第7話 夏だ・戦だ・宴だー
時は老若男女問わず
誰に対しても平等に同じテンポとリズムで流れている。
だが
その時のテンポとリズムは充実度によって異なることがある。
楽しい時はあっという間に時を刻み、
つまらない時はスローモーションとなってゆっくりと時が流れる。
いくら時の流れが平等だと理屈で分かっていたとしても、
そう感じるのは人間の嵯峨であろう。
あっという間に
中間試験、期末試験と終わり、夏が来た。
夏には人生最大の休暇『夏休み』が控え、
花火やら海やらバーベキューやらと
楽しいイベントごとがてんこ盛り。
無論、夏の課題や夏期講習もあるにはあるが、
夏休み開けの『体育祭』に向けた準備なんかは
楽しいらしいと孝也が嬉しそうに語っていた。
なんでも孝也曰く、
夏は女子が一番輝く季節であり、
触れあえる絶好のチャンスなのだと。
太郎は孝也ほどのオープンスケベに
開いた口もふさがらないでいた。
「いいか、太郎氏、駿氏。 夏だ・・・」
孝也のいつもの突拍子もない発言
「いや、知ってるよ」
「戦だ・・・」
続いて駿の突拍子もない発言
「駿 どうした?」
孝也と駿が俺に何らかのサインを目で送っている。
何らかのサインを送っているのは分かる。
しかし一体何のサインなんだ。
夏だ、戦だ、の続きにくる言葉を待っているのだろうか。
よかろう、
その続きにくる言葉は、これしかない。
「宴だーー」
「・・・」
「お前ら完全に喧嘩売ってるよね」
「いやいや、落ち着け太郎氏。
的外れな答えに拙者と駿は唖然としただけだ。」
「孝也、それフォローする気ないだろ。
弁解の余地なしだな、これは。
宴が的外れな答えだというなら正解を聞こうか。正解を。」
「落ち着こう 落ち着こう!」
太郎を落ち着かせようとする駿に対し、
「落ち着こうじゃねぇよ。
お前もお前でどうして
夏の次に出てくるワードが
戦なんだよ。
ハードル上げすぎだろ。」
「はは(笑い)」
笑ってごまかす駿
「ごまかしてんじゃねぇよ」
「では駿殿に代わって拙者が説明申し立て候」
「慣れない言葉使ってんじゃねぇよ。
自分でも言葉の意味把握し切れてねぇだろ。
まぁ、無理だろうが
俺の納得できるように説明してくれ。」
「うむ。駿氏の戦だ、は
まさに読んで字のごとく戦いを示している。」
「何との戦いだよ?」
「夏は様々なイベントがあるが、
それに向けて拙者ら高校生にとって
まず越えなければならないのが、夏期講習である。」
「夏期講習?」
「さよう。夏期講習は普段の授業の延長線上に過ぎぬ。
そうなると夏期講習に楽しさを見出すのは間違い。
いいか、よく聞くんだぞ。」
孝也の真剣なまなざしに唾を飲み込んで頷いた。
「夏期講習の時間は忍耐で凌ぐ。するとどうなる?」
「夏期講習が終わる」
「夏期講習が終わると?」
「終わると・・・体育祭の準備だ!!」
「太郎氏、珍しく察しがいいではないか。
体育祭の準備だけじゃないぞ。
海でバーベキューしたり
花火を棚に上げて夏祭りに女子たちと一緒に行ったり
なんかしたりすることもあるかもしれない。」
太郎はこの時
体育祭の準備からどうやって
BBQや花火へと話が膨らんだのか
疑問に感じたが、疑問を尋ねると
孝也は興奮して余計に話が膨らむような気がして、
「それがお前の狙いか孝也」
と便乗するのだった。
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