなくなっていたはずなのだが……。
『悪いがもう少しそっちでも教官役を続けてくれねえか。
せめて50人ほど教官が揃わねえと追っつかねえわ』
と、レイに言われ、渋々ながらもう少しだけ継続することになったのだ。
こちらで我々が指導している間にも、各国に戻ったパイロット達も向こうで指導することになるため、確かに効率は良いし、なるべく実用化を急ぐという事を考えれば悪い話では無いんだけどね。
エードラムがほぼ完全な物に仕上がったというのもあって、了承しちゃったんだな、これが。
交代のために送迎をする間、ブレイブシャインがそっくり抜けるというリスクについては、その間は安全面を考え森での作業は中断し、中間拠点の建築作業に集中して貰う事にして乗り切って貰う事にした。
まあ、リム族防衛隊も結構練度が上がったから、そろそろ俺達がいなくてもなんとかなりそうではあるんだけどね。念のために……ね。
アズベルトから預かったルナーサ製の機体は現在の所、合計40機。
近い内にさらに20機届くという。
トリバからは既に60機が預けられていて、さらにまだまだ届くという事で、基地からは『ジジイたちを返してくれ』と、嬉しい悲鳴が上がっている……が、ジジイたちが何故か帰りたがらないのだからもう少しだけ我慢していただきたい。
勿論、基地に収まりきる数じゃあないので、それらは当然俺がストレージに入れることになるわけで……。
訓練やら送迎やら開拓やら……ほんと忙しいったら無いよ。
ちなみにリーンバイルから託された機体を元にして製造されたエードラム初期型に関しては、このままリム族の集落で使われることになった。
理由として、国に持って帰ろうにも現状、俺の力を借りなければいけないし、遠いところまで手間をかけさせるわけには行かないと。。
訓練のために派遣されたパイロット達についてもそのままこちらで預かっていてくれとのことで、なにやらかにやら有り難くて頭が上がらないよ。
というわけで、現在エードラムの生産が各国の共同の元、着々と進んで居る。
今はまだ、軍用機の改造しかしていないけれど、それもそろそろ終わりとなる。
以上の話はこれまでのお話だ。
ここからはより本格的にエードラムとそのパイロットを生み出していくこととなる。
データが揃った今、これからは機体改造ではなく、はじめからエードラムを製造できるようになるのだ。
こちらから基地に送られたデータを元に作られた図面を使い、トリバ内の機兵工房をフル稼働させてベースとなる機兵を製造してもらう。
それを基地に運搬後、エードラム専用の動力炉を組み込むことにより完成させるのだ。
その後は各国に運搬され、我々の元を巣立ったパイロット達を指導者としてエードラムのパイロットの育成をする。
流石にリーンバイルへの運搬は現状不可能なので、一時的にトリバにパイロットごと出向という形で預かってもらうことになっている。
トリバは製造を、ルナーサは資金の協力を、リーンバイルはバックアップ面での協力をする……3国が手を取り合う共同事業である。
わざわざ基地で仕上げをしているのは動力炉を完全なブラックボックス化したかったからだ。
この技術が帝国に流れるのは勿論避けたかったし、余計な面倒事を避けるためにも暫くの間は民間に漏らさないようにするためも有る。
故に情報の管理と監視がしやすい基地で仕上げることにしたのだ。
動力炉、魔導炉の要となる紅魔石の製造法についてはレシピが完全に隠されている。
そのレシピがあるのは俺のストレージとアルバートの頭の中だけ。
万が一エードラムが鹵獲されたとしても、肝心の動力炉を再現出来ないため、ぱくろうにもぱくれないのである。
……
…
ここまでやたらと駆け足で準備をしてきたけれど、なんだかんだ後半年は猶予が残されている。
リーンバイルからの報告によると、黒騎士の一件の後から帝国は不気味なほどに鳴りを潜め、何処かピリピリとしていた空気も最近はすっかりなくなっていると言う。
今更気が変わって平和主義になったというわけではなかろうな。
良くある展開から考えれば、作業は順調、既に侵攻までの道筋は整った。
ククク……今は静かにその時を待つのみよ……みたいな?
アニメと現実をごっちゃにするつもりは無いけれど……案外そう言うことかも知れないぞ。
時間をかければかけるほど、黒龍の孵化が近づいていくわけで。
そんな物騒な存在を孵化させるわけには行かないので、直ぐにでも奪取に向かいたいところなのだけれども……それはまだ叶わない話だ。
現在こちらが保有している戦力と、帝国の戦力を考えれば、現状ではまだまだ死にに行くようなものだ。
今は焦らずじっくりと練度を上げ、戦力を蓄える時だ。
そうさ、焦っても何も良いことは無いんだ。
神託が言う『残り半年』の猶予を信じて、ギリギリまで出来る事をしようじゃないか。
トリバ、ルナーサ、リーンバイル……そしてリム族の
その量産が俺達ブレイブシャインと、同盟軍の勝利の鍵となるのだから……ね。
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