第69話 赤組始動♪ 個性の共鳴

組対抗リレーの終わりは

とうとう最終種目である

パフォーマンスの始まりを意味する。


これまで放送していた八千草美悠も

放送席から席を外し、

自組の黄組のところへと向かった。


放送は、ここから

それぞれ必要に応じてパフォーマンスをする組の

生徒が行うこととなる。

だが、基本的にパフォーマンス中の放送はない。



気付けば

盛り上がっていたイケイケの空気から

少しずつ緊張感がにじみ出るような空気へと変わっていた。



このパフォーマンスのために

皆、夏休み献上で

それぞれ担当に分かれて準備をしてきた。


それはここにいる誰もが分かっていること。

パフォーマンスの順番は

赤組

黄組

青組

となっている。


パフォーマンスは50点満点で採点されるわけだが、

その審査項目は

看板、応援団、ダンス

それぞれのクオリティーに各10点

そしてそれらすべてが融合した一体感

観るものへの影響力などで20点とされている。


これらの審査を行うのが

各組の代表者一名と校長だ。




赤組のセットが終わった。



赤組のスタンドには

湧き上がるような炎に包まれた男女が腕組みをし、

目と心にも新たな炎の灯火を浮かべた

まさしく熱い、否、炎炎とした力強い看板が掲げられた。



赤い衣装を着た生徒たちが

グラウンドの中央へと結集する。

内側を向いて円陣を作り、

一人の生徒が円陣の中央へと歩みを進める。

よく見ると、その中央の生徒は高坂あゆみだ。



高坂は勢いよく


「赤組いくぞーー!!!」


と叫び、


「おーーう!!」


と囲む生徒たちも力強く発する。



すると突然、

高坂がテンポよく手拍子と足踏みをし始める。

次第に少しずつ取り囲む生徒たちも

高坂に同調し、手拍子と足踏みを始めていく。

気が付けば、赤組のスタンドから見守る

看板チームであろう生徒たちも

手拍子と足踏みを始めた。


赤組総出の手拍子と足踏みは、

少しずつだがグラウンドに響き渡っていく。



グラウンドの中央で

円陣を組んでいた生徒たちは円陣を崩し始めた。


力強い手拍子を続けながら

横一線

等間隔で一列の隊形を作り上げていく。


二十人の生徒が横一線の隊形に変化し終えると

スピーカーから

アップテンポな音楽が流れ始めた。

生徒たちは

テンポ良く踊り始める。


隊列状態の際は

基本的に皆が動きを合わせて踊ることが多い。

しかし、始めのAメロから一人ひとり各々の

感性に身を任せて踊りを表現しているのだ。


そこはまさにストリート♪

横一線に隊列を組んでいるだけに

個性が共鳴し合っているような光景となる。


そして曲はサビの部分にさしかかったところで

先ほどまでのストリートダンスから

一糸乱れぬ力強い踊りへと変化させた。


女子たちも男子たちの中に混じって踊っているが、

赤い鉢巻と衣装に加えて、拳を握る踊りからは

観る者にかっこよさ、たくましささえ感じさせていた。


サビが終わると

スピーカーからの音源は鳴り止む。

だが、なぜか

グラウンド脇から

「 ドン、ドン 」

と胸を打つような音が鳴り響く。



和太鼓だ。



「 ドン、 ドン、 ドン、 ドン、  ドンドン♪ 」

(ウィ ウィル  ウィ  ウィル  ロックユー♪)



この聞き覚えのあるリズムはウィウィルロックユーを彷彿とさせる。

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