第70話 火を灯すパフォーマンス

和太鼓の胸を打つような音

力強い踊り

この二つのパフォーマンスは少しずつ

一つのパフォーマンスへと変容を遂げていく。


一言で表すなら


底知れぬ 「力強さ」 



間奏に入ると、

横一線に踊っていた生徒たちは

グラウンド全体にばらついていく。


黄組、青組のスタンドの生徒たち、

放送席やその他の場所から観ている先生や関係者たちに

手拍子と足踏みを促した。


太鼓の音がかすんでしまうくらいの

大きなうねりとなった手拍子と足踏みは

地鳴りを生み出し、とつてもない迫力を生み出す。


看板の絵と同様に

炎に包まれ

踊る者も

演奏する者も

観ている者も

目は釘付けになり、心に熱い炎が生まれていく。


最後のパートを終え

太鼓の強烈な連打とともに

一糸乱れぬ踊りは激しさを増していき、

最後は太鼓の音とともに拳を高々と突き上げた。


赤組のパフォーマンスは

観る者たちを圧倒し、

敵ながら「かっこよすぎる」「震えた」

と言葉にせずにはいられない結果を残した。



これが赤組のリーダー 

高坂あかねが表現したかった

赤組の 底知れぬ「力強さ」だった。



赤組は

先頭バッターでありながら

他の組に大きなプレッシャーを与えるパフォーマンスを見せた。


二年でありながら

赤組のリーダーを務めた高坂の統率力が申し分ないものだった。

それは青組スタンドから観ていた太郎も充分感じ取っていた。



実は

赤組のパフォーマンスはダンスだけに終わらなかった。

最後に「ロックソーラン」にあわせて

優勝と書かれた赤色の大きな球体を、

踊っていた者たちで綱で引っ張り出し、

グラウンド中央へと持ってきた。

その後、赤色の球体をリーダーのチョップで割り

火をイメージした赤い衣装をまとった生徒が登場するという終わりだった。


おそらく

あの赤い球体は観る者たちの心であり、

そこから出てきた生徒こそ心に灯した火だったのだろう。



最後の最後まで力強い「赤」のイメージを最大限表現した赤組



パフォーマンスが終わると

高坂は赤組の仲間たちと

ハイタッチやハグをし、称え合った。



孝也は

「いや~、かっこよすぎる高坂先輩、

これが本番!!本物のパフォーマンス!!

俺が望んでいたパッションが燃えるような

そんなパフォーマンスを赤組はやってのけたんだ。」


駿も

「うん、ほんと、興奮した!!

観ているこっちも熱くなっちゃったね。」


初めてのパフォーマンス直前で

緊張していた二人の目にみなぎる火が灯り始めていた。


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