第36話 目の色が変わった青組総会
水辺に漂いだした映像の端に
何かが映り込む。
目をこらすと、カヌーだ。
するとミュージックが流れ出す。
この瞬間孝也、駿、八千草、菊池は気付く。
これは、あのとき海岸で見た光景だと。
次々とカラフルな旗を立てたカヌーが横一線で出てくる。
あの時と同じだ・・・
リアルな映像美がもたらす
演出とダンスの融合に
青組の人たちは
リハーサルであることを忘れて見入っていた。
応援団ですでに出番を終えている
孝也は、ニヤニヤしていた。
「これくらいじゃないと、
俺たち応援団も応援のしがいがないってもんだぜ」
孝也なりにかっこつけて興奮しているようだ。
青組総会という名の
一週間前のデモンストレーションが終わった。
視聴覚ホールに漂う興奮は
収まるところを知らない。
ダンスチームがステージから降りてくるなり、
応援団チームの時と同様の大歓声に沸いていた。
「同様?果たしてどうだかな!」
盛り上がりに
少しダンスチームがうらやましく感じる孝也
クールなダンスチームと
熱い応援団チームが
注目を集めるデモンストレーションで、
駿、そして孝也も感じていた。
この高揚感と期待感に包まれた空間は
演技そのものだけによるものではない。
間違いなく看板チームの
「演出」が関わっていたことを。
青組総会の目玉であった
デモンストレーションが終了し、
最後に青組統括リーダーの美名城から締めのあいさつが行われた。
「私は今、とても興奮しています。
みんなも同じ気持ちじゃないですか?
明らかにこの総会が始まる前の雰囲気と
今の雰囲気ではまったく違うものになりました。
一番違うのは
みんなの眼と表情が違います。
これならば本番も
やれる。優勝できるぞ!という自信に溢れています。
私自身、この体育祭で最後ですが、
今日の総会を見て、参加して、これまでで一番胸が熱くなっています。
本番は、今日の演技に、少しバリエーションを加えて、
さらに面白いものを予定しているので、
みんなで絶対ぜったい優勝をつかみとるぞー!!」
「おー!!!!」
「ドドドドドドドド ♪ 」
美名城の言葉と
太鼓の力強い音が
みんなの結束と優勝へのみなぎる気持ちを高鳴らせていた。
八千草、菊池、駿、孝也と集まり、
始めての総会を終えた熱気のせいか話は盛り上がっていた。
「みんな本当にすごかったね!!
ダンス緊張したけど、
声援もあって楽しんでできた気がする。
孝也くんの応援もすごく力強かった!!」
八千草の言葉に孝也は照れくさそうに
「まぁ、それなりの練習は
ここまでやってきたからな。
当然といえば当然だが、
後は他の組と比べてどうかってところか。
ダンスチームもそれなりに良かったぜ!」
孝也の変わらぬ将軍気質な言い方には
もうみんな慣れてきている様子。
あとは看板チームの太郎だ。
みんなもどかしく感じていた。
看板チームがあれほどのものを製作していたことの
興奮を太郎に伝えたい想いでいるからである。
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