第43話 企画係に抜擢された理由

「実は美名城先輩に拾ってもらったんだ」


「え?拾ってもらった?」


太郎は続けて

「俺はこれといって絵が描ける訳でもないから

八千草さんからの助言もあって設置班にいったけど、

仕事も遅くて、結局全然役に立ってなかったんだよね。

そしたら看板チームのリーダーの美名城先輩が

図書室にいた俺に声をかけてくれて、

主に美名城先輩の助手という形で今もいるんだよ。

企画係というのは名ばかりで、いつも美名城先輩の企画に

振り回されながらも、学ばせてもらってます。」


笑顔で皮肉も含めて言い切った太郎に菊池が

「そうだったんだね」

と先ほどまで裏方で

動いていた太郎のことを思い出していた。


きっと役に立っていない

というのはタロちゃんの謙遜だろうけど、

美名城先輩の助手という立場は

美名城先輩とよく一緒にいるところを見かけることからも

納得がいく。

でもなんで美名城先輩はタロちゃんを

助手に選んだんだろう?


「美名城先輩は

タロちゃんのことをどう思っているんですか?」


「どうだろう、

私は少なくともタロちゃんに助手?

してもらってとても助かってるし、頼もしいわ。

私のわがままにも付き合ってくれるしね。」


美名城の皮肉たっぷりの言葉に太郎は顔を両手で覆った。


菊池は、どうしてタロちゃんなのか?

を聞きたかったが、

美名城が太郎を誰よりも

信頼しているということが分かった。


これ以上

どうして?

と聞くのはおかがましいことかもしれない。




「そういえば、まだ注文してないわね」

美名城が注文をとっていないことに気が付くと


「おーい、タロちゃん、

ちょっとこっち来てくれないかー!」


店長で美名城夏帆の兄の夏海が太郎を呼び出した。


「どうしましたか?」


「これ、メニュー表なんだけど、

こっそりテーブルに置いてきてくれない?

夏帆がないことに気付いたら

うるさそうだから、こっそりね。」


太郎は美名城がすでにそのことに気付いていることに

気付きながら夏海の指令を受けるのだった。



どうして俺が・・・



ばれないことがベストだが、

そもそもすでに美名城先輩は注文していないことに気付いた。

いや、

美名城先輩の発言を受けて

あそこにいる5人は皆、早く注文したいと思っている。


そんな中で、俺が注文表をあたかも

テーブルにあったかのように置くことができるか?

否、不可能だ。

そもそも注文表を置くという考え方に無理がある。



美名城先輩がこっちを見ている・・・



明らかに注文表を置き忘れた。

聞き忘れた店長のミスだが、

どうにかカバーするためには、あの手を使うしかない。

やっている人を見たことがなければ、

やったことももちろんないが今はやってみるしかないんだ。



「あ、タロちゃんお水ありがとう♪」


「いえいえ」


まずは笑顔でお水をみんなに配る。笑顔が大事!

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