第60話 知らされなかった激戦組

「駿氏、ご指名だね」


「え?おれ??」


太郎の放送に驚く駿たち。


周りは

「え、若草 駿?誰、それ?」

とざわつく。



菊池は

「どうして、タロちゃんが放送してんの?

係じゃないのに。しかもはっきりと答えてるし。」



そんな周りの動揺は

高坂と太郎に届くはずもなく、


「ちなみになんですが、

その若草 駿くんは何部の生徒なんですか?」


高坂の質問に太郎は

「駿くんは俺と同じく・・・」


「同じく?・・・」


「バリバリ帰宅部です!」


「帰宅部かーい!!!」


高坂の笑い声が放送を通して響き渡る。


「え、帰宅部なのに足は速いんですか?」


「見れば分かります。

明らかに速そうな見た目してますから!!」


「見た目で分かるんですか?

それは楽しみですね。」


駿は

「俺、もう100m辞退しよう」


「何を言っている駿氏。

ここで駿氏が一位を獲れば帰宅部の星となれるのだぞ。

是非帰宅部代表として勝ってきてもらいたい!!」


孝也の願いに、

駿の気持ちが分かってもらえない特殊な友人ばかりであることに

対して菊池と八千草は心から同情した。



「あ、あと一つ言い忘れたことが・・・」

太郎がおもむろに口を開く。



「実は、今

思い出したんですけど

俺も100m最後の組で出ます!」


「えーー!!太郎君も出るんですか?

最後の組は激戦組ですよー。」


「はい、え?そうなんですか・・・」


この放送を聞いて

孝也は

「やっぱり高坂先輩の魅惑ですっかり忘れていたようだな」

菊池は

「高坂先輩の魅惑かは分からないけど

多分、普通に忘れてたよね、あれ。」


菊池の一言に頷く駿と八千草


菊池は続けて

「あれ、完全に最後の組が他のチームも

一番足に自信がある人たちが出るってこと

知らなかったみたいだね。」


またも菊池の一言に頷く駿と八千草


「駿くんはそのこと知ってたの?」

八千草が駿に尋ねると

駿は頷いて

「その旨を美名城先輩から言われてたからね。

でもタロちゃんの場合は完全に伝え忘れてたみたいだね。」



太郎は100mに出場する前に

高坂から意気込みを聞かれる。


唖然とする太郎がどんな意気込みを言うのか


隣の高坂は太郎の様子から

知らなかったことを悟っていたがあえて聞いた。


すると



「最後の組で1位を獲るのは

青組の若草駿か、俺ですね!」



大胆不敵な宣戦布告だ。




「それじゃあ、100m走行ってきます。」


「うん、頑張ってね♪」


太郎に手を振って送った高坂は

数秒後

「あれ、私なんで手を振ってるの?」

我に返る。



そしていよいよ100m走開始の時が来た!!



高坂が元気よく


「それでは100m走

一組目スタートです!!」


ゴール順にそれぞれのチームにポイントがついていく。

後半の組になるにつれてポイントが高くなっていくため、

必然と後半の組に足の速き者が集まる。

最終組は最もポイントも高く、

いわばそれぞれのチームの威信をかけた

決戦の場と言っても過言ではないところ。

そこになぜか青組からは3年の陸上部以外に

帰宅部の1年駿と太郎が選ばれた。



100m走はそれぞれ

赤組、黄組、青組、拮抗していた。


そして


「それでは、これからいよいよ

100m走最終組です。

この最終組の順位が総合順位に大きく影響してきます。

果たして一位をもぎとるのはどこの誰なんでしょう!?

私は大いに赤組に期待しています!!」



高坂の放送とともに湧き上がるそれぞれの組のスタンド

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