第55話 休憩場所を求めた先に

「だからあの後ろ姿イケメンの告白は

俺の分析からして、最善にして最高の戦略的告白と言える!」


「なるほど。

あとは高坂先輩がどう答えるかだね・・・

タロちゃんはどう思う?

・・・・

ってあれ?タロちゃんがいない?」


「俺の名推理を聞いていなかったのか?

ったくタロ氏はどこまでもタロ氏だな。

トイレにでも行ってるのだろう。」


駿はあたりを見渡すが、太郎は見当たらない。




話を聞き、沈黙していた高坂あかねが

ニコッと笑顔を見せ、口を開いた。


「もう、びっくりしたー!!

いきなり何を言うかと思ったら、

私のことを好きになったの?

体育祭でMVPになったらか・・・・」



高坂の言葉に全生徒が耳を傾けているその最中、

高坂も次の一言を発しようとしたその瞬間、

高坂の後ろを背後霊が!!


「きゃーー!!!」


高坂の愕いた声がマイクを通して響き渡る。


高坂の後ろを背後霊らしきものが通る。

高坂は叫びながら後ろを振り向くが

既にそのときには後ろに何者もいない。



なんだなんだ・・・



周囲がざわつき


告白した男子生徒が高坂の隣を見ている。


高坂も男子生徒の視線に沿って隣を振り向くと

そこには

パイプ椅子に座り、長机に肘をかける

青いスカーフをまとった男子生徒・・・・

否、

佐藤太郎がいた。



あたりを見渡していた駿

そして孝也は


「あーーー、タロちゃーん・タロ氏何やってんのー??」


と大きな声をあげた。


太郎はというと

至って動じない様子で

肘をついたまま座っている。


高坂から打って変わって

太郎を見つめる全生徒たち。

そして隣の高坂は一言


「どちら様ですか?」


と尋ねた。



「あ、僕ですか?

僕は一年の佐藤太郎と言います。

どうぞよろしくです。」



「あ、私は高坂あかねです。

こちらこそよろしくお願いします。

っていやいや、そうじゃなくて

どうしてこちらに?」


「特に高坂さんに用があるわけではなくて

ちょっと暑くて、あの中にいるの息苦しかったので、

いい休憩場所ないかなって探してたら

なぜかここにたどり着いちゃいました。」


「あ、休憩場所として・・・」



「僕はここで休んでるだけですので

どうぞ体育祭の開会式の続きを気にせずやってください。」



「あ、はい」


周囲のざわつきは増していく


あいつ自然に高坂先輩と話をしてるぞ。

しかも肘ついたまま。確か一年だよな。



駿と孝也は太郎を迎えに行きたかったが、

周囲がざわつき始めて、行くにいけないでいた。



頼むからこれ以上変なことを言わないでくれ。

まじで先輩方に殺されちまうぞ!!


孝也と駿の想いは百八十度違う形となって

太郎に届くのであった。

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