第34話 青組統括リーダーの正体

「続いては、

青組全体を統括するリーダーから挨拶です」


総会の司会が紹介した名は


「美名城 夏帆さんお願いします」


美名城は壇上に歩いていく。

壇上で一礼し、


「青組のリーダーをしています美名城夏帆です。

私は今までみなさんのチームで頑張る姿をずっと見てきました。

だから私が望むことは一つです。

それは、みなさんが各チームで

協力して作り上げてきたものを

本番で納得のいく形でやり遂げられることです。

そのためのサポートは残りの一週間、

全力でさせていただくつもりです。

今日は全体が集まっての最初で最後の練習ですので

思う存分この緊張感を楽しんで力を発揮してください。」


美名城の言葉に

聞いていた青組のメンバーたちは

青組のチームとしての意識が強まっていた。


孝也ら四人は

美名城がリーダーであったことに

安心感を抱いていたとともに

月嶌葵と言う人物の謎がさらに深まりつつあった。


その中、駿は

美名城がここまで青組全体のリーダーであることを

伏せてきたことにある思惑を感じ取っていた。


美名城夏帆を始めとするリーダーたちの

挨拶が終わり、各チームの見どころが紹介されていった。


休憩をはさんだ後、

いよいよ本題となる

各チームの本番に向けた

デモンストレーションが始まろうとしている。


休憩中もみなセリフやダンスの動きなどを

それぞれで確認し合っている中、

駿は太郎のことを探していた。


いくら人は多いといっても

各チームに分かれて集まっているから

タロちゃんは看板グループのところにいるはず。



しかし、

見つけられない。



そんなはずはない・・・



諦めずに探す駿の中で

あの時(入学式)のことを思い出しつつあった。



そうだ、


あの時も こんな人ごみの中で・・・



タロちゃんは、一人だった



このホールで一人になれる場所、

そこは一つしかない。



駿はステージの方に歩いていき、ステージの裏側を覗いた。


数人の裏方の生徒がいる中、太郎の姿は見当たらない。


するとそこに美名城が来た。

来るなり上を見上げて



「どう?」


と話しかける。



「え?」


駿はつられて上を見上げると

そこには鉄柵に腰かけて

親指を立てている太郎がいた。



「タロちゃん!」



駿が驚いて太郎の名を呼ぶと


再び

親指を立てて笑顔を見せる太郎がそこにいた。



太郎の姿を見て

ホッとした駿だが、

その姿からあることに気付く。

そして隣にいる美名城に話しかけた。


「美名城先輩、

どうしてタロちゃんなんですか?」


「あなたは確か

タロちゃんと仲が良かった友達ね。」


「はい」


「タロちゃんはまだ一年生。

先輩たちの背中を見て

一緒に活動に取り組むというのならまだ分かる。

けど、裏方の仕事の一つを

タロちゃん一人に任せられているというのは

なぜなのか?ということでしょ?」


「はい!

周りには看板チームの

人の姿もあまり見られませんし・・・」


「なかなかの洞察力を持ってるのね。

もちろんタロちゃんのことを

可愛いがっているのも一つの理由。

でも今に分かることよ、

タロちゃんがここにいる本当の意味を。」

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