第5話 残念すぎるお調子者の名は
嘘だろう!?
信じられない気持ちと隣り合わせに、
イケメンだもんな、やっぱりか
と納得せざるをえない現実を受け入れようとしていた瞬間であった。
思いがけないものが視界に割り込んできた。
俺は周りを見渡した。
野郎は野郎同士で
女は女同士で会話を
どこもかしこもしているというのに、
ニヤニヤイケメン野郎はというと
隣にいる野郎だけでなく
女が一人・・
二人・・・三人・・・・
って複数の女たちと会話しているではないか。
しかもニヤニヤ楽しそうに!
俺は必死にニヤニヤイケメン野郎(駿)
に嫉妬と怒りの念力を送った。
俺たちは、同類じゃなかったのかと。
落ち着いて考えてみれば
あいつは選ばれしイケメンだ。
誰がどう見ても明白の事実である。
生まれ持ったパーツが違う。
同類だと勝手に勘違いした俺の思い上がりは、数秒のうちに消去された。
ホームルームの号令がかけられ、
記念すべき高校一日目が終わろうとしたその時、
ニヤニヤイケメン野郎の駿が
相も変わらずニヤニヤしながら
俺のそばに詰め寄ってくるやいなや、
一緒に帰ることになってしまった。
「ニヤニヤするんじゃねぇ」
駿は俺の言葉にニヤリとした。
高校初日を終えて瞬く間に一月が経った。
今のところ
クラスの野郎とは一通り会話をした。
友達づくりも順調のように思われた。
しかし、
どれも同じ空間で生活していくための
社交辞令のようなものであり、実際には苦戦している。
ただ、ニヤニヤイケメン野郎から
クールなイケメン男に昇格した
「駿」以外に他愛のない話で盛り上がることのできる
唯一の友と言える存在が、また一人できた。
そいつは俺と席が隣で、
友達の少ない俺と友達の多い駿が仲良さそうにしていることが
よっぽど気になっていたようだ。余計なお世話だ。
裏があるのでは?と
探りを入れるべく自然に会話に入ってくるような信用ならぬやつである。
と同時にさっきから俺の隣でクールをかまして、
視力一.五でありながら、
賢さをアピールするだけのために眼鏡をかけて雑誌を読む
残念なくらい残念すぎるお調子者の名は、
崎坂孝也
十五歳
カメラオタクである。
「っておいおいおいおい。
俺はそこいらの女子がぶら下げて語る
カメラオタクとはワケが違うぞ。
あ、どうも崎坂孝也です。お初にお目にかかります。」
「カメラオタクに違いなんてあるのか?」
「もちろんあるとも。
同じプロスポーツ選手でも一軍や二軍、三軍の選手だっているだろ。」
「いるな」
「カメラオタクの業界にも
一軍、二軍選手がいるってわけ。分かる?」
「いや、分からねぇーし、
カメラオタクは、そもそも選手ではないのでは?」
「あま~い、ピーナッツバターよりも甘いぞ、太郎氏。」
「それは、相当甘いな、・・・って
その呼び方はやめてくれ、さすがに恥ずかしい。」
「自分の名を恥じる出ない」
「いや、お前が呼ぶとなお恥じる」
「拙者はお前ではない、孝也殿だ!」
「うん、もういいかな、お前」
「よくない!いいか太郎氏、
女子のカメラオタクは、
カメラのメーカーであったり、外観の可愛さに強くこだわりを持っている!!」
「確かに!」
「カメラの鮮明度など機能性を第一に考えている
女子カメラオタクは非常に稀と言っていい。」
「じゃあ、鮮明度とか機能性にこだわる者が一軍ってことか?」
「やはり甘いな太郎氏。
教えてやろう、真のカメラの神髄とは」
「神髄とは?!」
「カメラにあらず!!」
「カメラにあらず?どういうこと?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます