第37話 気になっていたこと・気になること

「一体、あの看板チームの演出は、誰が考えたものなのか?」


駿の一言に孝也も反応する。

「それは俺も気になっていた。

クオリティーが想定を遥かに超えるほど高かったからな!!」



看板チームのメンバーがいないことから

特にこれといった情報はないかに思えたが、

八千草が


「聞いた話だと、

この演出を完成させるために全体の指揮をとったのは

青組のリーダーでもある美名城先輩でしょ。ただ・・・」



「ただ??」



「美名城先輩はこの演出の案というのかな、

企画をみんなに出す際に

少し気になることを言ってたんだって。」



「気になること?」

孝也と駿が反応した。


「この企画を成功させるためには

みんなの力が必要だから協力してほしい。

一年生、二年生のみんなは

私たち三年生に気を遣わないでいいから、

気付いたことは遠慮なく言ってね。

この企画は、最年少の若武者が

創り出したものだから!!」って。



「最年少の若武者」



「俺はそんな若武者など存ぜぬぞ!」

孝也の言葉に八千草は


「もしかしたらだけど、

その若武者ってタロちゃんのことじゃないかな?」


駿がもしかしたらと

予感していたことを

この話を聞いた八千草も同じように

感じていたことで

駿の中で感じる予感はさらに強まっていった。



「タロ氏は自他共に認める平民だぞ。

忘れたわけではあるまいて。」



「平民から若武者に昇進したのかもしれないじゃん・・・」



「いやいやいや、まさか!!

昇進させた覚えはない。」


孝也と菊池の会話が平行線を辿るなか、

八千草はある可能性について話す。


「これはたまたま廊下を通った時に

タロちゃんと美名城先輩が

話をしているところを聞いちゃったんだけどね。

美名城先輩は看板チームで、

唯一タロちゃんだけを企画担当

として仕事を任されているらしいよ。」


「ただ一人だけの仕事を

タロ氏にだと。

しかも美名城先輩が。それは確かなのか?」


「たぶん、

私も通りがかりだったから、その後の話は

聞こえなかったけど、たまたま聞こえてきた内容が

そういうものだったの。

タロちゃんすごいじゃんって思って♪」


嬉しそうに言う八千草の表情に

少し心のどこかで

違和感を感じていた孝也がいた。



「でも、なんでタロちゃんなんだろう?」


駿が不思議そうに口にすると


「そうだ。

そもそもタロ氏は平民であるとともに一年だ。

企画だなんていう大仕事を

一年の一人に任せられるはずがない。」


孝也のもっともな発言に

駿、菊池、八千草は腕を組んで考えていた。


一年生

初の体育祭

佐藤太郎に企画の全てを任せて

抜擢する理由・・・



沈黙が数秒間続いていた時、



「それは美名城先輩のカリスマ的な 勘 じゃないかな」

菊池が何かを思いついたかのように発言した。



「カリスマ的な勘?」



そこにいた三人が

菊池の一言に首を傾げると


「そう。

さっき総会後に少し美名城先輩と話をしてきたんだけど、

あの人はただ者じゃないわ。」


菊池は嬉しそうな表情をして

首を傾げる三人を見つめた。


三人の傾げた首はさらに角度が深くなっていった。

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