第68話 三つ巴の悲劇と結末

外側から翔と駿が

少しずつ速人を追い抜き始める。



残り30m



速人は焦っていた。

負けられない。負けてたまるかー!!!

徐々に徐々に力みが出てくる。

ビューランのフォームに些細なばらつきが出てきた。

その結果、



残り20m



「あ、」


速人は気持ちが先行しすぎてしまい

つまずいてしまう


「やばぃ」


三人とも三つ巴の走りを見せていた。

それによって身体をくっつけるくらいの

至近距離で走っている。


速人の転倒は

隣を走っていた翔に不運にも当たってしまう。

すると


「うそっ」


翔もバランスを崩して、転倒してしまう。


すると翔の隣を走っていた駿もまた

翔の転倒によって

バランスを崩してしまう。


持ってる力を全て使い、走っていた三人に

もはやつまづきを踏ん張るだけの余力は残されていなかった。




ゴールまで残り


10m


誰が一番にゴールテープを切るのか。




「駿、お前が何に緊張しているか俺にはよく分かる。」


「え?」


「アンカーでこけたらどうしようって思ってるんだろう?」


「あ、いや、ちがっ」


「任しとけ、そんなときはな、コロコロと転がればいい。

こけたんじゃない。転がったんだ。なんちゃってな!」





「コロがって」




スタンドからどよめきが起きる。


他の二人が派手に転んだのとは対照的に

駿は、転倒の瞬間に身を丸くして一回転し、

勢いが止まることを最小限に抑えて立ち上がった。



他二人もすぐさまその場で立ち上がるが

時すでに遅し。





「青組、ゴーーール♪」



駿は両手を挙げてゴールテープを切った。


転倒する瞬間、

見事転がって受け身をとり

アンカーとして勝利をもぎとった。

この事態を想定していたかしていなかったか

の差が勝敗を分けるものとなる。



青組のスタンドは大盛り上がりを見せる。




放送の八千草美悠も

「なんというハプニングでしょう!

しかし、そんなハプニングにも

冷静に受け身をとり、

一番にゴールした駿くんは海満で最速の男と言えるでしょう。」



駿への注目度は100mで一位をとった時から

うなぎのぼりで上がっていく。




アンカー三つ巴争いは

想定外のハプニングがあったが、

一位 青組 若草 駿

二位 赤組 柊木 翔

三位 黄組 船道 速人

という結果となった。


放送から

「最後のアンカーによる三つ巴は本当に

私たちに興奮と感動を与えてくれました。

みなさん、拍手でアンカー三人とランナーたちを称えましょう♪」


チーム関係なく、拍手が起き、三人は称えられた。



翔は駿も元へ行き


「負けたぜ!お前、ほんとに速いな。」


「いやいや、

ついていくのがやっとでした。」


「よく言うぜ。

転倒はあったとはいえ、

三人とも転倒しているわけだからな。

またリベンジさせてもらうぜ!

それまで

高坂先輩のこと、頼んだぞ!!」



「はい!・・・え?高坂先輩?」


翔から突然高坂のことを託された駿だが

いまいちその意味を理解できずにいた。



青組のスタンドに戻ると

孝也、菊池、八千草、そして太郎ら

仲間たちが待っていた。


「駿殿、お主はやはり歴とした武士であり、侍だぞ!!」


「駿、ほんとかっこよかった!!

なんか友達としてすごい誇らしいもん!!」


「駿くんがみんなのバトンをつないだね♪」


孝也、菊池、八千草が駿に興奮を伝えると


「ありがとう。みんなの応援があったから

最後まで走り切ることができたよ。」


太郎は

グッドサインで「ナイス」と言った。


駿も

グッドサインで「サンキュー」と言った。












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