第42話 なが~~~い店名

「何よ、それ!

まるで私がわがままな妹みたいに聞こえるけど!!」


強い口調で言う美名城のセリフに


「え?違うの?」

と言わんばかりの表情で美名城を見つめる店長。


なぜか下を向く太郎。


そして孝也ら四人は


「・・・・」


数秒間の時間停止の後、


「いもうとーー!!???」


ド派手に叫んだ。



その叫びは店内はおろか、

海満の町中に響き渡るほどだった。


「おいおい、

他のお客さんもいるんだから、少し静かにしてくれよ。」


店長の頼みに、

「すみません」と謝るが、

孝也は興奮したまま店長に尋ねた。


「ほんとに、

ほんとうに、

美名城先輩のお兄さんですか?」



「はっはっはっ、自己紹介が遅れました。

海満をのんびりと眺めながら、

ここいらでホッと一息お茶でもいかがかな♡

略して海満カフェの店長してます、

美名城夏帆の兄の美名城夏海です。

どうぞごひいきに!」


「ちょっと、

その無駄に長い店名やめて恥ずかしいから。」

美名城が恥ずかしそうにしている様子を見た孝也は

彼氏という類いでなかったことに安堵していた。


「いや~、

まさか美名城先輩のお兄さんだったとは・・・

しゃべり方とか似てますもんね。」

菊池の一言にみんなが頷いた。


「ほんとに?やめてよ~!!」

と否定する美名城だった。


「なんだ、ツンデレか?」

嬉しそうにツッコむ美名城の兄の夏海は、

「あ、一つ言い忘れてた。



実はここに・・・




弟もいる!!」





「・・・・




 えーーーー!!!???」





唖然とする孝也らだったが、

美名城は

「あなたの兄弟は私だけで充分よ。

タロちゃんのことでしょ。」



「え?タロちゃん??」



四人は太郎の方を振り向いた。


すると夏海は、

「タロちゃんはもう俺にとっては弟同然だ。

いつも夏帆のわがままに

付き合ってくれてるみたいだし、

夏帆が唯一俺に紹介した男でもあるしな。」



「ええ?

紹介した男?

しかも唯一???」


菊池が目を丸くして太郎を見つめると

太郎は、


「いやいやいや、誤解だよ、誤解!!

夏海さん、勘弁してくださいよ。

夏帆さんのわがままには付き合ってますけど

紹介されたって・・・」



「ちょっと、

誰のわがままにはですって!!」



するとここで八千草が

「あの~、

とりあえず席座って話しませんか?」

と切り出した。




そうだね、座ろう♪



左:美名城先輩の向かいに太郎

中央:菊池の向かいに八千草

右:駿の向かいに孝也


美名城の視線をストレートに受ける太郎は

顔を上げられずにいた。


すると菊池が

「どうしてタロちゃんは美名城先輩とも

お兄さんとも仲がいいの?」


「あ、それは、」

太郎が顔を下げたまま話そうとしたとき

美名城が

「それはね、

タロちゃんが青組の看板チームの設置班だからよ。」


菊池がすかさず

「でも、他の設置班の人は

お兄さんのこと知らないと思うし、

他の看板チームの、

または設置班の人がみんなここまで美名城先輩と

仲良くしているようには思わないんですけど。

こう、タロちゃんだけ、

特別な気がして・・・」


孝也も駿も八千草も気になっていたことを

さらっと聞いた菊池に


「特別かもね。もっと詳しいことを言うなら

タロちゃんは看板チームでただ一人の企画係なの。」


「企画係?噂は本当なんだ。

どうしてまだ体育祭未経験のタロちゃんが企画係?

明らかにそれは一年生に任せられる係ではないはず!」


「あら、噂になっていたのね。

そのとおりね。

でもね、タロちゃんは」


美名城が菊池の太郎企画係任命の

理由を話そうとすると

顔を上げられずにいた太郎が顔を上げる。



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