第86話 期待値ゼロの二人

高坂が

「駿くんは本当に運動神経もいいし、

歌も上手いし、何でもできるのね!!

体育祭でMVPもとっちゃったもんね!!」



「そうなんです。うちの駿はできがよくて

侍の職についてますから。」



「侍?」


孝也が役職の説明を始めた。


「ということは、

孝也君?が将軍で偉くて

次いで、侍の駿君。そして

平民のタロちゃん。なんか分かる気がする。」

この役職に理解を示す高坂を

目を細めてじっと見つめる太郎。

すると高坂と目が合った。


やばっ、気まずい!!

でもそらすな、負けるな俺!!


「何よ。平民なのが納得いかないの?」


「違います」


「じゃあ何?」


「平民を侮ってはいけませんよ。

革命は平民の反乱によって起こるんです!!」


「まったく!

あなたの今日のどこを見て革命を期待すればいいのって!」


くそっ!!めちゃくちゃ的を得たことを。

100m走の醜態に、

テント下での休憩やパフォーマンスの裏方姿なんかでは、

期待のしようがないわな!

確かに今日の、いや今日も俺、平民らしいかも・・・


「あかねちゃん、タロちゃんの良さはね

目に見えないところにあるのよ。ね♪」


そう言ってくれるのはあなただけです、美名城せんっ


「あ、ちょっと褒めすぎた(笑)」



ぐはっ!!




この後も

楽しい祝勝会&お疲れ様会が続いた。



「駿ばかり褒められてうらやましいぞ!!

俺だって・・・くそっ!

高坂先輩の前でみっともねーマネしちまったぜ!!」



・・・・



「え?誰??

ってかいつから!?」

孝也と菊池が静かに驚く。

他のメンバーも明らかに驚いている様子だ。



「おいおいおいおい、

俺は最初からずっとここにいたぞ!!

俺は赤組で駿のライバルだった男だ!!」



「駿のライバル?

いたかそんなの。

駿知ってるか?」



「いや~、見覚えないな~」



「何ボケかましてくれとんねーん!!

柊木だよ、柊木翔。

高坂先輩に開会式で告白した!!」



そのとき全員の記憶から翔の存在が思い出される。


「あー、あの自爆男子」


「なんだ、その自爆男子って!」


「いや、それは

相手は三大美女に匹敵する高坂先輩に

身の程を知らず、ただただ告白して自爆した・・・」


「もういい、それ以上言うな!

ひとまず、高坂先輩への告白は取り下げるが、

高坂先輩、俺まだ諦めてないですからね。」

自爆男子の孝也の説明を遮り、改めて

高坂に再度告白することを宣言した。


高坂はにこりと笑ったが、

目は笑っておらず、

それは近くにいた翔以外の

者たちが高坂の気持ちを強く察していた。


「ほう!頑張れ!!」


高坂の無情な目を見てしまった孝也は、

同い年の翔に一言のみ添えることしかできなかった。


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