第61話 スターターピストルの音ともに

駿は太郎に

「やってくれたね、タロちゃん」


太郎のあの放送によって

駿と太郎は最終組の参加者から

射貫かれるような鋭い視線を浴びていた。


「へへ、盛り上がると思って言っちゃった。

でも勝てばいい話だから、任せたよ。」


「え、任せたって?タロちゃんも走るんだよね。」


「おう、走るには走るが・・・

お、やべ、始まるぞ!」



審判の先生が

高々とスターターピストルをあげた。



最終組がスタートの構えに入った。


先ほどまで盛り上がっていた

スタンドが静まりかえる。



「 いちについてー    よーーーい      バン!! 」



スターターピストルの音ともに

一斉に勢いよくスタートした。



横一線


かと思いきや

一人の選手が早々に遅れをとる。

その光景はうさぎの群れにかめが一匹いる

そんな光景といったところだ。


一人の選手を除き

皆が横一線となり、そのままゴールする。


ゴールラインで順位をつけるのが

千里眼持ち主である真千先生




第三位は

赤組、吉田 塁



第二位は

黄組、立川 疾風



第一位は

青組、若草 駿



高坂はすかさず

「なんということでしょう!!

青組、帰宅部一年生の若草駿くんが激戦必須の最終組で

見事一位でゴールテープを切りました!!

これは快挙です。」



駿は走り終えると

ともに走った太郎を探した。

なかなか見つからず

少し焦った様子だった駿だが、


「そして青組一年生 佐藤太郎がようやくゴールです」


高坂の放送を聞いて後ろにいたことに気付く。



「タロちゃん、まったく」



あきれる駿に

「駿、ナイス。一位になれると思ってたぜ、後ろから(笑)」


駿は太郎が宣言した一位を獲れたことと一緒に

太郎と横一線ではなかったものの一緒に走れたこと、

後ろから応援してくれていたと思うと嬉しい気持ちになった。


駿が太郎にみんなのところに戻ろうと言うと


「実は俺、あの赤組の怖いお姉さんから仕事手伝わないと二度と

日陰に座らせてあげない的なことを言われてんだ。怖いだろー。

まだこの体育祭は長いから、

もう少しあそこで放送手伝いながら休ませてもらうわ。

あ、ちょっと駿のことあのお姉さんに紹介させて。」


「え、俺を??」


太郎は駿を連れて放送席へと戻った。



放送席にいる高坂のところへ

駿を連れて戻る太郎


駿に気付いた高坂は

「一位、おめでとうございます!

速かったですね!!」


「ありがとうございます」


「帰宅部なんですよね?」


「はい」


「信じられないです。

帰宅部だけど運動部より足が速くて

スタイル良くてイケメンで。

どうしてこちらのカメさんと

友達なんですか。信じられない。」


「いや、それは~」


口ごもる駿をよそに

「色々と言ってくれますね。

しかも俺と話していたときと明らかにトーンが違う気が」


「やだ、そんなことないよ、もう。

って、太郎くんの走り、遅いにも程があるでしょ。

雰囲気出して行っただけに余計びっくりしちゃって。

あなたもある意味で最終組の快挙だったわよ。」



余計なお世話だといわんばかりの迷惑そうな

表情をする太郎を見て駿が


「実はタロちゃんは最初出場する予定じゃなかったんですよ」


「え、どういうこと?」


「本当は青組から一年の野球部で足が速い生徒がいたんですけど、

前日にけがしちゃって、それを聞いて一番出場種目が少なかった

タロちゃんに声がかかりまして」


「えーー、そうなの!?

それでもあの足の速さだったら最終組は無いでしょ、最終組は?」





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