第4話 踏み出した一歩は完全アウェイ?
入学式で出会った早々、
俺の心が読めるのかと思うくらい
エスパーな力を発揮してきた初めての友達でもある
イケメン野郎の若草駿とともに
三階にある我が教室一年三組へと向かった。
階段の窓から見える景色は
階を増すごとに広く大きくなっていった。
俺の高校生活は
この景色のように広く大きくなっていくのだろうか。
それとも小さく埋もれていくのだろうか。
立ち止まった太郎は、駿に無意識につぶやいていた。
「俺たちは大きくなれるのだろうか?」
「成長期がくればね」
駿からの返事にふと我に返る太郎は、
「何を言っているんだ俺は。
まぁ、身長の話じゃないけどな。」
「知ってるよ。」
「知ってる?じゃあ、何の成長期だよ?」
「それは、ここじゃないかな。」
駿はそう言って手のひらを胸に当てた。
それを見た太郎は駿がロマンチストだと悟り、
「なるほどな。なれるか、大きく。」
同じように手のひらを胸に当てた。
「なれる。絶対に。」
「絶対に?自信満々だな。」
「ああ、
青春は俺たちを大きくする。
青春は俺たちを・・・・・」
駿がその言葉の続きを発した時、
窓から桜が高々と舞ったのが見えた。
「そうだな。青春は俺たちの味方だ。さぁ、教室行こうぜ。」
覚悟も決まり、太郎と駿は
一年三組と表式のある教室のドアを開け、一歩を踏み出した。
入学式の緊張感が広がる教室で
俺と駿はそれぞれ決められた席に座った。
担任、副担任の自己紹介と簡単な挨拶が終わり、
注文していた教科書等を受け取ったところで
緊張感は少しずつ薄れ、前後左右の席同士で会話がところかしこから出てきた。
俺は窓際の最後尾に席を置いていたため、
前か右隣のやつが話しかけてこなければ何も始まらない。
無論、
俺からという選択肢は、始めから存在しない。
人見知りだから、
ということよりも、
誰一人として
知り合いがいない中での初日からのリスクと、
駿との絡みでだいぶスタミナを消耗していたからである。
ちなみに知り合いがいない中での
初日から声をかけるリスクというのは
言わずもがな、
手ぶらで真夜中の森へと入っていくようなもの。
高校生活はまだ先が長い。
手ぶらならば、
明るくなってから森へ入っていっても遅くはないだろう。
まさに今の状況は、
俺にとって
ハイリスクローリターンの
完全アウェイホームルームなのだ。
だから俺から話しかけることは、
万に一つの確立も今はないのである。
そういえば・・・
イケメン野郎、
駿はどうしているのだろうか。
きっとあいつにも知り合いはいないはずだ。
俺には分かる。
あいつが俺と同類であると言うことを。
類は友を呼ぶなんてよく耳にするが
まさにその通り。
友達が多い奴は、他人と同類になれる引き出しというか、
資質というか、可能性みたいなものを多く備えているに過ぎない。
言い換えれば、希少性がないことになる。
一方俺、佐藤太郎はというと、希少性の塊ではないか。
これまでも、おそらくこれからも
人との馴れ合いに慣れないのは、
俺と同類になれる資質を備えている奴が
極めて少ないというのがこの世の現状なのだ。
そんな世で、高校初日にして
俺と同じ資質を備えた希少性ある駿と出会った。
きっと俺と同じ立場なのだろう。
間違いない、
この立場での経験が長い俺があいつを引っ張っていってやらなくては。
先輩の気持ちで心を広くし、駿に目をやった。
俺の目は
一秒の
十分の一
もたたない光速のスピードでその瞬間を捉えていた。
奴は楽しそうに隣のやつと話している。
そう、あの時のニヤニヤ顔で。
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