第35話 予想だにしない返事と表情

「本当の・・・意味?」


美名城の一言が

はったりではないことを駿は察した。


はったりではない・・・

だからこそ駿の中で整理がつけられない。



一体タロちゃんが何をしたというのか?



そんな混沌とした中


まずは青組の応援団の発表が始まった。


額には「海満の海」と書かれた鉢巻が巻かれ、

「海満王」と書かれた青の法被を着た者たちが

続々とステージに上がっていく。

後方には孝也もいた。


応援団の全員がステージに上がり終えると

「ドドン!!」と太鼓の強い音が鳴った。


「これから青組の優勝を願って

海満史上最高の応援を始めるー!!!」


団長の一言に

「海満史上って、自分でハードルあげてる」と

ざわめきが起きた。


だが、そのざわめきこそ

団長の狙いであり、

応援団のパフォーマンスは

これぞまさに

「一体感」


一寸のずれもなく一機一機の太鼓の音が

重なり続け、迫力を帯びていく。


太鼓をたたく男たちの表情、

照明が照らす汗の光。


見るものを引き込む演出に盛り上がりを見せていく。


「すごーい!!孝也くんも頑張ってる!」

盛り上がっている八千草と一緒に


「孝也かっこいいぞー!!!」

と声援を送る菊池



その横でじっと会場を見つめる駿


駿の目に映っているのは太鼓を力強く叩く

孝也・・・と

バックのスクリーンに映される映像であった。




「これは一体誰が撮ったんだ。



まさか



まさか



これが



タロちゃん・・・なのか?」



応援団チームによる迫力ある太鼓の演奏が終わり、

会場は盛り上がりに溢れていた。


男子・女子から称賛の声が飛び交う中、

孝也が汗を光らせて舞台からゆっくりと降りてくる。


「孝也最高だったよー!!」


菊池の声に孝也は

手を挙げて応えた。

まるで芸能人のようだ。


すると司会者から

「続いてはダンスチームによる演技です。

 今しばらくお待ちください」

というアナウンスが入り、

女子たちが自然と前のほうに集まっていった。



ダンスチームの駿、菊池、八千草も準備を始める。


菊池が

「私、ハンドボールの

全国大会より緊張する!

駿はどうなの?緊張するでしょ?」

とたずねると

「俺は、今、楽しみでしょうがない!」

と駿から予想だにしない言葉を返ってきた。



この時、駿の独特な表情と

予想だにしない言葉の真意を菊池はつかめずにいた。



ダンスチームがステージの裏で出番を待っていると、

背景としてセットされているスクリーンに

海満の海の映像が映し出された。


すると次の瞬間、

海を映していた映像が動き出し始める。


海の方向へと近づいていく。

そして、勢いよく海中へと入っていった。


映し出されたのは

浅瀬で泳ぐ色鮮やかな魚に珊瑚たち


まるで自分が泳ぎながら眺めているような

海中の世界をスクリーン越しに堪能していると


映像は水中の世界から

外の世界へと変わり、水辺を漂う。



次は一体何が映し出されるのか・・・



裏で出番を今か今かと控えている

ダンスチームの一員も

スクリーンに釘付けになっていた。






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